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ライセンスビジネスの世界的な業界団体「国際ライセンシング産業マーチャンダイザーズ協会(LIMA)」が発表した最新の調査結果によれば、2016年のマーチャンダイジングビジネスにおける音楽物販の売上は9.4%成長して3400億円以上に達しました。

ラスベガスで5月23日から25日に開催されたライセンスビジネスの世界カンファレンス「Licensing Expo 2017」に先駆けてLIMAが発表した「Annual Global Licensing Survey」で、世界のライセンスビジネスの売上高は2016年は前年比4.4%増加して2,629億ドル(約29兆3460億円)という、目を見張るような売上を記録するプラス成長の業界の状況が見えてきます。

30兆円という売上規模を実感するには、並大抵の企業の売上では到底追いつけない規模だが、トヨタの2017年3月通期の売上高が27兆5971億円、またアップルの2016年通期売上高が2,156億ドル(約22兆円)という、それ相当の業績を残している企業が実在するので、彼らを目安にしていただければ、どれほどの業界かヒントになります。

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音楽業界が記録した昨年のグッズ販売からの売上は前年から9.4%増加して28.3億ドルから31億ドル(約3,462億円)に拡大。注意したいのは、この調査データは小売店販売、ライセンスビジネス、輸出入からのデータが中心であり、グッズ販売の多くを占めるコンサート会場での売上は含まれていないので実際のグッズ販売の規模はこれよりも巨大になると見られています。

エンターテインメント/キャラクターライセンスは、全体で45%を占める最大の産業となり、売上規模は1183億ドル(約13兆2069億円)。企業/ブランドの商標ビジネスが546億ドル(約6兆953億円)、ファッションが311億ドル(約3兆4721億円)、スポーツが253億ドル(約2兆8245億円)と続きます。

ライセンスビジネスから分配されるロイヤリティによる収益は1.3%の微増で141億ドル(約1兆5738億円)。

*1ドル=112円換算

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コンサート会場での売上や、アーティストサイトや個別のECサイトでの売上実績が含まれないとなると、現代の全体像が見えづらいですが、音楽業界の物販が小売ベースでどの位動いているか、俯瞰的な規模が見えてくるのは参考になるのではないでしょうか。

日本でもすでにお馴染みの光景となりつつあるが、バンドがブランドと組んでオリジナルグッズを販売したり、ポップアップショップを期間限定で出すなど、グッズ販売ビジネスの手法も以前とは異なるほど多様化する中、ユニバーサルミュージックはアーティストのマーチャンダイジング専門のグッズ制作販売会社「Bravado」(ブラヴァド)を傘下に収めフル活用する戦略に高い評価が集まるなど、レーベル側にも新たな動きが起こり始め、物販とライセンスビジネスはアーティストの収入と、中長期的なブランディングを作る上で重要な戦略の一部となっています。

Bravadoについて

グッズ販売の事例も最近では紹介されるようになり、アーティストやマネジメント会社の考え方もだんだんと変わる時期に入っているのかなと感じている昨今、今週のオリコンさん発行の業界紙「CONFiDENCE」の特集が「アーティストグッズ大研究」という内容で、日本のグッズ販売の現状と事例、成功するための戦略を紹介していたのも偶然性とは言い難い業界の注目度の高さを実感しました。

コンフィデンス 2017年5月22日号

ソース
Global Music Merch Biz Grew to $3.1 Billion in 2016: Study (Billboard)
LIMA Study: Global Retail Sales of Licensed Goods and Services Hit US$262.9 Billion in 2016 (LIMA)
image: swimfinfan via Flickr


Jay Kogami

執筆者:ジェイ・コウガミ(All Digital Music編集長、デジタル音楽ジャーナリスト)

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