米国のサブスクリプション型音楽ストリーミングサービス「Rhapsody」は、Napster (ナップスター)ブランドヨーロッパ14カ国に進出しました。すでにサービスを開始しているドイツと英国に加えて、オーストリア、ベルギー、デンマーク、フィンランド、フランス、アイルランド、イタリア、ルクセンブルク、ノルウェー、ポルトガル、スペイン、スウェーデン、スイス、オランダに展開します。

 

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当初のサービスは月額9.99ユーロで、ウェブ/モバイルからのアクセスが可能になります。

Napster (1) 

ナップスターはヨーロッパでは再始動という事になりますが、SpotifyとDeezerといった欧州大手ストリーミングサービスと競争していきます。そして今後はGoogleやAppleといった大手テクノロジー企業とも競争しなければなりません。特に音楽ストリーミングサービスがデジタル音楽の中心となっている北欧では、SpotifyやWiMPなどすでにローカル市場で確立している音楽サービスと競争することになります。

ナップスターの楽曲数は2000万曲以上が用意され、iOSとAndroid、デジタル・オーディオ機器向けに提供されます。音楽エキスパートによるキュレーションされたプレイリスト、新人アーティスト紹介、編集記事、ライブ音源、インタビューなどがフィーチャーされた「Napster Music Guide」によって、リスナーの新しい音楽発見を支援します。

Discover Rhapsody - What is Rhapsody

2001年に創業したRhapsodyは10年以上に渡り米国で音楽サービスを展開しています。米国では、ブランド名を「ナップスター」ではなく「Rhapsody」で展開します。

社長のジョン・アーウィン(Jon Irwin)は、「Rhapsodyは米国、ナップスターは海外展開になっています。このやり方を今後も継続しています」とコメントしています。さらに、今後アジアなどに進出する場合にも、「ナップスター」ブランドでの音楽サービスを展開するとも述べています。なぜナップスターの名前でRhapsodyではなかったのかと尋ねられたアーウィンは、ナップスターのブランド力が未だに存在するからと答えています。

価格戦略で差別化

またアーウィンはナップスターの海外展開において、大胆な価格戦略がスケーラビリティを生み出すと考えています。「米国や世界には月額9.99ドルを支払ってでも音楽が聴きたい人達がたくさんいます。ですが、この数字は世界人口の50%にも届きません。例えば今、iTunesの1トラックのダウンロード購入額は99セントです。そして2000万曲以上にアクセスができるストリーミングサービスとの差額が9ドルだとしたら、もっとリスナーには価格帯のチョイスがあってもいいのではないでしょうか? 広告のないラジオに追加機能が欲しい人もいれば、ちょっとだけ優れたラジオが欲しい人もいます。」とコメントします。

「2.99ドル、3.99ドル、4.99ドルの価格で、人のニーズに合った圧倒的なユーザー体験を実現できる手軽なサービスが作れればと思っています」とアーウィンは語ります。多層化した価格戦略を彼は「laddering」と呼んでいます。「サービスの上限を利用形態に合わせて変えるために人々が上の層へ移動するような価格帯の分配を実現します。上限は再生回数、機能制限、対応デバイス数かもしれません。数ヶ月後に導入する予定です」という考えを示しています。

 

現在音楽サービスの大半は、月額10ドルや980円しか提供していない状況です。フリーミアムを採用するSpotifyなどは無料プランや5ドルのデスクトップアクセスなど異なる価格帯を提供しています。Rhapsodyの考え方は、この価格帯がもっとユーザーのニーズに合わせて多層化してもよいのではないかと、現状のサブスクリプション型音楽サービスに疑問を投じる動きです。 

 

ソース
Rhapsody’s Napster expands across Europe and plots ‘laddered’ pricing strategy(6/4 Musially)


Jay Kogami

執筆者:ジェイ・コウガミ(All Digital Music編集長、デジタル音楽ジャーナリスト)

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