アップルが本日発表する新型iPhone 5S/5C。そのiPhoneに搭載される新しい音楽ストリーミングサービス「iTunes Radio」は、アップルの新しい音楽テクノロジー、ビジネス面での可能性、そしてPandoraキラーと、様々な側面から音楽業界やメディアから高い注目を集めてきました。

本日深夜2時に迫った新しいiPhoneの発表を前に、「iTunes Radio」についてこれまで書いたブログ記事を振り返りながら、機能やビジネスモデルなど今現在分かっていることをまとめてみました。

機能

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iTunes Radioは広告付きの無料で利用できる音楽サービスで、iPhoneやiPad、iPod TouchやApple TVなどで利用ができます。サービス自体は、ユーザーのiTunesでの購入履歴や趣味嗜好を分析し、各ユーザーに最適な音楽を自動レコメンドしてくれる、「パーソナライズド・ネットラジオ」です。こちらはiTunes Radioの基本機能になります。

■パーソナライズド・ストリーミングラジオ機能:好きなアーティストやジャンル、これまで聴いた楽曲を分析して、個人のテイストに合った音楽を自動でレコメンドしてくれる。ユーザーは音楽ステーションを選ぶだけで、自動で流れてくる音楽が聞き流しができる。

■音楽のパーソナライゼーション:再生中の音楽に「Play More Like This」(いいね)または「Never Play This Song」(嫌い)ボタンをタップし、音楽ステーションを好きな音楽でパーソナライズすることができる。

■Siriで検索

■iTunesでの楽曲購入:iTunes Radioは再生されている楽曲を購入することが可能。画面をタップするだけ。iTunes Radioで聴いた新しい曲や気に入った曲も、即座に自分のコレクションに追加できるので、ミュージックディスカバリー(音楽発見)の機能もここで一元的に実現できます。

iTunes Radioで話題になると考えられるのが、「無料」で提供される点です。「アップルのサービスが無料で使える」ことは、これまで高いブランド力を発揮してきたアップルにとって、より効果的なマーケティングを実現しやすくなるはず。まだ音楽サービスに馴染みのないユーザー層や初めてのiPhone層に対しても、「無料」は大きなアピールポイントになると考えられます。

今秋開始のAppleの無料音楽ストリーミング「iTunes Radio」、機能をスクリーンショットでチェックしてみる

アップルの音楽ストリーミングサービスiTunes RadioからiTunesで楽曲ダウンロードする方法が便利そう

広告ビジネス

アップルはiTunes Radio開始にあたり、世界的ブランドを広告パートナーとして迎え入れる模様です。当初の広告パートナーには日産、マクドナルド、P&G、ペプシ、そしてもう1-2社の大手ブランドが名を連ねています。

またアップルは2013年末まで各業種1社のみと広告契約を結びます。2014年からはより多くの企業へ広告を提供開始する予定です。

iTunes Radioの広告フォーマットは、3つのフォーマットで形成されます。オーディオ広告、動画広告、「slate」(スレート)と呼ばれるインタラクティブなディスプレイ広告です。ディスプレイ広告は、ユーザーが利用する端末(iPhone、iPad、iMac、MacBook、Windows PC、Apple TVなど)に応じて最適化され表示されます。ユーザーには、15分毎にオーディオ広告が1度、1時間おきに動画広告が1度挿入されます。

アップル、新しい音楽ストリーミングサービス「iTunes Radio」の広告戦略を強化するため、iAd部門で人材を大量募集中

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音楽業界の期待

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音楽業界は、iTunes RadioをPandoraでは実現できない新たな収益源として期待しています。ユーザーは流れている曲が欲しい時、アプリ内についている「Purchase」(購入)ボタンを即座にプッシュするだけでiTunesで楽曲購入が実現できます。このため、音楽ファンは新しい音楽と出会いながら、自分のコレクションを増やし続けることが可能になります。また音楽業界にはストリーミング再生のロイヤリティ料の他に、ダウンロード購入の取り分も収益化へ結びつけることが期待できます。

一方で気になるのは、音楽ストリーミングサービス分野での激しい競争です。アップルの他にもグーグル、Amazon、マイクロソフトなど大手IT企業がすでにこの分野に進出しています。またスポティファイやDeezer、Rdioなど先行している音楽ストリーミングサービスがおり、そして米国ではアクティブユーザー数7000万人以上のPandoraが存在します。

アップルとPandoraの話題では、Pandoraは自社が支払うロイヤリティ料の引き下げを相次いで政府に訴えるという行動に出ているため、Pandoraに対する見方がネガティブな見方をするアーティストが増えています。アップルはiTunes RadioをPandoraキラーとして投入してきました。これまでiTunesでレコード会社との関係を築き、音楽販売のアプローチとビジネスモデルを変えてきたアップルが、Pandoraが築いたネットラジオ市場を一変するほどの新しいビジネスモデルと音楽業界とのつながりを築くことができるかどうかが今後の注目の的です。

さらにiTunes Radioのような音楽ストリーミングサービスがアップルなど巨大な企業によって一般化され始めると、レコード会社にとって大きな収入源となっているダウンロード購入サービスにどう影響を与えるかも、今後の焦点の一つです。

iTunes Radioは競争に勝てるか? 海外のメジャーな音楽ストリーミングサービスと比較してみた

日本でのサービス開始は?

iTunes Radioは発表されたWWDC(6月)の段階では、米国での利用が今秋、その他の地域に関しては未定としか伝えられていません。しかし現在iTunesストアは世界119ヶ国で展開して、5億7500万件のiTunesアカウントが存在しています。iTunes Radio最大の真骨頂は、強い連携のあるiTunesがあってこそメリットを最大限に発揮します。従ってアップルは今後iTunesを展開しているローカル市場のiTunesストアに連携させてくることが予想されます。

Apple、無料の音楽ストリーミング「iTunes Radio」を発表、今秋から開始

iTunes Radioについては今後もフォローしていきたいと思います。皆さんはiTunes Radioがどうなっていくと思いますか? ご意見などがあれば、ぜひご連絡ください。

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Jay Kogami

執筆者:ジェイ・コウガミ(All Digital Music編集長、デジタル音楽ジャーナリスト)

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