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YouTubeが有料サービスを開始するに当たって、ライセンス契約に同意できないインディーズレーベルの動画を数日内に削除するという情報が広がり、メディアや音楽関係者の間では話題になっています。

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これまでフィナンシャル・タイムズでの取材以来、公式な見解を公表してこなかったYouTubeですが、今回YouTubeのスポークスパーソンが音楽メディア「Death and Texas」に対して、『誤報』によって生まれた混乱を解決するために、YouTube側の正確な情報を伝えてきています。

まずYouTubeのスポークスパーソンによれば、音楽動画を何度も見たりオフラインで見たりするなどさまざまなインタラクションがユーザーと動画には存在するため「YouTubeにアップされる音楽コンテンツは、料理やコメディなどのコンテンツとは同じメディアではない」という認識だそうです。この違いのためにYouTubeは、ユーザーが選択できる新しいレイヤーのサービスを開発しています。

YouTubeのスポークスパーソンは、YouTubeは長い間同サービスが「どんなミュージシャンでもオーディエンスを見つけられる場所」であることに誇りを持っており、これはYouTubeがさらに促進していきたいポイントであり妨げになるつもりは無いと、明言しました。YouTube(と親会社のグーグル)はユーザーにより良い体験を提供するために、オフライン視聴や、アーティスト・カタログとの強力な連携、アーティストや企業が収益をあげられる機能などを追加した新システムを開発してきました。

しかしYouTubeが音楽動画を提供するためには、全く新しい今までとは違う権利を、著作権を保有するパフォーマーとレーベルから獲得する必要があります。この契約上の変更は、以前にYouTubeがモバイル市場向けに実施したことと同じです(デスクトップとモバイルでは動画配信の権利が違います)。新たな契約内容の交渉には、1年以上かかっていると情報ソースは伝えています。そしてこの長期に渡る交渉プロセスにおいて、「5%を除く全てのレーベル」が新しい契約で合意した発言として記事化され、インディーズレーベル団体からの不満を集める要因となりました。

現状を把握した上で、YouTubeのスポークスパーソンは、5%のレーベルが不満を抱えていることを認めています。しかし彼はまた、YouTubeは対象となっているレーベル代表団体は、実際にはコンテンツを所有しておらずYouTubeにコンテンツを提供する立場にないため、彼らとは交渉はしないとも付け加えます。彼はさらにレーベル代表団体は、全てのインディーズレーベルに影響があるとでも言わんばかりに所属メンバーレーベルに事実を曲げて伝えていることに、懸念を示しています。

そして、新たな交渉に関わらず、これはブラックリストに載せるための準備ではないことを指摘し、また動画削除に対するクレームは、これまで長い間適用されてきた法律やルールを部分的に解釈されたに違いないとYouTubeスポークスパーソンは言います。

実際にYouTubeは有料サービス開始に向けて、全ての国のレーベルとは契約できてはいないため、複数のアーティストは動画のマネタイゼーションや動画削除の対象にならない可能性があります。例えばいかなるサービスでも自身の音楽を配信していないプリンスは、楽曲権利者であるためYouTubeでも同じ権利を主張することができます。このケースと同様のポリシーは、YouTubeの有料サービスでも適用されます。そしてコンテンツがブロックされるかされないかは、アーティスト、レーベル、YouTube間の法的な契約に左右されます。

YouTubeのスポークパーソンは、小規模なレーベル代表団体は「(新しい契約が)全てのインディーズレーベルに影響を及ぼすというイメージを作り出そうとしているが、これは間違いである」と主張します。実際に影響があるレーベルは、YouTubeと契約できていない5%のレーベルのみです。

また何度も言及されている5%のレーベルとは、すでにこれまでYouTubeと契約を結んでいるレーベルの中の5%であって、世界に存在するレーベルの5%ではありません。そのため、YouTubeとこれまで動画配信で契約を結んでいないレーベルやアーティストにとって、有料サービスに向けた新たな契約は何の影響もありません。

もしYouTubeと契約していないアーティストが動画を投稿しても、「これまでと何も違いはなく、以前と同じように投稿できます」(YouTubeスポークパーソン)とのことです。

また動画のブロックについては数日以内に開始されると噂されていますが、現在はいつ施工されるか時期は決定してはおりませんが、数ヶ月以内にはユーザーは新しいサービスを利用することができる(YouTubeスポークパーソン)とのこと。

潜在的な収益を考えた場合、YouTubeとレーベルのどちらも最高の条件で契約を結びたいはずです。YouTubeスポークスパーソンは、この目的を達成する上で、「ことの進み具合は非常に殘念だ。何よりもYouTubeはプラットフォームにコンテンツを提供する側に対してのプライバシーは尊重する」と明確にしています。

ソース
YouTube goes on record concerning changes to music video services (6/25 Death and Taxes)


Jay Kogami

執筆者:ジェイ・コウガミ(All Digital Music編集長、デジタル音楽ジャーナリスト)

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