Flying Lotus (@flyinglotus)の創り出す音楽は、すべてのものが関連し合っている。この連鎖反応がなければこのアルバムは完成しなかったかもしれない。新アルバム「Cosmogramma AmazonリンクiTunesリンクでは自由に漂う彼独特のサウンドが垂直的(ハーモニー)にも、水平的(メロディー、リズム)にも押し広げ、音のつながりをさらに広域なものにしている。ヒップ・ホップ、エレクトロニック、アブストラクトといったカテゴリーにも属さない自由な音楽世界と、レディオヘッドのトム・ヨークをはじめ、ドリアン・コンセプト、ローラ・ダーリントン、サンダーキャット、ラヴィ・コルトレーンら異質で個性的なゲストアーティスト。これらを巧みに組み合わせた正真正銘の「ビート」アルバムである「Cosmogramma」は、表面的な要素(例えば豪華な参加アーティスト群)以上に、引き込まれる世界観が存在する。表現力に満ち溢れた美しい仕上がりからは、Flying Lotusの生気に満ちたサウンドが忠実に伝わってくる。派手で大げさな表現は一切ない。ストレートに鋭敏な音のみによる表現だ。(人気の出るものも含めて)良い音楽の中には、大きく拡張した音を出してみたり、派手なビートをバックに使った楽曲もあれば、流行の機材を備えた制作による音楽もある。その中でも自分は、リスナーの心に語りかけ、感情をかきたててくれるような良い音楽に、巡り合うことができれば、本当に幸運だと思っている。この「Cosmogramma」は自分にとって、立っていられなくなるほど足元が崩れ落ちるような興奮を味わわせてくれた一枚になったことを幸運に思う

 
2年ぶりの新作「Cosmogramma」は、前作「Los Angeles」からさらに力強さが増した音楽エネルギーを手にしたFlying Lotusの新たなスペース・ジャズ・アルバムだ。自信に満ちた表現の豊かさ、リスナーの意識をも変えてしまうパワーとエネルギー、急速に変化するメロディ、断片化されたフレーズ、コレクティヴなインプロヴィゼーション、延々と続くかのようなリズムやベース/シンセソロ、重なり合うストリングがますます熱気を高め、音を重厚にする。また前作に引き続き、驚異的なアプローチとして、楽曲の長さが1-3分前後であることにも注目したい。エレクトロニック系音楽であれば、3-4分から5分あってもおかしくはない。それを覆すかのように、出だしから『Clock Catcher』はわずか1分12秒しかない。しかし、シンセ、ベース、ハープ、エフェクト、全ての要素が凝縮されている。「Cosmogramma」を初めて聴いた時、この一曲の30秒を聴いただけで、これから始まるアルバムのドラマのイントロにふさわしい力強さと熱気に、興奮の高まりを抑え切れなかったことを今でも思い出す。どの曲も「一度しかない」と自分に暗示をかけているかのように、最大のパワーを注ぎ込みながら、一曲づつプレイにパワーを注ぎ込んでいる。そんな気持ちが聴こえてくるようなトーンや、示唆するドラマが描かれている。讃美歌調なエキゾティックな『Intro / Cosmic Drama』。『And The World Laughs With You』では猛々しいほどに疾走するリズム、波紋のように広がっていくフレーズ、シンプルで浮遊感のあるメロディに、シンセとリズムが重ね合わさってヘビーなサウンドに高まって行ったと思ったとたん、トム・ヨークのヴォーカルに場を譲るかのようにミニマルなオンビートのリズムへと変調。そしてヴォーカルパートが終わったと同時にサンプルを一気にたたみ重ねて、曲調を全く違うものへと変えてしまう。アップビートで奇数表紙の『Dance of The Psuedo Nymph』、ストリングのアレンジが際立つ『Computer Face / Pure Being』、攻撃的なまでの高音のエフェクトと激しいドラムに、やわらかいテナーサックスとハープを組み合わせた、アヴァンギャルド・ジャズ調な『Arkestry』や『Recoiled』(ちなみに『Recoiled』は5分33秒の曲で、2分過ぎから全く別の曲調に変わる)、どの曲も独創性に溢れ、無限に展開される。彼のプレイは、幾つもの要素で成り立ち、決して同じ場所には着地することはない。枠組みや先入観、間接的な美的感覚に捕らわれることなく、純粋に直観的な演奏表現ができるようになったことで、できるだけ遠くへ、高く、行けるところまで行く、そんなサウンドの表現方法は、特にこの「Cosmogramma」ではこれまで以上に幅広く聴き取れる
 
カリフォルニア州出身の26歳であるFlying Lotusのサウンドは、ビートメーキングにおいてもグリッチ系ヒップホップやエクスペリメンタル・ビートとは一線を画する。自身のカリスマ性、固有のリズムの流れを深く多岐に渡る音へのアプローチで築き上げた。先端性、力強さ、奥深さ、誠実さ、情熱がサウンドに込められている。もし彼の演奏が例え1分であろうが1時間であろうが、リスナーの心を打つことには違いない。自然発生的なアルバムに完成したところが最も印象的だと思う。ビートの枠組みは無くなり、リズムパターンは無限に広がり、聴いていてとても流動的なアルバムに感じた。そして今回はFlying Lotusのアーティストのサウンドをグループとして緊密にまとめるアレンジ力と統一力/プロデュース力に驚かされた。これだけ自由奔放なサウンドを演奏する参加アーティストの実力もさることながら、グループ全体を重厚なアンサンブルに仕上げるバランス感覚には、今後の彼の活動(ライブバンド?DJ+MC? ビジュアルとのコラボ?)への期待が高まる一方である
 
そのFlying Lotusは、5月28日(金)にElevenで来日ライブ。Gaslamp KillerとSamiyamも同時に来日、さらに日本からはMonkey Sequence 19、Quarta330、O.N.O.など錚々たるビートメーカーが一挙に集結。こちらもお見逃しなく。

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Jay Kogami

執筆者:ジェイ・コウガミ(All Digital Music編集長、デジタル音楽ジャーナリスト)

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