世界的に注目が拡がる音楽ストリーミングサービス。ユーザー数や対応するデバイス数は着実と成長していますが、その一方でミュージシャンや権利者への利益配分については常に議論され時には改善を訴える声があがり、その度に避難の集中砲火を浴びています。昨年Spotifyは、ビジネスモデルや収益分配を説明した特設サイト「Spotify for Artists」を開設し、クリエイター支援に向けて情報をオープンにし始めました。

では世界最大の音楽メディアYouTubeは、どのくらいの規模で音楽業界の収益に貢献しているのでしょうか?

YouTubeコンテンツ担当副社長のトム・ピケットは、YouTubeが過去数年に渡る音楽業界への支払い額が10億ドル(約1000億円)を超えたことを明らかにしました。

これはフランスのカンヌで開催されている音楽ビジネス・カンファレンスMidemの中の、音楽動画ビジネスに関するパネルディスカッションでピケットが述べたコメントです。ピケットはパネルディスカッションで、YouTubeの広告型モデルが、特に世界に向けてコンテンツを発信したいミュージシャンに向いているプラットフォームであり、同時にマネタイゼーションの可能性も拡がるプラットフォームでもあることを主張しました。

ピケットはまた、噂されているYouTubeの定額制音楽サービスについてもコメントし、

見てみないと分かりません。問題は、これまで無料に親しんできた人たちを、上のレベルに誘導しようとしていることです。

と述べています。

 

これに対して、インディーズレーベルの中には、YouTubeが音楽ビジネスを行うことを不安視する声も見受けられます。昨年Passengerの「Let Her Go」が大ヒットしたInertiaのマネージングディレクター、コリン・ダニエルズは「Googleは音楽ビジネスを知らないので怖い」とコメントし、Studio !K7の創業者、Horst Weidenmuellerは「YouTubeの音楽ビジネスへの参入は市場の独占となり、独占は破壊につながる」と悲観的なコメントを残しています。

また違った見方もあります。イギリスの音楽業界団体BPI(British Phonographic Industry)の代表、ジェフ・テイラーは、

数10億規模のストリーミング再生を分析すると、その多くは音楽ビデオに流れている。そこから業界への収益分配を考えると、非常に少なかった

とコメントしています。

YouTubeに肯定的な意見を占めるレーベルとしては、Tommy BoyのCEOトム・シルバーマンは

ほとんどのレコード会社にとってトップ5の収益源の1つで、現在も成長している。完璧ではないが、正しい方向に進んでいる

とコメントしています。

今年は音楽ストリーミングの勝ち組が、世界的に大きく成長していく年だと考えられます。その中では、日本など新市場への進出も戦略的に行われると期待できます。そうした動きの中で、より多くのクリエイターたちを巻き込みお互いがWin-Winの関係を構築して、中長期的な視野でクリエイターのマネタイゼーションを支援できるプラットフォームとして定着する1つの方法は、ビジネスモデルや収益分配などの情報をオープンにしていくことではないかと思います。クリエイターにとって有益な情報がオープンになれば、サービスをマネタイゼーションの選択肢として考える機会が増えると思いますし(そう合ってほしいと願っています)、またそこから動画やストリーミングを活用した新たなビジネスモデルが生まれる可能性も拡がるかもしれません。

 

ソース

YouTube exec: We’ve paid out over $1 billion to the music industry over the ‘last several years’(2/3 The Next Web)

YouTube reveals $1bn music payouts, but some labels still unhappy(2/3 The Guardian)

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Jay Kogami

執筆者:ジェイ・コウガミ(All Digital Music編集長、デジタル音楽ジャーナリスト)

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