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アップルが音楽サーヴィスで新展開を見せています

アップルがヘッドフォンビジネスと合わせて定額制音楽ストリーミングサーヴィス「Beats Music」を3,000億円で買収して6ヶ月以上が経ちました。これまでアップルがSpotifyなどの定額制音楽ストリーミングのライバルとなる新しいサーヴィスを開発していると噂が広がっている間にも、U2のアルバム無料ダウンロードなど新しさを打ち出してきました。ただ実際には、音楽ビジネスの話題はほとんど聞こえてこなかったのが実態です。そして今回ようやくその一部をアップルが明らかにしました。9to5macがレポートしています。

アップルの新しい定額制音楽ストリーミングサーヴィスは、現状のBeats Musicを発展させたものではなく、全く新しいデザインとサーヴィス内容に、Beatsの技術とコンテンツを連携させたコラボレーションになるとのこと。サーヴィス名はまだ決定していませんが、このサーヴィスはiOS、iTunes、Apple TVとの連動にフォーカスされているそうです。現在アップルではiPad、iPhone、iPod Touch向けのアプリ開発と、Beatsの機能を連携させたiTunesのアップデートを開発中だそうです。

機能

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新しいサーヴィスはクラウド型音楽ストリーミングにiOSまたはコンピューターのローカルライブラリーに保存した曲を連携させた内容になります。ユーザーは新しい検索機能でiTunesライブラリーの曲だけでなくBeats Musicのカタログも検索でき、どちらからも音楽を再生ができるようになります。またユーザーは好きな曲をiOSやコンピューターに保存することも、クラウドに全ての楽曲を保存して再生することが選べるようになります。

新サーヴィスではBeatsの強みである、アクティビティやムードに合わせて人がキュレーションしたプレイリストを提供する特徴も受け継ぎます。

さらに以前アップルが「Ping」で失敗したソーシャルネットワーキング機能も、Beatsからアップデートさせて提供すると予想されています。

インターフェース・デザイン

一部で大きく賞賛されていたBeats Musicの黒と赤のインターフェースは、アップルのiTunesとMusicアプリに揃えるようにデザインが刷新される予定です。アプリ上では既存のBeats Musicユーザーが新サーヴィスに移行できるようにApple IDとの連携を行い、さらにライブラリーの移行には「iTunes in the Cloud」上のコンテンツとの統合を行います。

興味深いことにアップルはiTunes Match、iTunes Radio、iTunes ストア全てを現状のまま残す予定だそうです。

価格帯

アップルはBeats Musicと同様にフリーのストリーミングは提供しない予定です。その代わり、有料プランは競合が提供している月額9.99ドルの価格帯より比較的安い月額7.99ドルで提供されると情報ソースは伝えています。音楽ストリーミングでは、SpotifyもRdioもBeats MusicもGoogle Play Music All Accessもすべて月額9.99ドルの有料プランを提供していますが、Beats Music以外のサーヴィスは無料で聴けるフリープランも提供しています。

アップル初のAndroidアプリも登場予定

新しい定額制音楽サーヴィスはアップルとして初めてAndroidへも展開します。Androidアプリの開発はアップル社内のエンジニアが行っています。買収したBeats MusicはすでにAndroidアプリもリリースしています。

プロジェクトのキーパーソン

アップルはBeats Music買収の狙いが音楽ストリーミングサーヴィスを開発できる人材を獲得することと言われてきました。新しいストリーミングサーヴィスのプロジェクトを指揮しているのは、iTunes担当副社長、ロバート・コンドラック(Robert Kondrk)。アップルに25年近く勤務するベテランで、CEOのティム・クックやマーケティング担当上級副社長のフィル・シラーと同年代の一人。

その他にはBeats Musicの前CEOイアン・ロジャース、共同創業者でメジャーレーベル「インタースコープ・ゲフィン・A&M」の前CEOジミー・アイオヴィン、「ナイン・インチ・ネイルズ」のトレント・レズナーも、アップルの新ストリーミングサーヴィスのプロジェクトには参加しています。

しかし情報によれば、Beatsの機能連携は思ったように進んでおらず、「新サーヴィスの開発は酷い状況」とも伝えられています。さらにBeats Musicの社員をプロジェクトの中核に置く人員配置にアップル社員も不満を感じているようです。ベテランのアップル社員で、Beats Music担当上級副社長に任命されたアップルのエンジニアリング部門トップのボビー・ガザ(Bobby Gaza)氏は2014年12月にアップルを退職したとのこと。

開始日

またアップル上層部がプロジェクトの方向性を決めきれていないため、サーヴィスのローンチ日程も危なくなっているとも伝えられています。元々の開始日は2015年3月を予定していました。しかし、6月に開催するイベント「WWDC」で発表する可能性が高くなってきています。WWDCでは2011年に「iTunes Match」、2013年に「iTunes Radio」を発表するなど、新しい音楽サーヴィスを過去にも発表してきました。

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初の音楽ストリーミングサーヴィス、初のAndroidアプリ開発、初の本格的な定額制コンテンツ・サーヴィスなど、初物ばかりのアップルの新音楽サーヴィスで、アップル経営者達のフォーカス次第では、音楽業界以外でも大きな話題を集めるはずです。

業界の最大手アップルが音楽ストリーミングに参入することは、ユーザーの関心がそこにあることを証明しているようなもので、音楽の聴き方が大きく変わる可能性を秘めています。

しかし、音楽ストリーミングでアップルが後発であるという実態は変わらない事実です。

2015年に入って定額制音楽ストリーミングサーヴィスの「Spotify」が有料会員数1,500万人突破を発表しました。すでにSpotifyを利用している多くのユーザーに、アップルの(有料オンリー野)新サーヴィスに移行させることは、どこまで支持を得られるか分からないウェブサーヴィスでは予想しにくい。

アップルは音楽ストリーミングの分野では「オンリーワン」なポジションではないし、なることも難しい。そうすると、考えられる差別化は買収したもう一つのビジネス、ヘッドフォン事業かもしれません。

「Beats by Dre」ブランドで広く知られたヘッドフォンやオーディオ機器は、iPhoneやiPadとのモバイルデヴァイスと相性が良く、また持ち運びたくなるファッション性の高い製品に通じるデザイン哲学でもアップルと共通するところが多くあります。例えばハイレゾのヘッドフォンにストリーミングが加わる展開も視野に入れているかもしれません。

「音楽サーヴィスだけがすべてではない」。ヘッドフォンが加わることで、ハードウェアとソフトウェアを両側から開発していくことができる、アップルが成功してきた戦略に、新しい音楽サーヴィスも向かっているのかもしれません。

ソース
The Next Episode: Apple’s plans for Beats-based music service revealed (2/4 9to5Mac)


Jay Kogami

執筆者:ジェイ・コウガミ(All Digital Music編集長、デジタル音楽ジャーナリスト)

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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