世界の音楽団体を代表する組織である「国際レコード産業連盟」(IFPI)は、世界中で「金曜日」を共通のアルバムリリースの日とすることを発表しました。今回の同意によって今後は、各国や地域ごとの異なるアルバムリリース日が全て金曜日に統一されます。主要な小売店やレコード会社、アーティスト達は各地域の金曜日深夜12時01分に新アルバムをリリースすることが新たな共通認識となります。今回の決定は今夏から開始する予定です。
アルバムリリース日は、イギリスとフランスは月曜日、米国は火曜日、日本は水曜日、オーストラリアとドイツは金曜日など、主要な音楽市場で異なる日が通例でした。しかしリリース日の相違が、先にリリースされた地域での違法ダウンロード行為を助長し、アルバム売上の低下の要因を生み出していることが、音楽業界が今回の決断に至った理由の一つです。
最近ではビヨンセやマドンナ、ビョークたちがiTunesを使い、事前に大きなプロモーションをせずにアルバムをリリースする手法が実施されてきました。そうすることで、リークを最小限に止めアルバム発表の話題を最大化させることによって購入につながる可能性が高まるからです。またビョークの場合、最新アルバム「Vulnicura」が事前にリークされたことによってリリース日を2ヵ月早めた経緯があります。
IFPIはプレスリリースの中で、世界統一リリース日に対する期待を次のように答えています。「今回の決定は音楽ファンだけでなく、ソーシャルメディアを活用して音楽をプロモーションしたいと考えるアーティストも恩恵をうけることができるはずです。これはまた新作リリースに興奮や特別な期待を呼び戻す機会を創出します」。
IFPIは、今回の合意に向けて9ヶ月に渡り協議し、さらにミュージシャンを代表する世界的な組合である「国際音楽家連盟(FIM)や、代表的な小売店、さらにはSpotifyなど音楽ストリーミングサービスと意見を交換したと言います。反対の意見を示したのは独立系小売店やレーベルグループで、米国の小売店はリリース日の統一には賛成だったものの、金曜日という日には難色を示したそうです。
またイギリスで最大のインディーズレーベル・グループ「Beggars Group」のトップ、マーティン・ミルズ(Martin Mills)は、統一化されるリリース日に反対意見を述べています。
デジタルの世界に向けて協力体制が必要なことは認める。だが週の中で二度あるチャンスの一つを捨てて、さらに前の週の間違いを修正する機会を放棄することはクレイジーとしか思えない。
世界レベルでファンとコミュニケーションを実現するアーティストは、国別の発売日に悩まされることなく、アルバムリリースのプロモーション戦略を発売日の金曜日をベースに作ることが可能になります。これによって、例えばどの時期から音楽ストリーミングを始め、エクスクルーシブ・トラックを発表して、動画を公開してなどの活動が世界ベースで実施できます。
一方で、金曜日が共通のリリース日になれば、各メディアへのPRが激しい競争になることが予想されます。日本で言えば、例えば金曜日の「スッキリ」や「Mステ」枠確保が激化する、などですが、そこはデジタルのチカラで話題を最大化してほしい限りです。
今回の決定によって、今後はより一層アルバム・プロモーションのクリエイティブが重要視されることは確実でしょう。
ソース
Music industry moves to Friday global album release (2/26 Yahoo!)
Global release day to go ahead following international consultation(2/26 IFPI)
New music to be released on Fridays worldwide from this summer(2/26 The Guardian)
image by Henrik Berger Jørgensen via Flickr