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ソーシャルメディアの普及でアーティストは自身の音楽をプロモートできる機会がこれまで以上に増えている。そこでクラウドファンディングでアーティストのプロモーションやプロデュースを行い、メジャーデビューさせるサービスを展開するフランスのスタートアップ「My Major Company」がフランスに次いで10月から英国でもサービスを提供開始する。

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音楽ファンが好きなアーティストに資金提供する音楽プラットフォーム、「My Major Company」(MMC)が10/18に英国でサービスを開始する。

2007年にフランスで設立されたMMCは現在、28人のアーティストを抱え、ファンコミュニティは92,000人に拡大した。

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MMCが手がけたフランス人シンガー、Gregoireが発表したアルバム「Toi + Moi」はプラチナム・アルバム(売上200,000枚)をフランスで記録し、国内アルバムチャート、デジタルチャートで1位を獲得した。彼のアルバムはワーナー・ミュージックから発売された。彼のアルバムは347人のMMCユーザーから70,000ユーロ(97,800ドル、約800万円)の資金提供を得た。

フランスでは、MMCがマスターレコーディング権を所有する。投資者(サイトでは『プロデューサー』と呼ばれる)は、MMC、アーティストと共に、収益から流通コストを差し引いた額をシェアとして得られる。

元ワーナー・ミュージック・インターナショナルCEOで現在My Major Company UKのCEOを勤めるPaul-Rene Albertini氏は、「我々のビジネスモデルは、新時代のアーティストに素晴らしい、数限りない機会を提供すると同時に、アーティストを支援し消費者に向けたプロモーションを行う上で現在もこれからも欠かすことの出来ない、専門的なヘルプに対して実現可能なアプローチを取ります。このプロセスにはクリエイティブかつ流通での付加価値が必要となり、MMCはその両方を提供します」

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このビジネスモデルは新しい試みだと思う。サイトがフランス語しかないので、全ては理解できませんでしたが、各アーティストページに行くと、曲の視聴からバイオやライブ情報、音楽PVが揃っている。またFacebookのように友達登録をしてメッセージが送れたり、Fanになりプレイリストを作成できること等、ソーシャル機能も充実している。もちろんFacebook、Twitter、Myspaceとも連携している。

特筆なのは、「プロデューサー」と呼ばれる一般の音楽ファン=投資家ページだ。プロデューサーのプロフィールページには、どのアーティストにいくら投資したかが表示されるほかに、プロデューサー同士が友達登録できメッセージを送れたり、自身の好きなリアルなアーティスト(例えば、U2やコールドプレイなど)を登録し音楽テイストを公開することができる。

さらにプロデューサー同士による充実したフォーラムでの意見交換が盛んに行われている。注意深く見てみると、フォーラムにはアーティストから直接返信メッセージが送られることもあるようだ。

これまでにもMyspaceのようなセルフプロモーション的なサイトや、Bandcampのようにアーティストが楽曲をサイトにアップして、ユーザーが直接購入できるサービスは存在した。MMCのビジネスでは、アーティストのキャリアをファンがプロデュースするもの。米国のオーディション番組「アメリカン・アイドル」に近いが、よりビジネスライクかつプロフェッショナルなサービスだ。

これまでは国内限定的だったが、初めての国外進出、しかも英語圏でのサービス展開がもし成功すると、今後も同様のサービスが始まる可能性が高い。

フランス人アーティストではどのようなプロモーションを行ったのかが気になるところだ。

また元ワーナー・ミュージックCEOが現在の経営陣にいることも見逃せない。独立系レーベルだが、製作段階ですでにメジャーとのつながりが実現できることがMMCの強みの一つだと思う。ただこれまでのメジャー資本にほるアーティストプロデュースと違い、オープンなコミュニティーが製作のオーナーシップを握ることで、アーティストとファン間でよりソーシャルな関係を構築することが特徴的だ。My Major Companyがパブリックなクラウドファンディングなら、映画製作のSpyglass Entertainmentなどはプライベートなクラウドファンディングといったところか。


Jay Kogami

執筆者:ジェイ・コウガミ(All Digital Music編集長、デジタル音楽ジャーナリスト)

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