Spotifyと競合する音楽ストリーミングサービス「Deezer」がサービスエリアを拡大、韓国、台湾でも開始!

パリを拠点とするサブスクリプション型音楽ストリーミングサービス「Deezer」は、積極的な海外展開を進め、現在180ヶ国以上の市場に進出しています。これは音楽ストリーミングサービスの分野では最大です。しかし、Deezerは世界市場1位と2位のアメリカと日本に進出しない戦略を取っています。しかしその姿勢もようやく変わりそうな考えがDeezer内にあることが、CEOの発言で明らかになりました。

via WSJ

DeezerのCEO、アクセル・ドーシェ (Axel Dauchez)は、先日オーストラリアのニュースメディアとのインタビューで、米国と日本への今後の展開についての考えを語りました。競合するSpotifyやRdio, AppleやGoogleなどとの音楽ストリーミングサービスの覇権争いでどのようにして競争に打ち勝つか、そのためにDeezerが目指しているゴールを詳細に明言する内容になっています。普段は大まかな成長戦略や機能について語るドーシェCEOが、日本市場について語った貴重なインタビューです。

CEOが戦略について語る機会は大変稀だと思ったので、インタビューの内容を全訳してみました。もし誤解を招く表現があれば、コメントでご連絡ください。

青が参入国

■ Deezerは米国と日本では現在サービスを展開していません。この状況はすぐに変わるのでしょうか?

Deezerは確かに米国と日本では事業を展開していません。米国に進出しない理由は、競合の存在のせいではありません。理由はコストの問題からです。それもレコード会社に支払いで発生するコストの問題ではありません。ローカル市場に食い込んでいるiTunesとの間接的な競争と、メディアに必要なコストが挙げられます。Pandora Radioとの時間の競争にもコストが発生します。Pandoraは全く違うコンセプトのサービスで、視聴時間のカニバリゼーションを生みます。

また米国進出におけるサブスクリプション型音楽サービスの認知を高める啓蒙活動も、高額なコストになります。しかし、この分野は日々前進しています。米国市場では啓蒙活動が進めば進むほど、有益な市場へと変わっていっています。ですので私達は参入に向けて最適なパートナーを探し、最適な時期を待っています。

■Deezerは昨年に1億3000ドルの資金調達を実施しました。この新たな資金投入で米国市場参入が急速に進展することはありますか?

それはありません。この資金は私たちが目指す、米国圏外で世界初となるグローバル音楽サービスに成長するために活用されます。もし米国からサービスを開始していたら、もっと米国寄りのサービスになっていたでしょう。私たちは当初から、世界各地の複雑性を尊重してきました。それ以外のやり方では、成功できません。突然巨大な市場に参入した場合、製品イノベーションやリソースなど投資する全ての面での成功が求められます。

■そして日本市場への参入は?

日本は大変特殊な市場です。特殊過ぎるので、早急な進出はしないという決断をしました。また高い認知度を獲得できるまで参入はしません。特別に対応を進める必要がある市場です。日本では、音楽に関わる権利の仕組みが集中型で日本独自の仕組みで行使されます。iPhoneの取り扱いが、一つのキャリアに限られています(勘違いと思われる)。

最近になって、私達は通信キャリアや日本の権利者からの兆候を感じます。もしかすると日本市場にも参入するかもしれません。

■ 1億3000万ドルはどのような分野に投資しますか?

4つのブロックに投資を分散します。一つ目は製品です。私たちは特に製品へ重点的に投資をします。Deezerでは社員に向けて目標の5%を達成したと言い聞かせています。その5%とは、適切な市場の適切なユーザーにあらゆるデバイスを通じて2500万曲を提供したにすぎません。

二つ目は、製品のローカリゼーションです。私達は現在世界18ヶ所にオフィスを構え、またこれらのオフィスがカバーしきれない国ごとの事情にサービスを対応できるように20人を配置しています。さらに約50人の音楽編集者がいます。これらが他社との差別化要因であり、この部分をより洗練させて行きたいと思っています。ローカルマーケット向けに設計されたグローバルサービスだと思って欲しいのです。

三つ目は、無料サービスです。ご存知の通り、無料サービスの運用は非常にコストがかかりますが、ですが音楽ストリーミングを知ってもらうために重要となります。億単位のユーザー数にリーチすることも可能になります。巨大なビジネス機会です。しかしそのためには資金が必要です。

四つ目は無料ストリーミングと平行しますが、通信キャリアとの提携です。私達は現在25カ国で通信キャリアの料金プランに組み込まれたサービスを展開しています。一方で、マーケティング活動にも投資をしています。例えばオーストラリアでは音楽フェスティバルに関わり、音楽ライフスタイルの一部になりたいと考えています。投資することで、Deezerは1年後にはオーストラリアの音楽業界でトップのプラットフォームになるでしょう。

■世界ではどれくらいのユーザーがDeezerの無料サービスを利用していますか?
世界では月間アクティブユーザーは約1000万人です。
■有料会員数は?
400万人です。
 ■Deezerには市場においてどのような存在を目指していますか?

私達にはゴールがあります。公式のゴールは、グローバル市場の5%を2016年までに獲得することです。もちろんこれ以上になることを狙っています。そして業界に二つの変革を起こしたいと思っています。一つ目は、今から二年以内に人々と音楽をつなぐ全く新しい仕組みを提案すること。出来なければ、私達のミッションは失敗だったということになります。

二つ目は、私達が海外への進出を検討し始めた時、新興市場だけに注目せず、小規模な市場にも参入することを決めました。この戦略の背景には、現在の各国の音楽市場はディストリビューション・システムによって制限されているという背景があります。例えばアフリカのアーティストは従来から存在するディストリビューション・システムへのアクセスがありません。従って、彼らは成功することなく、軽視されながら扱われてきました。

私たちは、どこからでもアクセスできる存在となり全ての制限を乗り越え、さらにユーザーがどの国からでもサービスにアクセスでき、世界中から音楽にアクセスすることができるようになった時にようやく、アーティストが本来受けるべきはずの成功へのキッカケが提供出来ると思っています。

これが実現できれば、チャートシステムを変えることも可能になります。小規模市場の話ではありません。もっと巨大で成熟した市場のチャートシステムも変えられるはずです。過去20年に渡り視聴してきた音楽チャートは、ニセモノばかりです。小さなローカル市場の音楽を反映しているにすぎません。これらの制限を破壊することが、私たちの第二の野望です。そして作品を自由化し解放します。すごく大きな仕事です。

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インタビューの最後は攻撃的な野心を語ってくれたアクセル・ドーシェCEO。チャートシステムを破壊するとは、大胆発言ですね。これまでは語られることの少なかった米国と日本市場への考えを述べてくれた貴重なインタビューです。Deezerは先日台湾や韓国などアジア諸国にも進出しており、すでにアジア圏内も視野に入れて事業を展開しています。音楽ストリーミングサービスは確実に世界の向こう側(西側)の話ではなく、もうすぐそこまで近づいてきています。

Spotifyと競合する音楽ストリーミングサービス「Deezer」がサービスエリアを拡大、韓国、台湾でも開始!

Deezerは現在楽曲数が2500万曲以上を超え、有料会員数は400万人、月間ユーザー数は1000万人を突破するほど成長しています。これだけでも素晴らしい業績だと思います。しかし、これだけ数多くのユーザー数や楽曲数、そして国への進出を図っていても、日本に進出し浸透させる決定的要因とはなりません。

Spotifyと競合するサブスクリプション型音楽ストリーミングサービス「Deezer」、有料会員数が400万人を突破

ドーシェCEOが語るように、複数の条件が日本参入には必要になってきます。ストリーミングサービスの啓蒙活動、レコメンデーション機能やパーソナライズド・ラジオなどユーザーの嗜好に合ったサービスのイノベーションやローカリゼーション、携帯事業者など適切なパートナーの存在、顕在層へのアプローチとユーザー間での認知拡大、アーリーアダプターで終わらせないための一般層へのPR、そしてローカルのアーティストとレーベルからの支持。これらの要因が揃って初めて音楽サービスはスタートラインに立つことが出来ると言えます。

日本の音楽シーンを盛り上げていくためにも、音楽ストリーミングサービスだけのチカラではなく、業界全体の後押しがますます必要になってくるでしょう。そして何よりもアーティスト、そしてユーザーの声と支援がこれからは最も重要で、声を上げ新たな音楽体験を積極的に求めていくことで、変わろうとしない音楽市場に変化をもたらすことができるでしょう。今から1年後に僕達はどのようにして毎日音楽を聴いているでしょうか? 日本に音楽ストリーミングサービスが本当に根付くことを心から祈っています。

 

ソース
Hot Seat: Axel Dauchez, CEO of Deezer(6/21 Music Network)

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Jay Kogami

執筆者:ジェイ・コウガミ(All Digital Music編集長、デジタル音楽ジャーナリスト)

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