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グーグルがクラウドベースの音楽ストリーミングサービス『Music Beta  by Google』を発表してちょうど1週間(現地時間5月10日)が経った。テック・IT系や一部の音楽メディアは大きく取り上げたが、一般メディアではそれほど騒がれていると思えないのは気のせいだろうか。技術ではなく音楽やアーティストの話題がないと、なかなか理解されないのかな?

いろいろ見ていたら、Business Insider でこんな記事を発見した。音楽ファン、素人ながら一ジャズファンとしては無視できない内容でしたので、Music BetaのInstant Mix機能と音楽レコメンデーション機能について考えてみました。

“グーグルの「Instant Mix」アリゴリズムによると、マイルス・デイビスとフェイス・ヒルは同じ音楽”

記事では、Music Betaの楽曲レコメンデーション機能である「Instant Mix」を、iTunesの「Genius」とThe Echo Nest(音楽ストリーミングサービスのMOGやThumbplayに音楽分析エンジンを提供するベンチャー)の製品と比較したところ、iTunesが比較的ジャンルに沿ったプレイリストを作成した反面、Instant Mixは貧弱なプレイリストしか作成できなかったというPaul Lamere氏(The Echo Nest社の開発者)が行った実験のブログを紹介している。

Lamere氏は自身のコレクション7,800曲から1曲を選択し、各音楽サービスで25曲のプレイリストを生成した。また彼は、自分がアップル製品ユーザーであること、グーグルには友人が勤めていること、自身が音楽サービス企業に勤めていることを公表した上で、このテスト結果は彼なりの客観性に基づいたものであると述べている。

テスト1. Lamere氏が自身の7,800曲からMiles Davis(マイルス・デイビス)をiTunes Geniusで試したところ、「Thelonius Monk」、「John Coltrane」、「Dave Brubeck」、「Wynton Marsalis」と全てジャズアーティストの楽曲でプレイリストは生成された。特に大きくずれていないので、問題はない。

しかし、マイルス・デイビスをInstant Mixで試してみたら、作成されたプレイリストでは「The Grateful Dead」(70年代のジャムロックバンド)、「Coldplay」(説明はしません、、、)、「Marcy Playground」(90年代のオルタナロックバンド)、そしてなんとカントリー歌手の「Faith Hill」までをレコメンしてきた。

下のプレイリストに赤印がついている曲が、マイルス・デイビスおよびジャズとは全く関係の無い音楽。プレイリスト25曲中じつに18曲が関連性の無い楽曲によって占められた。

テスト2. 次にKraftwerkの「Autobahn」で試した場合、iTunes Geniusでは全てテクノ・エレクトロニック系音楽でプレイリストが生成された。

しかしInstant Mixでは、ザ・フーやスティング、ジャック・ジョンソンやローレン・ヒルなど全く関連性の無いジャンルのアーティストがレコメンドされた。25曲中赤印の18曲がジャンル外の楽曲だった。

Lamere氏は、レディーガガの「Bad Romance」、ザ・ナイス(The Nice)の「Rondo」、でも同様にプレイリストを生成した。こちらではiTunes Geniusでも関連性の無いアーティストが抽出されたが、Geniusがそれぞれ”2″、”0″だった一方、Instant Mixは”13″、”11″と二ケタ台の”ミスマッチ”をレコメンドしてきた。唯一ビートルズの「Polythene Pam (ポリシーン・パン)」を試したとき、iTunes Geniusは1曲もレコメンドできなかったが、Instant Mixは幅広いスタイルのロックをレコメンドしてきた。

ベータ版で公開されたばかりということで、今後に改善が期待できるとは思う。しかし公開された製品がこのような貧弱な機能しか提供できないことに、グーグルの音楽ファンに対するリスペクトが全く感じられなかった。一介のスタートアップならはたしてグーグル社内では、これで満足して公開に踏み切ったのだろうか。期待値が高かっただけに、このテスト結果は非常に残念に思える。

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もう1つの懸念点は、モバイル端末でこの機能を使用した場合、単なる時間の無駄遣いになってしまうことが気になる。本来なら自動プレイリスト機能があれば、ライブラリーを見返して聴きたい曲を探す手間が省ける。しかし、今回のテストのようでは、モバイルにおけるMusic Betaでの音楽体験が全くつまらなく時間の浪費としか感じられなくなると思う。

本来、音楽サービスはレコメンデーション機能だけではない。ただiTunes Geniusは意外と高性能で、自分の視聴するマイナーなジャンルの音楽に対して、同じ系統で全く無名なアーティストの楽曲もレコメンドしてくれる。表示される曲をみているだけで、聴いてみたいと思うようになりワクワクしてくる。

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また音楽ストリーミングサービスの『Spotify』の特徴のひとつがプレイリスト機能で、自分が作成したリストを友人と共有できたり、共同で作成することができる。この機能を応用してウェブ上でリストを公開する「sharemyplaylists.com」や「specifyspot.com」などのサイトが無数に立ち上がっている。

個人的にオンライン音楽サービスで最大の魅力は、「Music Discovery (音楽発掘)」の体験だと思う。ウェブやモバイルで新しいジャンルや新人アーティストを視聴したりレコメンドされたり、昔聴いた曲やまた聴きたくなった曲に出会えることが、音楽体験の価値を高めてくれるのではないでしょうか。さらにソーシャルメディアを使うことで、友人同士で情報を交換したり薦めあったり、好きなメディアが公開するプレイリストをチェックしたりできるので、これからはもっと音楽でコミュニケーションができるようになっていくと思う。

音楽と出会うことで、聴くこと、新たに発見することが楽しくなり、もっと購入したくなったりライブに足を運んでみたくなったり、音楽ファンと制作サイドに相乗効果を生まれると思う。

そういう意味ではアップルやSpotifyは音楽ファンの楽しみ方を考慮しているし、ファンの欲望を満たすための価値の作り方が上手いと思います。グーグルもMusic BetaとYouTubeの音楽専用チャンネルの「Vevo」を組み合わせるとか、他社にはできないやり方で音楽ファンに付加価値を提供してもらいたいです。

どういう音楽ファンがそれぞれの音楽サービスにいるのか、気になりますが、またそれは別の機会に書きたいと思います。アップルとAndroid製品における音楽視聴の違いについて、 @anno69 さんのブログ 「Green Sound from Glasgow」で興味深い意見があったので、是非ごらんください。

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ソース
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Jay Kogami

執筆者:ジェイ・コウガミ(All Digital Music編集長、デジタル音楽ジャーナリスト)

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