ライブハウス「Billboard Live」を運営するBillboard Japanは、ライブエンターテイメントとテクノロジーに特化した音楽ハッカソン「LIVE HACKASONG」を開催します。最終発表会は1月30日(月)にBillboard Tokyoで開催、選ばれた7チームによる新技術のデモと、インディペンデントな活動で注目のシンガーソングライター仮谷せいらさんと、世界レベルの楽曲配信や広告/映画の世界でも活躍するサウンドクリエイターの池内ヨシカツさんによるライブパフォーマンスも開催されます。

LIVE HACKASONG | Billboard JAPAN

「Live Hackasong」の狙いは、ライブエンターテイメントとテクノロジーを掛け合せた「エンタテイメント体験の拡張」がテーマになります。ハッカソンで発表されるのは、新しいライブ演出の技術や、ライブ会場の内外で体験を共有するツールなど、いま利用可能な技術やハードウェアを応用して新しいライブ体験の未来を提示することを目指しており、ライブハウスを運営するBillboard Japanが2017年に開催して今回が2年目となる音楽ハッカソンです。

音楽ハッカソンをライブハウスが長期的に支援

テクノロジー企業ではなく、ライブハウスや音楽メディア、音楽チャートを運営するBillboard Japanがハッカソンを開催するという企画力は注目の一つです。

今回「LIVE HACKASONG」に技術提供する企業は、NTT西日本、ネストビジュアル、レコチョク、1→10(ワン・トゥー・テン)と多岐に渡ります。参加企業が提供する技術の詳細や、エンターテイメントビジネス領域での取り組みについての事例をBillboad Japanが紹介しています。こうしたハッカソンをメディア力ある企業が開催するとイベントの様子や参加者の詳細を記事として見える化できるので、参加できなかった人ともBillboard Japanの取り組みを広く伝えやすくできるのは一つの方法として正解だと思います。もしかするとライブハウスが技術者と音楽業界を引き合わせる場所としての役割を担うことも視野に入れているとすれば素晴らしいと思います。

【Live Hackasong 参加企業インタビュー】NTT西日本 | Special | Billboard JAPAN

【Live Hackasong 参加企業インタビュー】ネストビジュアル | Special | Billboard JAPAN

【Live Hackasong 参加企業インタビュー】レコチョク | Special | Billboard JAPAN

【Live Hackasong 参加企業インタビュー】ワン・トゥー・テン・ホールディングス | Special | Billboard JAPAN

このハッカソンのもう一つの特徴は、参加する技術チームが3カ月以上に渡り技術開発に没頭できるスタイルで、時間をかけて課題の改善に取り組めることが楽しみの一つです。すでにアイデアソンは2017年11月、ハッカソンが12月にそれぞれ開催されており、また昨年も参加したパートナー企業のレコチョクは、昨年優勝したチーム「Live CJ」とは、同じくハッカソンで出会った東芝と共にハッカソン後も技術開発を支援する形が生まれているそうです。

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エンタメビジネスの事業性を問うべき

ライブエンターテイメントをテーマにした技術は、俯瞰して見れば何もステージ上のパフォーマンスをVRやリアルタイムで配信するといった技術を思いつきがちですが、それだけに留まらず、オンラインチケットや事前のイベントプロモーション、フードやドリンク、VIPサービスなど、多岐に渡って技術を応用出来る領域でビジネスが考える事ができます。

先日インタビューさせていただいた、ロサンゼルスで音楽系スタートアップを支援している「Techstars Music」アクセラレーターの運営者ボブ・モジドロウスキー(Bob “Moz” Moczydlowsky)が語ってくれたのは、「『ドローン対策』(アンチ・ドローン)は、スタジアムや音楽フェスティバルでの観客の安全確保と会場運営の効率化を向上させられるので、ライブビジネスとして考えている」と、日本では考えられない視点で音楽ビジネスを見ていることが印象に残っています。

変わらぬ音楽業界を前進させる起業家たち。「Techstars Music」発起人が語る、音楽系アクセラレーション・プログラムに注目が集まる理由 | Musicman-NET

彼の考えは何もVRやARといった技術的イノベーションを使ったアイデアではなく、イベントプロモーターやオーガナイザーの視点に立って初めて気付くアイデアであり、「エンタテインメント体験の拡張」と言われてアーティストとファンの関係だけを考えるだけでは、なかなか「拡張」はしないでしょう。

今回の「LIVE HACKASONG」の審査基準は、新規性・革新性・エンターテインメント性・実現可能性、等の観点となっているが、Billboard Japanさんには次回はもう一つ「事業性」もぜひ加えていただきたいです。ライブビジネス的な観点でBillboard Japanとアーティストに売上を落とせる仕組みがあってもいいかもしれません。

Live Hackasong|イベント詳細|ビルボードライブ東京

今回は、ライブパフォーマンスに仮谷せいらさんと、オープニングDJとして池内ヨシカツの参加が決定。審査員長は、慶應義塾大学大学院教授の中村伊知哉さんはじめ、審査員に音楽プロデューサーの玉井健二さん、スペースシャワーの取締役執行役員の案納俊昭さん、国際オタクイベント協会代表の佐藤一毅さん。

筆者も審査員として参加させていただきます。

最優秀賞に賞金10万円およびビルボードライブ東京で展示する権利が与えられるそうですが、音楽業界やエンタメ業界からハッカソン後も開発を続けて欲しい、組みたいと手を上げる人や企業が出てくれることにも密かに期待しています。

イベント詳細

イベント:Live Hackasong

日時:1月30日(火) OPEN 17:30 START 18:30 21:00終了予定

チケット:Price free/電話予約のみ
※飲食代は別途

出演:仮谷せいら(シンガーソングライター)、池内ヨシカツ(DJ)、学生および社会人による7チーム

MC:大地洋輔(ダイノジ)、佐藤千尋(慶應義塾大学大学院 メディアデザイン研究科 特任助教)

審査員長:中村伊知哉(慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科 教授)

審査員:玉井健二(音楽プロデューサー)、案納俊昭(スペースシャワーネットワーク取締役兼執行役員)、佐藤一毅(国際オタクイベント協会代表)、ジェイ・コウガミ(デジタル音楽ジャーナリスト)

ソース
Live Hackasong|イベント詳細|ビルボードライブ東京


Jay Kogami

執筆者:ジェイ・コウガミ(All Digital Music編集長、デジタル音楽ジャーナリスト)

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