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ミュージシャンがこのデジタル音楽が広がる時代で、これからどのように生き残り成長していくか、そのキャリアにおいて重要なマネタイゼーションの問題について、海外では盛んに議論されています。

イギリスの音楽シーンで「XL Recordings」「Rough Trade」「4AD」など有名インディーズ・レーベルをまとめて運営している最も影響力のあるレーベルグループ、ベガーズ・グループ (Beggars Group)は、グループのポリシーとして音楽ストリーミングサービスからの収益をレーベルとアーティストが50対50の同率に分配している、珍しい関係性を維持しています。ベガーズ・グループはまた、分配レートを公にしている、数少ないレーベルでもあります。

ベガーズ・グループのデジタル・ディレクター、サイモン・ウィーラー(Simon Wheeler)は、ロンドンで開催された音楽ストリーミングやサブスクリプション型音楽サービスのビジネスについて考える、業界向けイベント「MusicTank The Artist Economics of Streaming」に登壇し、レーベルの現状について説明しました。

ウィーラーはまず、ベガーズ・グループのデジタル音楽からの総売上で、音楽ストリーミングサービスからの収益が世界規模で約40%を占めていることを明らかにしました。

過去6カ月、音楽ストリーミングサービスの市場は大きく成長してきました。

しかし、私たちはもし、そしていつか音楽ストリーミングサービスが音楽業界にとって重要なビジネスへと成長した時、今まさにその時が迫っていますが、私たちがこれまで行なってきたアーティストへ50%を支払う分配比率を見なおさなければならないと、常に明確にしてきました。

と、これまでの分配が変更する可能性について触れました。

ウィーラーは正確なレートまでは明らかにしませんでした。しかし、

(ベガーズ・グループ創設者の)マーティン・ミルズをご存知ならお分かりでしょうが、他のレーベルがアーティストに提供するレートよりも魅力的になるはずです。(中略)私たちは、アーティストにとって最高のレートの確保と、私たちのグローバル規模でのあらゆる面でのサービスやリソースの提供を考慮しながら、適切なバランスを見つけていくつもりです。

と述べています。

ウィーラーによれば、ベガーズ・グループは現在の速度で音楽ストリーミングサービスが成長し、その他の収益源が低迷し続けた場合に今のレートが及ぼす影響について検討したことから、今回の決断に至ったそうです。

レーベルが支払うコスト、つまり「A&R」「マーケティング」「プロモーション」「ディストリビューション」などは、音楽の売り上げから回収しなければなりません。音楽ストリーミングのマーケットシェアが拡大すれば、そこからの収益分配に基づくコストも負担しなければなりません。

ウィーラーはサブスクリプション型音楽サービスに対してはポジティブなスタンスでしたが、YouTubeに対してはフラストレーションを表しました。

もしYouTubeがサブスクリプション型音楽ストリーミングサービスを立ち上げたら、彼らはSpotifyやRdioらを打ち負かすでしょう。その他の音楽サービスも圧倒したいと考えているはずです。それが彼らの戦略です。

(YouTube初期に)私たちレコード会社は不利な立場に追いやられた。その事実は伝えなければならない。でなければ、再び同じことが起きるでしょう。

と述べ、YouTubeの噂されるサブスクリプション型音楽サービスへの対応として、レコードレーベルに注意を投げかけました。

Music Tank Logo(1)

ここで、少しだけイベントを主催したMusicTankという団体の紹介。

MusicTankはロンドンのウエストミンスター大学が立ち上げた音楽業界専門のビジネス・ネットワークで、英国音楽のレーベルやアーティスト、ビジネス関係者、IT業界などが現状の課題や将来の戦略について情報を共有しあったり議論する非営利のコミュニティです。今回の「MusicTank The Artist Economics of Streaming」にはウィーラーのほかにSpotifyのアーティストサービス担当ディレクターのマーク・ウィリアムソン(Mark Williamson)、インディーズアーティストのビリー・ブラッグらがパネリストとして参加しています。

MusicTankでは、定期的にアーティストやレーベルビジネス、ライブビジネス、そして音楽ストリーミングのロイヤリティやマネタイゼーションなど、音楽ビジネスや音楽テクノロジーについてのカンファレンスやコースを実施して、業界関係者や業界外のリソースをつなぐ場を提供しています。

このような団体が存在することは、今の音楽シーンにとって計り知れないメリットがあると思います。まず、アーティストやレーベルや音楽に関係するビジネスが定期的に意見を交換することができます。そして最新の事情やテクノロジー、ケーススタディを専門家から聴くことができます。

さらに、公の場で議論することで課題を浮き彫りにして、解決策を模索していく方向性を共有することができることが非常に大きいと思います。

こう言うと「日本でもやっている」という人達や団体がいらっしゃると思います。ですが、公に向かって情報が流れてくることはまずありません。MusicTankは音楽ビジネスのあらゆる人が情報を交換しメリット・デメリットを議論できる場であり、現状を変えようとするソリューションでもあります。

日本は世界2位の音楽市場であるにもかかわらず、アーティストやレーベルが議論したり、テクノロジーについて考える場所や機会が全くありません。つまり音楽の未来を語る場がないのです。お互い、そして他企業から多くのことが学べるはずです。このような部分から音楽を変えていくことを考えていけば、現状を変えるためのヒントが生まれるのではないでしょうか?

ソース
Beggars Group recalibrates 50% streaming payment to artists and attacks YouTube(4/7 Musically)

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Jay Kogami

執筆者:ジェイ・コウガミ(All Digital Music編集長、デジタル音楽ジャーナリスト)

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