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昨年P2Pファイル共有で有名だったNapsterを買収した、米国発の会員制音楽ストリーミングサービス『Rhapsody (ラプソディー)』の成長と動向をまとめてみました。無料と有料、老舗と新興ブランドと面白い要因が色々見えてきて非常に興味深い世界戦略です

【2011年10月】

Rhapsodyは競合の音楽ストリーミングサービス『Napster』を買収したことを発表しました。1300万曲の楽曲カタログを持つRhapsodyの有料会員数は800,000人と言われ、米国ではNo.1の地位にありました。新興のSpotifyは7月の米国進出以来、会員数を着実に伸ばしている中、Rhapsodyのユーザー数を拡大してSpotifyに対抗する姿勢が伺えます。

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【フリーの音楽ストリーミング】

ライバルのSpotifyやMOG, Rdioなどの音楽サービスでは、TwitterやFacebookでシェアするなどのリスニング行動によってフリーの視聴時間が増える仕組みを使って無料会員の参加を促しす成長戦略を取っています。

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不思議なことにRhapsodyは無料で音楽を提供しません。14日の無料トライアル期間を提供するのみで、以降はPC、モバイル等60種類以上の機種から視聴可能な月額10ドルのプレミアムプランを提供します。
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同社の社長であるJon Irwin (ジョン・アーウィン)氏は昨年10月、Business Insiderの取材で成長戦略では、『無料プラン』は市場の動向を観察する意向であって導入する予定はないと明かし、一方で買収したNapsterのブランドや海外でのプレゼンスを有効活用し米国以外の地域でサービスを展開したいと述べています。2001年に設立されたRhapsodyは、競合よりも大手レコード会社と長期的な関係を維持し、また無料でストリーミングできる契約も締結済みだとIrwin氏はBusiness Insiderに明かしています。

【モバイルとの連携】

その他の差別化として、Rhapsodyは携帯キャリアやケーブルネットワークとの提携を進めています。月額60ドルでMetro PCS(加入者900万人)のプランに加入するとAndroid携帯にプリインストールされたRhapsodyで音楽が聴き放題できます。またケーブルネットワークとも提携の可能性を探っているとIrwin氏は言っていました。

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【2011年12月】

Rhapsodyは、有料会員数が100万人を突破したと発表しました。その中で50%以上の有料会員はモバイルや家電から音楽ストリーミングしていることが分かり、この分野の成長がユーザー数拡大に結び付きました。

【2012年1月】
Napster Internationalを買収したことを発表しました。これにより、RhapsodyはNapsterブランドでサービスを英国とドイツで展開します。今後は速度、インターフェース、プレイリスト管理を強化したウェブアプリおよびモバイルアプリが展開するそうです。

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個人的な関心は、Napsterのブランドを使いSpotifyからシェアを奪うことができるかどうかということです。Spotifyは欧州では既に地位を確立したサービスで、展開する12カ国中11カ国は欧州です。例えば英国ではSpotifyが会員数で1位で、Napsterは2位にいます。とは言えSpotifyはドイツにはまだ進出しておらず、Napsterは2005年から展開しており70%のシェアを有すると言われています。

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Napsterの利用度は分かりませんが、知名度はありそうです。逆にSpotifyユーザーはFacebookからの利用などアクティブユーザーが多いような気がします。

IFPI(International Federation of Phonogram and Videogram Producers)が発表した「デジタル・ミュージック・レポート2012」(pdf)によれば、会員制音楽サービスの有料会員数は世界中で1340万人に到達し、2010年の820万人から65%増加しています。

世界で知名度ある企業が新サービスを立ち上げるとして、ネームバリューだけでは新たに市場開拓はできない環境になった感がします。ナップスターも10年間に渡りサービス提供していましたが、低迷は避けられませんでした。反面、Spotifyのような新しいサービスが一気に拡大しやすい環境であるとも言えます。そうなると、『無料と有料』など今まで行ってきたビジネスモデルや形態を延命するのではなく、覆してでも競争していかなければならず、思い切った決断だったり周囲への利便性の理解促進も必要だと感じます。

2012年はこのトレンドから見て、各社にとって市場拡大の大きなチャンスの年になるかと思います。

10年前には無料で音楽ファイルをダウンロードしまくりだったNapsterが、時を経て無料音楽に背を向けて有料化で生き残りを図ろうとするなんて、皮肉だとは思いませんか?

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ソース


Jay Kogami

執筆者:ジェイ・コウガミ(All Digital Music編集長、デジタル音楽ジャーナリスト)

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