音楽を作ってCDにするだけで売れる時代は既に終わりました。

アーティストやレコード会社、マネジメント会社は店頭に新作を並べるもっと多くの人に音楽を届けるために、テクノロジーに活路を見出し始めます。この2-3年の間に数多くのスタートアップが生まれ新しい音楽サービスを提供し始めました。

しかし一人のマネージャーは、新しいサービスを使うだけでなく、育てていくことに今後の音楽ビジネスとテクノロジー業界の未来があると感じています。

レディー・ガガを成功に導いたマネージャー、トロイ・カーター (Troy Carter)は、音楽ビジネスの業界では様々な顔を持っています。レディー・ガガやジョン・レジェンドのマネジメントを担当する他に、自身のマネジメント会社「Atom Factory」のCEOを務め、また製品デザイン・ブランディング・エージェンシー「A IDEA」のトップも務めながら、アーティストの価値を最大化する取り組みを行っています。

そして、カーターのもう一つの顔、それは企業投資家としての別の顔です。カーターは自分の投資ファンド「AF Square」を通じて、SpotifyDropboxUberSongzaSummlyなどテクノロジー企業へ投資してきました。

AF Squareが投資した企業の一部

AF Squareが投資した企業の一部

だがカーターは、知名度の高いスタートアップに投資するだけでは、満足していません。カーターはこの度7500万ドル(約73億円)から1億ドル(約97億円)規模のファンド設立を目指し、シードラウンドからシリーズAラウンドの企業への投資を増加すると発表しました。

エンターテインメント業界特に音楽の分野では、テクノロジーや起業家に対する支援が他の業界に比べて未だに多くありません。トロイ・カーターはスタートアップ支援を通じてテクノロジーを音楽の世界に溶け込ませ、固定概念を覆そうとしている先進的な考えを持つ一人です。

音楽とテクノロジーをクロスオーバーさせるビジネスマン

トロイ・カーターは、最新のテクノロジーに最も敏感で、オープンな姿勢を貫いているビジネスマンです。

AFSquare   Home

カーターはこれまで音楽ストリーミングサービス「Spotify」を投資家として早くから支援してきました。またカーターは音楽ストリーミングサービスのビジネスモデルと将来性にもいち早く賛同を表明したマネージャーです。例えばFacebook主催のカンファレンス「f8」ではSpotifyのCEOダニエル・エク(Daniel Ek)と共にパネル・ディスカッションに参加し、新しいデジタル音楽サービスの価値について

お互いが勝ち残れる財務モデルを中心に良好な対話を築くために、これからは私の会社と、ダニエルの会社(=Spotify)や、彼らのような企業とのパートナーシップが極めて重要になっていくでしょう。

とコメントしています。

またカーターはレディー・ガガが発表予定の新アルバム「ARTPOP」で、アルバムアプリ形式でリリースするという先進的なアプローチにチャレンジしています。レディー・ガガは新アルバムを「インタラクティブな宝石箱」と表現しています。ARTPOPはまた「アート、ファッション、テクノロジーと、世界中のインタラクティブなコミュニティが組み合わさった、音楽とビジュアルを生み出すシステム」になると評されています。

さらにカーターは、レディー・ガガのファン専用SNS「Little Monsters」を支えるコミュニティ・プラットフォームを提供している「Backplane」に積極的に関わり、投資から立ち上げを実施してきました。

カーターは昨年11月にザ・ガーディアンのインタビューで、

アプリを開発するというアイデアは、将来性があると思います。人々が移動するために馬を買う時代は既に終わっています。世界は変化していると、私は感じるのです。ビジネスをする上で、私たちは変化に応じて対応していかなければなりません。

デジタル音楽時代のマネジメント・スタイル

アーティストにとってトロイ・カーターのような存在は、日本の芸能界でイメージするような、ただのマネージャーではありません。アーティストにとってはコンサルタントで、戦略家で、ビジネスパートナーの存在なのです。

これはレディー・ガガとトロイ・カーターの関係だけではありません。海外ではその他にジャスティン・ビーバーとマネージャーのスクーター・ブラウン(Scooter Braun)、マドンナとマネージャーのガイ・オセアリー(Guy Oseary)のように、アーティストとマネージャーがビジネスパートナーとしてマーケティングやキャリアを中長期に戦略立てています。

トロイ・カーターやガイ・オセアリーのように企業投資家としてテクノロジー企業と関係を持つことは、デジタル音楽が一般化した現代においてとてつもないメリットを発揮します。レディー・ガガの「Little Monsters」コミュニティなど、ファンが望んでいるものやアーティストが望んでいるものを、テクノロジーで戦略的に解決することができるようになっていきます。

またアーティストにとってもテクノロジーに鋭いマネージャーがいることで、他のアーティストではできない活動を行える機会も増やせます。

ガイ・オセアリー(左)と俳優のアシュトン・カッチャーはベンチャーファンド「A-GRade」のパートナーを務めている

トロイ・カーターやオセアリーのように投資家として活動をすることは大抵のマネージャーやマネジメント会社では難しいことです。しかし、今世界でトップを走るアーティストのマネージャーやマネジメントに携わる人間は、テクノロジーとのつながりが非常に強いことは事実です。

投資までは行かないにしろ、テクノロジーのトレンドを理解していることや、どのテクノロジーに一般消費者が多く時間を費やしているのかなどについて理解し説明することができます。音楽をより多くの人に届けるためには、テクノロジーを理解し戦略的に活用することが、最も重要なことになってきています。

CDが売れない、音楽ストリーミングでも収入がわずか、露出が増えないことに多くのアーティストは悩まされています。しかし、スタートアップや新しいビジネスモデルに注目しているマネージャーが出現したことは、音楽ビジネスのテクノロジー化が進み、アーティストが勝ち残れる機会が増えることを意味します。

デジタル音楽の時代は引き続き続きますが、これからはただテクノロジーを使っていくのだけでなく、テクノロジーを見つけ戦略的に深めていけるかが、生き残るポイントではないでしょうか。それは投資かもしれませんし、共同開発かもしれません。どのようなスタイルにしても、テクノロジーは音楽で生き残るためのかすかな希望の光です。2013年はテクノロジーを中心に音楽ビジネスがさらに活性化するかもしれません。

[Photo via Hubert Burda Media]

ソース
Tripling-down on tech, Lady Gaga manager Troy Carter starts $75M+ fund to spend on startups(10/23 Pando Daily)
Lady Gaga’s manager Troy Carter earmarks $75m fund for tech startups(10/24 The Guardian)

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Jay Kogami

執筆者:ジェイ・コウガミ(All Digital Music編集長、デジタル音楽ジャーナリスト)

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