Fast Companyが2018年版の「世界で最も革新的な企業」ランキングを発表し、音楽ビジネス部門も併せて発表されました。

The 2018 World’s Most Innovative Companies(Fast Company)

Fast Companyの音楽リストは以下の通りです。

1. Spotify
2. Dubset
3. Big Machine Label Group
4. Major Lazer
5. Smule
6. B-Reel
7. アトランティック・レコード
8. Kobalt
9. Vinyl Me, Please
10. フェンダー

Spotifyが選ばれた要因は2つ。一つ目は2016年にクリエイターサービス責任者に就任したトロイ・カーター(Troy Carter)の存在。二つ目はDiscover Weekly、Fresh Finds、Release Radarなどデータに基づいてパーソナル化されるプレイリストの価値。

そのつながりはというと、プレイリストと新人アーティストの配信のデータ連携が成功していることが大きいからです。

Spotifyでは毎週多数のプレイリストが更新されます。特に、毎週月曜日に各ユーザー向けに音楽視聴データを解析してオススメの曲30曲を自動でコンパイルしてくれるプレイリストDiscover Weeklyは、50億曲以上をわずか1年間で配信しました。こちらはまだ日本では未公開のプレイリストです。

8000組以上のアーティストの楽曲がこのDiscover Weeklyで初めて聴かれていると言われ、この結果はトロイ・カーターが作るアーティストのためのサービスと、データと連携したプレイリストで音楽ファンとアーティストをつなぐシステムが機能していることを証明しています。Spotifyは、音楽ストリーミングサービスであると同時に、ビッグデータ企業として音楽市場に革新を起こしている認識が広がっています。

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DubsetはDJミックスやリミックスなどネット上やストリーミングサービスで公開されるデジタルコンテンツから、使われた楽曲の著作権を解析するテクノロジーを開発、元の楽曲の権利者とDJやリミキサーと利益を分配するサービスを提供しています。

DubsetはDJミックスやリミックスなどネット上やストリーミングサービスで公開されるデジタルコンテンツから、使われた楽曲の著作権を解析するテクノロジーを開発、元の楽曲の権利者とDJやリミキサーと利益を分配するサービスを提供しています。

Dubsetのサービス「MixBANK」は3万以上のレーベルからの楽曲を認識可能で、Apple MusicやSpotify、ソニーミュージックと提携を結び、DJやクリエイターがミックスやリミックスでマネタイズできる収益分配の仕組みと、複雑な著作権問題をテクノロジーでシンプル化することに成功しました。

Big Machine Label Groupは、日本では一部でしか馴染みがないはず。テイラー・スウィフトが所属するカントリーミュージックのレーベルグループです。彼らは「音楽ストリーミングで配信しない戦略」で成功した数少ない事例を作ってきました。

Major Lazerは企業ではありません。プロデューサー・DJのDiplo、Jillionaire、Walshy Fireのトリオから成るエレクトロニックミュージック・トリオ。2017年は「Know No Better」にトラヴィス・スコット、MigosのQuavo、カミラ・カベロをフィーチャーし、ミュージックビデオは24時間で2500万再生を稼ぎ出すヒットを作った一方で、ライブ・ネイションとHuluと共同でVRドキュメンタリー・シリーズ「On Stage」に出演するなど、挑戦を続けています。

Smuleはカラオケ動画アプリ「Sing!」やピアノアプリ「Magic Piano」など誰でも簡単に音楽を楽しめるアプリを継続して開発し続けています。昨今の「リップシンク」動画カルチャーの台頭でも「Sing!」はその先駆け的存在でした。

アーティストとファンの接点を近づける

このトップ10で共通しているのは、多くが2000年以降に生まれた企業やプロジェクトであり、アーティストやクリエイターをあらゆる形で支援する活動をテクノロジーと融合しながら行っているという点の2つです。

Spotify、Major Lazer、Smuleはいずれも2008年にスタート。

DubsetとVinyl Me,Pleaseは2012年、Big Machineは2005年、B-Reelは1999年、Kobaltは2000年と、どれも開始から10-15年の期間で、音楽市場に大きなインパクトを残しています。

例外は1946年創業のフェンダーと、1947年創業のアトランティック・レコードという老舗の楽器メーカーとレーベル。しかしアトランティック・レコードは昨年エド・シーランとCardi B、Lil Uzi Vertのヒットを作り、フェンダーは定額制レッスン動画サービス「Fender Play」を立ち上げ、ギターレッスンをオンライン上で行い、新たな消費者開拓に注力しています。

創業50年以上を超えるメーカーが今も「イノベーション」を起こし業界から認知されるその経営手腕は見事としか言いようがありません。

そしてSpotifyやDubset、Big Machine、B-Reel、アトランティック・レコード、Kobaltは音楽コンテンツを作るクリエイターと、彼らのファンとの接点を大切にして、作品を紹介する場や仕組み作りをデータやテクノロジーを活用してアップデートしています。 Smuleやフェンダー、Vinyl Me, Pleaseは、音楽カルチャーが好きで継続的に接し、日常化させるためのアプリやサービスを開発しています。

「音楽」を売るだけの企業は、もはや「革新的」ではなく、クリエイターやカルチャーのためのサービスを作り、音楽市場のエコシステムに革新を起こせるかに企業や業界はイノベーションを感じていると言えます。

最も革新的な企業はアップル

Fast Companyが毎年公開しているランキングは編集者やライター36人以上が数千規模の会社に調査を行い、36の業種カテゴリーに分けて今年最も革新的な企業や、業界と社会にインパクトを残したイノベーターをランク付けしたリストです。

トップ10は以下の通りでした。

1. アップル
2. Netflix
3. Square
4. Tencent
5. アマゾン
6. パタゴニア
7. CVS Health
8. ワシントン・ポスト
9. Spotify
10. NBA

Fast Companyではさまざまな業種の「革新的企業」のリストを公開しています。ご興味のある方はこちらからどうぞ。

ソース
The 2018 Most Innovative Companies (Fast Company)
Why Apple Is The World’s Most Innovative Company (Fast Company)
Spotify Files to Go Public on New York Stock Exchange (Bloomberg)

Top image: Rosa Maria Koolhoven via Flickr

Jay Kogami

執筆者:ジェイ・コウガミ(All Digital Music編集長、デジタル音楽ジャーナリスト)

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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