PonoMusicStore

2014年4月にKickstarterの「テクノロジー」カテゴリーで史上最高記録となった623万ドルの資金を集めた、ロックアーティストのニール・ヤングが発案した高音質音楽サービス「Pono Music」。日本から購入した人も大勢いたのではないでしょうか?

Pono Musicのサイトが7月20日から突如オフライン状態に入り、ダウンロード購入ができない状況が続いています。

サイトで公表された声明文によれば、オフラインの原因となったのは、Pono Musicの高音質ダウンロードシステム用のソリューションを提供してきたOmnifoneが先日買収されたことによって、プラットフォームの移行を余儀なくされたことが理由です。Ponoはロンドンの配信サービス「7digital」からを新たな配信パートナーに迎えシステムの移行を進めています。ですが、サイトの再稼働には数週間を要する模様で、実際のスケジュールについての言及はありません。

高音質音源の再生用プレーヤー「Pono Music Player」は現在もサイトで販売が行われています。

Pono Music以外にもSiriusXM、さらにサムスンがかつて運営していた音楽サービス「Milk」など音楽配信サービスのバックエンドを運営するためのソリューションを提供するOmnifoneは2016年5月に身売りを発表、1000万ドルである米国企業によって買収されたことが明らかになります。この「ある米国企業」はアップルではないか?という噂が広まっていますが、この買収にはOmnifoneの特許ポートフォリオが含まれていないことや関係者の証言によって、アップルが買収していないと言われています。

ニール・ヤング「Ponoはテスラモーターズに似ている」

大きな期待と共にスタートしたPono Musicですが、現在は開始当時の勢いを維持しているとは思えないほどニュースのヘッドラインを飾ることも音楽業界の認識を変えるほどのインパクトを出せていません。

状況に追い打ちをかけるように、Pono Music運営者のニール・ヤングは、ライバルサービスの「TIDAL」で新アルバム「EARTH」を独占配信して、Pono当初の狙いから逸脱した行動に疑問の目が向けられ、熱狂的なPonoファンがついにアンチPonoサイト「ponosucks.com」を立ち上げる始末。

Pono music

5月にウォール・ストリート・ジャーナルに対してニール・ヤングはPono Musicは「何万のプレーヤーと何百万トラックが今まで販売した」と現状を語り、

宣伝もしていないが常に成長している。我々はテスラモーターズと少し似ている。クオリティがある。これは大きなコンセプトだ

と大きな自信を見せています。

MP3の音質に疑問を唱えるニール・ヤングは、現在Spotify(1980年代のゲフィン時代以外)やApple Musicなど音楽配信サービスでは、カタログを配信していませんが、iTunesストアやAmazon MP3ストアではアルバムを販売しています。世界は定額制音楽ストリーミングに移行していますが、現在は減少傾向にある「ダウンロード」のシステムに本人は期待をしているかもしれませんね。

ソース
Neil Young’s PonoMusic Store Goes Offline as It Switches Content Providers (Billboard)
Die-Hard Pono Fan Can’t Take It Anymore, Starts PonoSucks.com(Digital Music News)
Neil Young’s New Album Isn’t Available on Pono…(Digital Music News)
Episode 717 – Neil Young (WTF with Marc Maron Podcast)
Neil Young on the Possibility of a Pono Streaming Service (WSJ)


Jay Kogami

執筆者:ジェイ・コウガミ(All Digital Music編集長、デジタル音楽ジャーナリスト)

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