大手レコード会社ワーナーミュージック・グループの中心であるワーナー・ブラザーズ・レコードが最近新しいA&Dディレクターの就任を発表しました。新ディレクターには、26歳のアレックス・ウィルヘルム(Alex Wilhelm)が就任しました。アレックス・ウィルヘルムの以前の職業、それは音楽ブロガーです。

 

ドイツ・ベルリンに住むアメリカ人のアレックス・ウィルヘルムは「Crazed Hitsという音楽ブログサイトを2008年2月から運営してきました(現在サイトは休止中)。サイトではウィルヘルム自らがネットを駆使して発掘した、インディーズ系や新進気鋭のアーティストと楽曲を数多く取り上げていました。なぜ彼が注目され始めたかというと、サイトで紹介したアーティスト100組以上のがその後メジャーレコード会社やインディーズと契約し、世に出ていったからからです。

Crazed Hitsが誰よりも早く取り上げたアーティスト例で言えば、ドレイク( Drake)、LMFAO、アウル・シティ(Owl City)、ニッキー・ミナージュ(Nicki Minaj)などがあります。また以前にはキャピタル・レコードと契約する2年前にケイティ・ペリーを発見したりするほど、新しい音楽を見つけるチカラは突出していました。
過去に発掘した未契約のアーティスト
2008年: LMFAO、Ke$ha、ドレイク(Drake)、アウル・シティー (Owl City)
2009年:ニッキー・ミナージュ(Nicki Minaj)、マイク・ポスナー (Mike Posner)

彼のタレントを見つける眼力と、先入観の無い音楽への忠実さで人気を集め始めたサイトは、やがて実績を積み重ね(ビヨンセと共演する以前のBC Jeanの新曲「If I Were A Boy」の発掘など)、アーティストがブレイクするキッカケを幾つも作るメディア/プラットフォームの役割も担い始めます。2010年には毎日100件以上の資料が届き、メジャーレコード会社の取締役やA&Rから頻繁に連絡が入るようになります。また同時期にはグラミー賞選定委員会からの招待も受けるという、わずか2年で業界からの信頼を獲得するまでにアレックスの知名度は高まりました。そしてこの秋、ブロガーから大レコード会社のA&Rディレクター就任と、引き続きサクセスストーリーを歩んでいます。

アレックスのケースは、2つの視点から音楽との関わり方について見えてくると思いました。

 

【ビジネスサイドの目線】

これまでA&Rの担当は小さいライブハウスに足を運んだり手渡されたcdrを聴くなど、リアルからの発見が中心だったと思います。しかし、コンテンツを誰もが作成し発表できる環境になった今、独自性や差別化要素を持ち、そして誰も知らない全く新しい情報を見つけるのは、実はこれまでのように音楽会社の中の人が始めるのではなく、アレックスのような今の時代に適したネット上に居る人なのかもしれません。その意味で、外部の人間だったアレックスを採用するオープンな姿勢を見せたワーナー・ブラザーズ・レコードの経営陣は素晴らしいと思いますし、これからの可能性を示す好例と思います。

 

【個人の目線】

ブログやキュレーションなどの個人メディアの与える影響力は今後さらに拡大していくと感じます。大きな理由としては、コンテンツの中にある人間味だったり純粋さやユニークさから生まれるサイトへの信頼や意識は、iTunesやAmazonのアルゴリズムでは完全に置き換えることは不可能だと感じるからです。大きなメディアとは規模は違いますが個人メディアは個性が存在することが重要な価値だと思います。事実アレックスのケースに戻ると、彼が個人的な主観で情報発信を継続したことが、紹介してもらいたいアーティストと、情報収集に訪れるレコード会社とを結び付ける関係構築のキッカケとなりました。従って今後は個人の継続した発言が社会を動かす原動力へと発展する余地がいくらでもあると言えるでしょう。

 

ブログやSNSなど個人の活動が功を奏してプロの世界へと進む、または転職するケースは、ネット業界では起こりえますが(実際に起きている)、日本の音楽ビジネスにはなかなか生まれなさそうに感じますが、このような関係が生まれていてもおかしくない世の中です。どなたか情報をご存知の方が居れば、ぜひご連絡頂ければうれしいです。

 

最後まで読んでいただきありがとうございました。
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Jay Kogami

執筆者:ジェイ・コウガミ(All Digital Music編集長、デジタル音楽ジャーナリスト)

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