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今年3月に盛大なローンチイベントを開き、華々しく音楽業界へデビューした、ジェイ・Zが運営する高音質音楽ストリーミングサービス「Tidal」。だがイベントに登場したアーティストの1人、アーケイド・ファイアのウィン・バトラーは、サービスの立ち上げには問題があったと英国インディペンデントのインタビューで答えている。

Tidalのローンチイベントにはジェイ・Zの他、ダフト・パンクやマドンナ、カニエ・ウェスト、リアーナ、アリシア・キーズ、ジャック・ホワイトなどが登場し、Tidalのマニフェストに署名する演出が注目を集めた。

バトラーはインタビューでバンドとして参加したことに後悔していないとしながらも、ローンチイベントが残念な印象しか与えなかったと述べている。

どのアーティストもPRについて何も知らなかった。Tidalが高音質でストリーミング配信できることは概念的に好きだったが、立ち上げ自体には問題があった

バトラーはTidalが抱える問題の原因はメジャーレーベルにあると指摘する。TidalはSpotifyやApple Musicなど競争相手が提供する価格(月額10ドル)の2倍の価格設定(月額20ドル)となっている。

バトラーは「メジャーレーベルがTidalの価格(20ドル)を決定した」とレーベルの意向がサービスのビジネスモデルに影響していると非難する。

メジャーレーベル業界はTidalのビジネスを完全に台無しにした。あらゆる段階において彼らには機能する業界を作るためのツールが提供されてきた。だが彼らは全てにおいて失敗してきた。だから俺たちはメジャーと契約するなんて考えたことがない。彼らは何も理解していない

アーケイド・ファイアはグラストンベリー・フェスティバルでヘッドライナーを務めるほど世界的に人気のアーティストになった今でも、インディーズ系レーベルのMerge Recordsと契約している。

バトラーは、「恥を晒すことを恐れていることは馬鹿げている。ジェイ・Zやカニエ・ウェスト、ダフト・パンクとアートそしてディストリビューションの方法について議論することさえもしない」とメジャーレーベルとアーティストの関係をこう説明している。

競争が激しい定額制音楽ストリーミングサービスの分野では、サービスの差別化とマーケティングがカギを握っている。Apple Musicはアーティストを前面に押し出したマーケティングで、作品の独占公開やApple Music Festival、さらに広告戦略とさまざまなアプローチを実施している。Spotifyも「Discover」や「Running」など他には提供できない独自機能や、プレイリストやデータを使った音楽体験を提供している。両社とも音楽ファンや一般ユーザーにリーチするために製品の機能を向上させるだけでなく、強いメッセージ性あるコミュニケーションを継続的に展開していることでメディアや業界から注目を集めていると言える。

その点ではTidalは「高音質」や「アーティスト中心」といった独自の優位性を打ち出せていない状態が続いている。ただバトラーが指摘するメジャーレーベルとの関係性はアップルやSpotifyも同様にプレッシャーがあるはずなので、ひとえにTidal立ち上げの失敗がメジャーレーベルの非とは言い切れない気がする。

音楽ストリーミングが低迷するCDやデジタルダウンロードを超えるユーザー数を獲得する日が来る可能性が高い。毎日気軽に使えるストリーミングだから尚更、ユーザーには本当の魅力を伝えていくPRの必要があると強く感じる。

ソース
Arcade Fire interview: ‘The major record labels are completely clueless’(The Independent)

Tidal launch was mismanaged, says Arcade Fire’s Win Butler(CNET)

image by Kmeron via Flickr

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Jay Kogami

執筆者:ジェイ・コウガミ(All Digital Music編集長、デジタル音楽ジャーナリスト)

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