世界中を魅了し、2011年最大の人気を要した英国人歌手アデルのアルバム「21」が、発売から16ヶ月経った今月にようやく無料聴き放題のオンデマンド型音楽ストリーミングサービス「Spotify」で配信を開始しました。現在でも大きな支持を集めるコンテンツの参画は新興企業のSpotifyのユーザーに今後どんな影響を与えるのでしょうか?

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2011年1月24日に英国のインディーズレーベルXL Recordingsからリリースされた「21」は、発売後68週間もBillboardアルバムチャートでトップ10入りし続けています。その内60週はトップ3以内というメガヒット作品。先週のアルバムチャートでも7万5000枚を売り上げ1位に返り咲いて、通算24週1位を獲得しビルボード史上最多首位獲得数で第6位に浮上した

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セールスも引き続き絶好調でこれまで世界中で2200万枚以上を売上げています。(6/27現在)アメリカだけで930万枚で、英国では434万枚で歴代5位の記録を打ち立てた。

アデル自身もグラミー賞で最優秀アルバム賞を含む6部門を受賞、しかし咽頭炎のためツアーを全てキャンセルし療養中の現在はほとんどメディアの前に出ないことから、話題性が高まりアルバムセールスを後押ししています。

Spotify配信を拒否するアーティスト達

しかし、アデル(レコードレーベル)はこれまでSpotifyといった無料聴き放題の音楽ストリーミングサービスで「21」の配信を控えてきました。世界1800万人以上のSpotifyユーザーは、アデルの「21」をCDもしくはデジタルコピーで購入する必要がありました。

以前にブログで、Spotifyでの配信を嫌うアーティストについてまとめたことがある。例えばコールドプレイが昨年11月にリリースした新アルバム「Mylo Xyloto」では、当初CDとデジタルのみでリリースされ、3ヶ月経った2012年2月にようやくSpotifyで配信を開始する戦略を図っています。このような戦略を取るアーティストは少なくありません。

大きな理由として、Spotifyが無料でコンテンツを提供することで、売上機会が損失する可能性を考慮していることが挙げられます。

『フリーミアムモデル』と呼ばれる、無料会員にフリーで商品を提供し、更なるプラスアルファを望む消費者には有料会員へと誘導する新しい形のコンテンツサービスを採用するSpotifyは、これまでCDやデジタルダウンロードの販売でビジネスをしてきたアーティスト側にとっては、作品をタダで配布することへの不満や不確定要素の多い存在です。

ですが新しい配信サービス(これはどの業種にも言えることですが)がどのようなビジネス効果をもたらすかは、短期的に測定することは無理があります。特にSpotifyの場合、世界最大のマーケットのアメリカに進出して1年たらず、成功事例もまだ無い中で、配信をするしないのメリットを議論するには次期尚早と言えるでしょう。だから可能性についても常にオープンな姿勢を持っていることが大事と考えます。

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さて近年稀に見ない成功を収めたアデルの「21」が無料ユーザーにも届けられるようになった。果たして効果はあるのだろうか?名作は引き続き売れるのだろうか?今後はここに何よりも注目したいと思います。

仮にアデルを初めて知った人の行動を創造してみる。Spotifyの無料ユーザーがアデルをPCで聴いてみる。YouTubeのPVやライブ動画も併せて視聴する内に、作品に対する関心が高まっていく。SNSでシェアしたところ、友人から多くのいいね!やコメントが付いたので、自分の周辺も好きだということが分り共感が増す。

音楽も素晴らしい、周りの人間にも薦められた。ここからは、どのように「21」と接するかはユーザー次第。好きな人の中には、物理的にアルバムを「所有したい」欲求から、CDを買う人がいるでしょう。iTunesでDL購入してiPodで聴く人もいるでしょう。そして新たなオプションとして、Spotifyの有料会員となり「21」を外出先からスマートフォンでアクセスして聴く人もいるでしょう。

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アデルの場合、歌声/音楽性が最大の魅力であり、そこに共感したファンがこれまで購入をしてきた。Spotifyユーザーがアデルに共感した時どのような行動を取るのか。今後Spotifyで配信を予定/検討する上で参考にできる例だと思います。

その後は、アーティストがどれだけこのユーザーを大切に思ってエンゲージメントを高めたいかという思いと施策を示すことで、音楽購入やライブ参加、口コミなどその後の直接的な行動を導くきっかけを生み出すことにつながると思います。音楽の熱、ファンの熱をSpotifyが維持し、アーティストがファンと感情的な関係を強固に結び距離を縮めていけば、コンテンツへ積極的に関与し購入するファンへと育てられるのではないか。Spotifyも戦略によっては、アーティスト側にもメリットのあるプロモーションができる可能性を十分に秘めています。

アデルの「21」は彼女の歌声とアレンジが素晴らしく、久しぶりに感動したアルバムでした。もしまだお聴きになっていない方がいらしたら、だまされたと思って一度聴いて下さい。絶対にじっくり聴き入ってみたいと思う作品です

Adele

日本HP: http://adele21.hostess.co.jp/ こちらのサイトに購入リンクがあります

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Jay Kogami

執筆者:ジェイ・コウガミ(All Digital Music編集長、デジタル音楽ジャーナリスト)

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