これまで何度か紹介してきた、月額会員料を支払うことで最新作品がダウンロードできる、ファンととレコード会社が直接つながるレコード会社向けのデジタル音楽配信サービス『Drip.fm』の人気が拡大しているようです。今回新たにヒップホップ系インディーレーベルFool’s Gold Recordsと英国音楽界の名門Domino Recordsが参加を発表しました。
Drip.fmの仕組みを簡単に紹介。SpotifyやLast.fmのように共通のサイトでコンテンツを配信するのではなく、各レコード会社が個々のサイトを持ちながら配信ができます(YouTubeのチャンネルに近い)。レコード会社は配信する楽曲や特典、会員料も自由にカスタマイズできます。
一方、ファンはサイトから支払い登録を済ませるだけでコンテンツがダウンロードできます。支払いはクレジットカードで出来るため、ライセンス契約で制約のある音楽サービスとは違い、日本からでもアクセスし会員登録することができます。非常に簡単な仕組みです。
Drip.fmは、米ミシガン州にあるエレクトロニックレーベルGhostly Internationalが、レコード会社が直接消費者に音楽を届けられる仕組みとして独自に開発した配信プラットフォームです。Drip.fmでは、毎月10ドルをファンが支払うので、レコード会社には一定の売上が生まれるメリットがあります。またDrip.fmはレコード会社に使用料や登録料を求めません。(その代りに、売上からサービス料を貰います。)
ストリーミングサービスの場合一定量が再生されてもわずかなロイヤリティ収入しか生まれないことを考慮した場合、Drip.fmはより効率的なマネタイズのオプションを提示します。またコアファンとつながることができるから、より効果的なプロモーションを行うことも可能になると思います。
ミュージシャンから見た音楽サブスクリプション–疑問視されるサービスからの収益 (11/11/2011 CNET Japan)
*追記:レコード会社の方へ。Drip.FMは現在ベータテスト中です。配信をご希望の方または検討中の方は、下記から招待リストにサインアップするか、またはメールで連絡してみてください。
新たに加わったのは米国と英国の人気レコード会社2社。まずは5月に、A-Trak (DMC最年少世界王者、カニエ・ウェストのツアーDJ)とNick Catchdubsによるブルックリン発のインディーレコードレーベル『Fool’s Gold』が、『Fool’s Gold: The Goldmine』を開始した。人気のヒップホップアーティストDanny BrownやKid Sister, Kid Cudi、DJのFlosstradamus、日本人バンドThe Suzanらが所属するFool’s GoldはDJやヒップホップ好きの間にコアなファンを持つレーベルです。
月額10ドルのThe Goldmine会員にサインアップした人はもれなく新作がダウンロードできます。
– 非売品Danny Brown 「Die Like A Rockstar (Brodinski remix)」
– 新作2作
サインアップはこちらから
Fool’s Gold Records
Goldmineのメンバーになると以下の特典がもらえます。
– 新譜、新曲の先行ダウンロード
– 限定トラック (リミックス、DJミックス、アカペラ)
– 320 kbps MP3 またはWAVファイルダウンロード
– オンラインストアの15%割プロモコード、特別ディスカウント
– メンバーシップカード、イベント等への先行アクセスなどメンバー特典
そして今回新たに、ロンドンに拠点を置く、名門インディーレーベルDomino RecordsがDrip.fmを使った配信プログラム『Domino Drip』サービスを開始しました。
Dominoは1993年に創業したレコード会社で、フランツ・フェルディナンド, アークティック・モンキーズ、ザ・キルズ、アニマル・コレクティブ、ダーティー・プロジェクターズ、Four Tet等ロックからエレクトロニックの人気アーティストを15年に渡り発掘し輩出している大手です。
これまでもDIY精神の意識が強く、ジャンルに縛られない新人を積極的に発掘して、コアファンやメディアから高い注目を集め音楽シーンに強い影響を与え続けてきました。
Domino RecordsはDrip.fmではファンに毎月最低1枚の最新アルバムを含む音源2作品を届けるとサイトで発表しています。
サインアップはこちらから
Domino Dripメンバー (月額9.99ドル)になると以下の特典が毎月もらえます。
– Domino Records, 傘下のDouble Six, Ribbon, Weird Worldからの新作、クラシック、限定高音質MP3またはWAVのダウンロード
– アルバム2作、ボーナス音源をリリース日にダウンロード
– 【最初の100会員限定】ダーティー・プロジェクターズ、リアル・エステート(Real Estate)等の限定トラックが入った超限定ビジュアルアート冊子「Smuggler’s Way」+ソノシート、http://bit.ly/wrnBE2
– Hot Chip, ダーティー・プロジェクターズ、アニマル・コレクティブの最新アルバムをリリース月にダウンロード
– 6月に会員登録すると、Wild Beatsの「Smother」、Lower Densの「Nootropics」、Hot Chipの「Night and Day」と新アルバム「In Our Heads」(6/11リリース)をダウンロード
– 6ヶ月ごとにDomino Recordsのオンラインストアでアナログレコード、CD、グッズが30%オフのクーポンをゲット http://bit.ly/o0XBX9
「Smuggler’s Way ビジュアルアート冊子」(激レアものです)
image via Tumblr
毎月10ドル=約800円で最新アルバムを含む3作品が発表日にダウンロードでき、その他の限定作品やグッズのディスカウントがもらえることを考えた場合、コアファンにとっては付加価値が非常に高く充実した投資です。
また、継続的にコンテンツを手に入れられるという利便性にも優れる。興味深いのは、熱心なファンとシェアや口コミのソーシャルなつながりではなく、純粋にコンテンツによる確実なつながりを形成できる仕組みができたことは、消費者と対話する上での貴重なチャンネルが一つ増えたことを意味すると考えられるのではないでしょうか。
レコード会社(またはコンテンツホルダー)は、オンラインショップよりもさらに近く、ストリーミングサービスより一歩引いた中間の立ち位置からファンと接することができるようになったことで、Drip.fmと既存(または新規の)ソーシャルメディアを組み合わせて、コアファンにはよりコアな体験を(会員特典)、潜在的ファンは熱心なファン(SNSからDrip.fm登録への導線、口コミ)とファン化の価値を深化できる導線がDrip.fmのようなサービスによって作れる可能性も考えられます。
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