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YouTubeとGoogle Playの音楽パートナーシップ・ディレクターを務めるタマラ・フリヴナック(Tamara Hrivnak)が、Facebookに移り同社の「グローバル音楽戦略および事業開発」統括役に就任することを、本人のFacebookで明らかにしました

音楽業界に精通した弁護士としての背景のフリヴナックは、2011年にグーグルで音楽戦略パートナーシップ担当ディレクターに就任する以前は、音楽出版大手ワーナー/チャペル・ミュージックでデジタル音楽事業戦略担当副社長を努めており、グーグルやアップル、マイクロソフト、さらにはゲームパブリッシャーやモバイルキャリアとデジタル配信のライセンス契約を成立させてきた経歴を持ちます。音楽業界とプラットフォーム両方で活躍した音楽ライセンス・ビジネスの第一人者である彼女は、特に今Facebookが欲しい人材の一人と言えるでしょう。その理由はFacebookの音楽ライセンス・ビジネスへの関心です。

Facebookが音楽ライセンス・ビジネスを急ぐ理由

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2016年からFacebookが音楽戦略の特にライセンスビジネスに関心を示していることは、これまで同社が探してきた人材や、著作権違反に当たるコンテンツを探し削除する著作権管理用ツールの開発の噂が示してきました。Facebookが開発していると言われる、著作権を侵害する音楽コンテンツを見つけ出すツールは、くしくもフリヴナックが働いていたYouTubeの「コンテンツID」に近いシステムと言われています。

Facebookでは現在も膨大な音楽動画がシェアされ、人気コンテンツの1つとなっています。しかし、Facebookは、レコード会社とは直接ライセンス契約を結んでいません。そのため、動画がシェアされても、その収益がクリエイターに分配されたり、著作権を侵害するコンテンツが投稿されても、権利関係者が削除申請を行なうことも出来ない状況が続いていることが、音楽業界では問題視されており、2016年10月に米国音楽出版協会(NMPA)CEO兼社長のデヴィッド・イスラエライト(David Israelite)がビルボードでFacebookを名指しで現状の改善を求める寄稿記事を書いたことで、Facebookがシェアする音楽コンテンツのライセンス問題を浮き彫りにしました。

Facebookが狙う戦略の1つとして、レコード会社と直接ライセンス契約を結ぶことが急務であり、そのためには、レコード会社や権利関係者が著作権違反するコンテンツを、膨大なFacebookのコンテンツに中から特定するツールの導入、さらには音楽業界が納得する条件による関係の構築が絶対となっています。レコード会社とライセンス契約に関する交渉は、すでに始まっていると言われていますが、決着は2017年春以降になるだろうと伝えられています。

YouTubeも、2016年9月に音楽業界のベテラン、リオ・コーエン(Lyor Cohen)を同社初の音楽部門グローバル責任者に迎え、レコード会社やアーティスト、マネジメントなどとTouTubeの関係を強化する人材を投入しました。「デフ・ジャム」「アイランド・デフ・ジャム」など独立系レーベルからアーティストを育てた経歴や、ワーナーミュージックのCEOを努めた実績を踏まえても、コーエンの採用はYouTubeにとっても、アップルやSpotifyさらにはFacebookなどと競い、音楽ビジネスを強化する意味で、重要な戦略的採用と考えられます。

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興味深いことは、リオ・コーエンがワーナーミュージックのCEO時代の2006年に、YouTubeとメジャーレコード会社として初めて音楽動画の配信でライセンス契約を結び、業界をあっと言わせたこの契約が行なわれた時、フリヴナックはワーナーミュージックの出版部門で外部パートナーとのライセンス契約の戦略担当だったことです。

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ソース
Facebook Hires YouTube’s Tamara Hrivnak to Lead Global Music Strategy (Billboard)

It’s Time for Facebook to Accept Songwriters’ Friend Request: Op-Ed(Billboard)


Jay Kogami

執筆者:ジェイ・コウガミ(All Digital Music編集長、デジタル音楽ジャーナリスト)

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