季節はずれの雪がちらつく4月の夜、エリカ・バドゥ (@fatbellybella)は音のマジックでZepp Tokyoを東京で一番熱い場所へと変えてしまった。圧倒的な存在感、観ている側を引き込むパフォーマンス。近づきがたい神秘的なオーラを発信しているかと思うと、オーディエンスに声をかけたりスピーカーに寄りかかったりと、普段と変わらない振る舞いを見せてくれた。煽ることもせず、派手な演出も皆無なのだが、包み込む一体感が自然と生まれる。エリカ・バドゥはスピリチュアルで神聖な空間を作り出していた。

当日のバンドセットは、ステージ左手にキーボードとドラム、中央後ろにベースとギター、右手にMPC/ターンテーブル、そして3人のバックコーラスが中央後列エリカの左右後ろに並ぶ。『20 Feet Tall』の幻想的なエレクトリック・ピアノとドラムによるイントロループが5分以上繰り返されたその頃、ゆっくりと黒のトレンチコートと山高帽のエリカがステージ中央に進む。そして続けての『Out My Mind, Just In Time』の歌声で、それまで登場から醸し出していた「特別な空気」が一気に中和され、ステージと客席の距離が縮まった。見ている側の緊張を解かし、ステージと音楽に没入させてしまうほどの「見せる」曲を演出できる彼女の歌唱力なのだと感じた。

選曲は「New Amerykah Part One 4th War (iTunes, Amazonリンク) / Part Two Return of the Ankh (iTunes, Amazonリンク)」が中心で、曲間にビートを組んだり流れるようなフレーズにアレンジしたり、曲が止まらない1つのショーのごとく、エキゾチックながらも重いグルーブがどんどん広がっていく。ライブでの定番『Badu』(Freddie Hubbardの『 Red Clay』ベースサンプル)から『Agitatioin』『Me』『Healer』『My People』、そして1stアルバム「Badiuzm」から『on and on』、「Worldwide Underground」から『Love of my life』のクラシックを披露。途中、『I want You』のピアノイントロからマイケル・ジャクソンの『オフ・ザ・ウォール Off The Wall』をカバーし、また『I Wan You』に戻っていく、嬉しい演出。圧巻なのは、エリカが変幻自在にバンドを一瞬でアレンジし、彩いをほどこして曲にライブ感を与えてくれることだ。合図ひとつでテンポやフレージングを変えて、オーディエンスにスリルと驚きを与えてくれた。なにより、ジャム・セッションのような流れなのか、入念なリハーサルで仕込んだのか、はたまた両方なのか、エリカとバンドは見事なまでの調和を見せてくれた。その場のフィーリングに見を任せながらも、迷いもない、まさにプロフェッショナル。そして、バンドのアレンジを引き出しているのが、エリカが傍らに置かれたMacBookやローランドのHandsonic電子サンプラーとテルミン。エリカがサンプルを引き出し、バンドがフレーズを引き取りジャムセッションのような流れから曲へと展開していく。ヒップホップ、ファンク、ソウル、エレクトロ、ブルースまで、ほとばしる音楽の生気が会場に伝わってくる。Afrika Bambaataaの『Planet Rock』をロック調にアレンジしたかと思えば、MPC・ターンテーブルのRashad Ringo Smithとビートの掛け合いをしたり。そしてなんと(個人的なハイライト)サン・ラーの『Nuclear war』をファンク調でMPCのドラムをバックに披露してくれた。ラー信奉者にとっては、忘れられない一瞬になったことは、間違いない

 
『Out My Mind, Just In Time』(何度もフレーズが使われていたこの曲は、今回のアルバム/ライブではテーマ的な意味合いがあったのでは)を歌い上げて一度ステージ脇へ。その後、アンコールでは『Soldier』と『Bag Lady』をそれぞれ10分以上にアレンジし歌い上げる。この時点でオーディエンスの興奮はマックスに、ステージに押しかけるファンには、握手をしたりサインをしたり、プレゼントを受け取ったり、2時間以上におよぶステージ最後は、エリカもリラックスした表情で交流を楽しんでいた
 
エリカが持つ音楽という言葉で、本音で語りかけてくる。脳も身体も支配されてしまいました。エレクトリックなサウンドで包まれた、ステージ上の彼女のエネルギーと存在感には、「Analogue girl in digital world」なエリカ・バドゥの人間性が満ち溢れていた。
 
熱狂、興奮、愛、ドラマと、音楽の「マジック」を残していってくれたエリカ・バドゥのステージでした。Zepp Tokyo、オーガナイザーの皆さん、ありがとうございました。
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Jay Kogami

執筆者:ジェイ・コウガミ(All Digital Music編集長、デジタル音楽ジャーナリスト)

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