元ワーナーミュージック・グループの会長兼CEOのリオ・コーエンは、自らが昨年立ち上げた新しいレコード会社「300」とTwitter社の提携を発表、ソーシャルメディアのデータを活用してミュージシャンやレコード会社が活用しきるA&Rツールを開発して行くことを明らかにしました。
リオ・コーエンといえば業界屈指の音楽ビジネスマンで、ワーナーミュージックやデフ・ジャムで新人タレントの発掘とレコード制作で有名、また、ワーナーミュージック時代にYouTubeやSpotifyとのライセンス契約を締結するなど、デジタル領域全般を統括していました。新しいスタートアップ300はデジタル中心の全く新しいコンテンツ企業と言われていますが、どのようなビジネスモデルになるのかまだ大きく明かされていません。ディストリビューションはアトランティック・レコードが担当することで合意しており、またグーグルなどが出資していることで注目を集めています。
Twitter社との提携により、300はTwitterが蓄積している、ロケーション情報などプライベートな情報を含む全ての音楽データにアクセスができるようになります。そして300は、Twitter社のデータ管理を支援し、そしてアーティスト、レコード会社、コンシューマー・ブランドがアクセスし活用できるデータ分析ツールの開発を手がけて行きます。
このパートナーシップでは、Twitterのデータから注目の新人を発掘したり、ファンコミュニティを開拓することを目指します。またTwitter社は、音楽ビジネスという巨大な市場において、Twitterを活用したアーティストやレコード会社のコミュニケーションやセルフ・プロモーションに加えて、データ分析という付加価値を提供することが可能になります。
Twitter社は2013年春、一般ユーザー向けに音楽サービス「Twitter #Music」を発表しましたが、ユーザーが伸び悩み、1年を待たずに閉鎖した苦い経験があります。
Twitterのデータを取り込んだA&Rツールは、単に新人発掘だけでなく、マーケティングツールとしての可能性も考えられることから、非常に拡張性の高いシステムになるのではないでしょうか? また音楽業界関係者が開発を手がけることで、音楽ビジネスのノウハウや現場の意見も反映されることと思われます。
300には、グーグルが投資していることから、もしこのTwitterとの提携で成功を収めることができれば、コーエンは次にYouTubeやグーグルの検索結果とも連携するツールまで裾野を広げるかもしれません。コーエンのようなベテラン音楽ビジネスマンが、これまで誰も考えつかなかった新しいモデルを提案するところから、常に革新的なビジネスモデルを作ろうとしている起業家精神が強く伝わってきて、世界の音楽業界の広さを感じます。
ソース
Venture Will Mine Twitter For Music’s Next Big Thing (2/2 New York Times)