世界約1億4000万ユーザーを誇る世界最大の携帯電話メーカー、ノキアは、2008年に開始し33カ国で展開する独自の音楽ダウンロードサービス「Ovi Music Unlimited」を27カ国で停止することと発表した。

Ovi Music Unlimitedサービス(「Comes With Music」とも呼ばれる)は加入者がノキア端末から定額で無制限に音楽をダウンロードできるサービス。ユニバーサル、EMI、ワーナーミュージック、ソニーミュージックの4大レコード会社が参加しており、アップルのiTunesなどシングルダウンロードを提供するオンラインストアに対抗するサービスと期待されていた。ちなみに「Ovi」はフィンランド語で『ドア(扉)』という意味です。
携帯電話メーカーのノキアにとって、Ovi Music Unlimitedを含む総合モバイルインターネットサービスOviブランドはスマートフォン時代におけるコンテンツプロバイダーへ転換するための重要な戦略的位置付け。アップルやアンドロイドと同じ仕組みを通じて、無制限のダウンロードやシングルダウンロードから購入できるオンラインストアのOvi Music Store、アプリストアやOvi Mapsなど、コンテンツやアプリを世界190カ国のユーザーに提供しする。その中でも音楽コンテンツはユーザーにもノキアにとっても大きな魅力だったのではないか?
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世界出荷数トップの端末で利用可能!アップルiTunesの対抗!無制限のダウンロード!期待が高まらない理由がないほど魅力的なサービスなはずでした。しかし、結果は散々なもので、2008年の発表以降、1億6000万ユーザーのiTunesにははるかに及ぶことのないまま終幕となります(ノキアは数値を公表していない)。

サービス低迷の理由はいろいろあるようですが、メディアで取り上げられるのは以下のようです。
1) サービスが利用できる端末が限定されていた
2) ダウンロードしたデバイスからのコピーを出来なくするDRMソフトウェア
3) iTunesやSpotifyなど競合に対抗するマーケティングの不足

大きくはハードウェアとソフトウェアの連携の問題にあるようです。ノキアの端末は機種ごとに機能が違うのですね。初めて知りました。Spotifyはほとんどのノキア製スマートフォンで利用できますし、カタログ数も充実しています。それにiPhoneやアプリはPCと同期することが前提ですが、ノキアのサービスは対応していないことが大きい。IT先進国ではPCをデジタルコンテンツのハブにしているユーザーが多いので、端末で完結しようとしたノキアの先読みが花開くことは無かった。逆を言えば、ノキアは先を読み過ぎていたのかもしれない。

Oviは中国、インド、インドネシア、ブラジル、トルコ、南アフリカでは引き続き提供される。ユーザーは加入した現行のサービス期間が終了するまでコンテンツにアクセスすることができる。

今回のノキアの発表は大きなトピックで本来ならもっと注目を集めたはずですが、当日はアップルのスティーブ・ジョブスCEO休職のニュースで掻き消されてしまいました。

それでもノキアには新年早々大きな打撃だったことでしょう。2月に開催されるMWCで新しい発表が聞ければいいのですが。

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ソース

Jay Kogami

執筆者:ジェイ・コウガミ(All Digital Music編集長、デジタル音楽ジャーナリスト)

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