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ネットラジオでは世界最大規模のPandora (パンドラ)は、1972年以前にリリースされた曲に対して9000万ドル (約110億円)を楽曲のロイヤリティとしてレコード会社に支払うことに同意しました。

Pandoraは1972年2月15日以前に発表された古い曲に対して現行の米国著作権法が適応されない抜け道を狙い、ロイヤリティを払わずにストリーミング配信をしていることが著作権侵害だと、ユニバーサルミュージック、ソニーミュージック、ワーナーミュージック、ABKCO Music& Records、キャピトル・レコードを含むアメリカの音楽業界団体、全米レコード協会(RIAA)から訴えられていました。

この1972年以前の楽曲に関する著作権侵害は音楽産業が音楽ストリーミングサービスに対して強く解決を求める問題の一つで、ネットラジオSirius XMも同様の訴訟で今年6月に2億1000万ドルの支払いで同意しています。

今回の決定によって、PandoraはRIAAに9000万ドルを2016年末まで支払い、さらに2016年以降の支払いについてもRIAAと交渉して1972年以前の楽曲に関する新たな契約に同意することになりました。最も大きな結果は、1972年以前に曲を作ってきたアーティスト達にもロイヤリティが払われることです。

アメリカでの話なので非常に限定的ですが、アメリカは世界最大の音楽市場であるため、数多くの音楽サービスそして作品の権利者には著作権問題は大きな影響を及ぼし、またその余波が海外市場にも影響する場合もあります。

現在、PandoraやSirius XMなどネットラジオや衛星ラジオサービスは合衆国法によって1972年以降にリリースされた音楽には楽曲使用料として数百万ドル単位のロイヤリティ料を音楽業界に支払っています。彼らのロイヤリティを徴収するために、RIAAとは異なる非営利団体「SoundExchange」が存在しています。

しかし1972年以前の楽曲は現在の連邦著作権保護法ではカバーされていません。なぜならこの時代の曲は1909年に制定された著作権法の対象になるからです。この法律によってPandoraのような音楽ストリーミングサービスはこれまでロイヤリティを支払うことなく古い楽曲を配信し続けてきました。

アメリカでは通常のラジオ局は音楽を放送する際に録音物に対してのロイヤリティ支払いが連邦法によって控除されています。その代わりにFM/AM放送局だけでなく、ネットラジオサービス、衛星ラジオサービス全てが個別に音楽出版社や作詞作曲家へロイヤリティを支払い、曲の使用料がクリエイターや権利保有者に分配される仕組みとなっています。

一方でSpotifyやApple Musicなど、オンデマンド型の音楽ストリーミングサービスはレコード会社と個別に交渉しライセンス契約を結びます。ですので、1972年問題には直面する必要はありません。

Pandora、Sirius XMが音楽業界と合意に達する中、CBS Radio、iHeartMedia、Cumulusのアメリカ3大地上波ラジオ運営会社も同様の訴訟に直面しています。

今回の結果はRIAAのPandoraからの勝利と見られています。ですが、徴収した9000万ドルがどのようにアーティストや権利関係者と分配されるのかなど、同意された内容は公表されていません。

ソース
Pandora to pay $90 million in settling royalties lawsuit over pre-1972 recordings(Appleinsider)
Record Companies and Pandora Reach Agreement On Pre-1972 Recordings(RIAA)


Jay Kogami

執筆者:ジェイ・コウガミ(All Digital Music編集長、デジタル音楽ジャーナリスト)

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