サブスクリプション型音楽ストリーミングサービスの「 Spotify 」は、タブレットとスマートフォンでの音楽ストリーミング再生を無料にする新しいフリーミアム戦略を発表しました。
Spotifyはこれまでオンデマンドで聴き放題できる無料サービスをデスクトップ向けに展開してきました。一方で、スマホやタブレットでオンデマンド視聴するには、月額9.99ドルのSpotifyプレミアム・プランに登録する必要がありました。新しい戦略では、無料サービスがモバイル端末でも実現します。
まずSpotifyはオンデマンド視聴できる広告付きの無料サービスをタブレットで開始します。タブレットユーザーは好きな音楽を検索したりプレイリストを作成するなど、自由に音楽を楽しめます。一方で無料のタブレットユーザーには広告が表示されるようになり、もし広告を外したい場合は、プレミアム・プランに登録することで外すことができます。Spotifyによれば、広告はデスクトップと同じように3ー4曲毎に1回の割合で流れます。
Spotify Shuffle
そしてスマートフォンでは新しい無料の「Spotify Shuffle」サービスを提供開始します。Spotify Shuffleはユーザーが選んだアーティストの楽曲だけが、ランダムに再生され続けるオプションで、好きなアーティストの曲をいつでも聴け、また知らなかった曲や昔聞いた曲を見つけられる可能性が高まります。
例えばレディーガガをユーザーが選ぶと、Spotifyはレディーガガのカタログをシャッフルして再生してくれます。
Spotify Shuffleではまたキュレーションされたプレイリストにもアクセスできるようになります。例えばジムに行った時にテンションが上がる曲やリラックスしたい時向けの曲など、シチュエーションに応じて作成されたプレイリストが用意されています。
Spotify Shuffleは、iOSとAndroid端末で利用が可能になります。
ユーザーは、曲を選択したり、曲順を変えたりすることはできません。その代わりに聞いた楽曲をプレイリストに追加することで、デスクトップやウェブ上でもお気に入りした音楽が楽しめますし、ユーザー同士で共有することもできます。
Spotify Shuffleが競合するPandoraやiTunes Radioとも決定的に違う点は2つ。1つ目は、各アーティストの楽曲のみを再生する音楽プレーヤーで、似たアーティストやジャンルの音楽をレコメンデーションする競合のサービスとは異なる点。2つ目はプレイリストとの親和性が高い事です。プレイリストが作成されればされるほどユーザーとプレイリストとのエンゲージメントが高まり、その結果として音楽視聴時間とサービス利用時間が拡大していく可能性が高まります。
Spotifyはこれまで無料プラン以外には、月額4.99ドルでデスクトップから広告無しのオンデマンド視聴ができる「アンリミテッド・プラン」と、月額9.99ドルでデスクトップとモバイルでオンデマンド視聴ができる「プレミアム・プラン」を提供してきました。
今回発表された無料サービスによって、Spotifyは全ての端末での視聴を制限付きですが無料にしました。
この無料サービスはかなり衝撃的です。この形ならスマホユーザーもSpotifyを使う機会も増えるでしょうし、どんなシチュエーションにおいても音楽が聴きたいと思った瞬間に聴けるような環境が整っていきます。Spotifyは音楽を配信するだけでなく、音楽と出会うミュージックディスカバリーの機能も果たそうとしているところが非常にユニークです。
モバイル戦略を強化することは、長期的な観点からも今後海外展開を進める上でも重要になっていきます。これはPCユーザーからモバイルユーザーへターゲットを切り替えることではなく、全てのユーザーが同じ音楽体験を実現できるようにするという意味があります。米国に限って言えば、競合のPandoraはモバイルでの利用が大きく(そのためモバイル広告収入も多い)、またアップルもiTunes Radioを無料展開するなど、PCとモバイルでの音楽体験をシームレスに実現するテクノロジーをどの企業も展開している流れが起きています。
テクノロジーによって音楽がどんどん見つけやすく聴きやすくなっていき、益々音楽は「所有する」ものからユビキタスに「アクセスする」ものへ価値が変わっていきそうです。
スマホ人口が高い日本でもこの無料オプションが実現すれば、かなり面白いです。
ソース
Spotify expands free streaming music service to tablets(12/11 The Verge)