音楽ストリーミングサービスの「Spotify (スポティファイ)」は, これまで無制限に1500万曲を利用できた無料プランに制限を設けると4月に発表しました。

ヨーロッパで大きな人気を誇り、最近米国でも展開し始めたソーシャルな音楽ストリーミングサービスの「Spotify」は、会員制の無制限聴き放題音楽サービスです。Spotifyは、無制限の無料プランと有料プランを提供していることが競合との大きな違いでした。

Spotifyにはウェブとモバイルアプリから利用できる「Premium」プラン(月額9.99ユーロ)と、ウェブのみの「Unlimited」プラン(4.99ユーロ)の有料会員プランと、広告入りの無料の「Free」プランがあります。
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Spotifyが5月に発表した制限によると、フリープランの会員は1ヶ月の利用時間を10時間に短縮され、同一楽曲の再生が5回まで(以前は無制限)に限定されることになり、また新規のフリープラン会員にも同様の制限が加入後6ヶ月から課せられます。

この制限は、有料会員の増加を要求するレコード会社やパブリッシャーからのプレッシャーと推測されていました。個人的な推測ですが、間近に迫った米国サービスのローンチを控え、レコード会社はSpotifyが提供するフリーミアムモデル(少数の有料会員が大勢の無料会員を有するサービスを支援する)がどこまで収益に結びつくのか、確証が欲しかったためではないでしょうか。案の定ユーザーからは反発が起こりました。
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ですが、Music Alleyの記事によれば、Spotifyは発表から有料会員を着実に増やし総有料課金ユーザー数を150万人にまで拡大してきたそうです。

以下は記事の抄訳です

*これはサービスが提供されているヨーロッパ7カ国のみに限った数値であり、米国は7月からサービス開始なので、対象には入っていません。

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音楽ニュースサイトのMusic Alleyが独自に入手した、Spotifyの版権所有者向けレポートによれば、同サービスは6月末には有料プラン会員数が150万人以上を超えたことが判明しました。同レポートは、Spotifyの今年1月から6月までの業績をまとめたもの。

記載された情報によれば、3月から6月にかけてSpotifyは(5月に発表した無料サービスの制限が原因と思われる)フリープラン利用者を160万人失いました。しかし、520,000人の有料プラン会員を獲得していることが判明しています。

内訳は次のようになっています。

3月
フリープラン会員:473万人
有料プラン会員:102万人
トータルアクティブユーザー数:575万人(全体の17.8%が有料会員)

6月
フリープラン会員:313万人
有料プラン会員:154万人
トータルアクティブユーザー数:467万人(全体の32.9%が有料会員!

レポートはまた、6月の時点でSpotify有料会員の内なんと123万人が€9.99の無制限ウェブ+モバイル利用が出来るPremiumプラン加入者で、わずか303,000人が€4.99でウェブのみの「Unlimited」プランに加入していることが明らかにしています。

Music Alleyは今回のユーザー増加はSpotifyに二つの事実を示していると説明しています。一つは、520,000人の有料会員を獲得し、合計で150万人を達成したこと。二つ目は、Spotifyが956,000人近いフリープラン利用者を失ったこと。果たして彼ら/彼女らは別の音楽サービスに移行したのだろうか、それとも違法ダウンロードに逆戻りしたのでしょうか???

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この傾向は、Spotifyとレコード会社・権利保有者・広告提供者・アーティストにとって非常に興味深い数値だと思います。なぜならSpotifyなどフリーミアムのウェブサービスには、無料サービスを利用する「フリーライダー」が存在しているからです。Spotifyは彼らの存在をどう思っているのか、ものすごく興味があります。
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image via Flickr tjohansmeyer (未公開企業株式売買サイトSecondMarketが注目する世界の非上場ウェブ企業)

フリーライダーの存在は、プラスにもマイナスにも働きます。例えば、多ければ多いほど、サービスのユーザー規模も増え、またロイヤリティも向上します。反面、サポートなどでコストが発生するデメリットがあります。

個人的には、将来的な成長を考慮した場合、Spotifyにとってフリープラン会員(フリーライダー)はメリットになるのではないかと思いますが、どうでしょうか?
  1. 今回のレポートで発覚したように、無料サービス会員は有料会員に変わる可能性があり、大きなユーザー数であればその確率も高くなることが期待できます。
  2. 無料会員はサービスを使っている間は、ブランドのファンであり口コミや知人への紹介につながりプロモーションしてくれる可能性が高いと考えられます。
  3. Spotifyを利用することは合法な音楽サービスを利用することとなるので、不正ダウンロードや海賊版の利用の代替サービスになっていることを、音楽業界や一般世間にアピールできます。

ですので今回はSpotifyにとって無料サービス利用者を失ったことはどのように捉えるでしょうか?

アーティストにとって、ただでさえダウンロードと比べ利益配分が低い広告入り音楽ストリーミングサービスでは、より多くの会員に聴いてもらえば収益が(少額でも)発生し、総会員数は多ければ多いほどよいのではないでしょうか(すみません、ここは自分が不勉強です。詳細をご存知の方がいれば、捕捉情報いただければありがたいです)

しかしレコード会社・権利保有者にとっては、無料会員の規模ではなく有料会員が確実に増えてくれた方が、Spotifyにコンテンツ提供する価値がより高まるので、喜ぶべき数値でしょう。広告主には総会員数が多いほうがメリットが高いと思います。

ただユーザーにとっての音楽に対する金銭価値は人それぞれなので、有料がいいのか、無料でいいのかはユーザー本人次第だと思っています。

ここで差別化の要因は、Spotifyの遅延のない優れたモバイルアプリや圧倒的な楽曲カタログの大きさ、プレイリスト機能やFacebookとの連携は、競合よりも一歩先を進んでいると思いますので、多くのユーザーから支持される理由の一部ではないでしょうか。

*Spotifyの機能に関しては利用者の @anno69 さんのブログをいつも参考にさせてもらってます。

このフリーミアムサービスのトレードオフについては、今後も議論されていきそうです。特にSpotifyや(ビジネスモデルは違うけれど)YouTubeなどのサービスによって消費者の目には「コンテンツはフリー(ただ)」という意識が根付いてきていることで、企業はどのようにしてユーザーを満足させながら(人のコンテンツで)利益を挙げていくのか、注目です。その中でテクノロジー・製品/サービスとビジネス・ユーザー体験の側面で革新を実感できそうな気がしています。

ご参考

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

参考までに関連記事です。興味のある方は是非。

音楽ストリーミングサービス『Spotify』に強硬な姿勢を示してきたワーナーミュージックCEOが態度を軟化:「ビジネスに重要な存在」(2/9)

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ソース
関連記事  MP3プレーヤー「Winamp」は売却交渉のため活動停止が延期に...SpotifyはWinampのUIにちなんだ「Spotiamp」をリリース
Jay Kogami

執筆者:ジェイ・コウガミ(All Digital Music編集長、デジタル音楽ジャーナリスト)

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