世界最大のレコード会社、ユニバーサルミュージック・グループで、デジタル部門の社長を務めてきたロブ・ウェルズ(Rob Wells)が、15年間務めた同社を突如離れることが明らかになりました。
グローバル・デジタルビジネス担当社長のウェルズは、2010年10月からユニバーサルミュージックのデジタル戦略を統括して、メジャーレーベルのデジタルへの移行を推進してきたことで知られています。会長兼CEOのルシアン・グレンジの右腕として、iTunesやYouTube、Spotifyなどさまざまな音楽サービスやビジネスモデルが乱立するデジタル音楽時代において、レコード会社のデジタルビジネスを指揮するという最も困難な役割を務めてきました。
Billboardによれば、ユニバーサルミュージック・グループは当面ウェルズの後継者は探すことはしないようです。
レコードレーベル「BMG」の郵便室でキャリアを始めたウェルズは、その後デジタル事業のトップに任命され、ユニバーサルミュージックUKへと移りニューメディアおよびデジタルサービス担当者を務めます。そして2006年からユニバーサルミュージック・グループに移動し、デジタル担当副社長を務めた後現職に就きました。
ロブ・ウェルズと日本
昨年9月に代官山で3日に渡って開催された、ITと音楽のカンファレンス「THE BIG PARADE 2014」でロブ・ウェルズはキーノート・スピーカーとして来日する予定でした。日本では公式の講演は初ということで、業界内では期待が高かったのですが、イベント直前になり、来日が不可能となってしまったことがあります。代理にはユニバーサルミュージック・グループのテクノロジー部門トップを努めるサイモン・ワット(Simon Watt)が急遽来日して講演を行いました。
思えばU2がアップルのiPhone 6/Apple Watch発表会で、新アルバム「Songs of Innocence」のフリーダウンロードを発表したのが、THE BIG PARADE(9月13日)が始まる4日前の9月9日。ユニバーサルミュージックのInterscopeからリリースされたアルバムの「フリーダウンロード」、アップルのティム・クックCEOが「史上最大のアルバムリリース」と呼んだほどのコラボレーションが何かしら関係していたのかもしれません。
ダウンロード黎明期から音楽ストリーミングまで、デジタル音楽によって音楽の消費が変革する姿を、全て見てきたウェルズがメジャーレーベルのトップエグゼクティブとして業界に与えた影響は計り知れません。彼の存在が無ければ実現していなかった戦略も数多くあるはずです。
これでアップルやグーグルに移籍したらさらに驚きですね。音楽業界の方向性を示した一人のこれから何をするのか、動きが気になります。
ソース
Universal Music Group President of Digital Rob Wells to Exit(2/24 Billboard)