Red Bull Amplifier

飲料メーカーのレッドブルは音楽スタートアップを支援する目的のアクセラレーター「Red Bull Amplifier」を立ち上げます。

Amplifierでは音楽体験を引き上げてくれるスタートアップをジャンルを問わず幅広く支援します。そしてRed Bull Amplifierは資金を投資したり、スタートアップの株式をもらう代わりに、スタートアップが最も必要とするユーザーへの露出を支援するために、自社がSNS上に持っている3800万人以上の膨大な一般ユーザーへのアクセスを無償で開放していきます。またスタートアップはレッドブルが世界で展開するイベントや、提携するアーティスト、イベント会場へのアクセスも実現します。

レッドブルはこれまで、Red Bull Music Publishing, Red Bull Records, Red Bull Academy Music Radioと音楽ブランドを立ち上げ運営しています。Red Bullの音楽への取り組みは、世界中の人が音楽でひとつになりアイデアをシェアするためのプラットフォームになっています。オルタナティブ・カルチャーを支援してきたレッドブルの新しい取り組みのAmplifierでは、クリエイティブで野心ある音楽スタートアップが集まるプラットフォームを提供し、アイデアを市場投入するサポートを行なっていく予定です。

 

アクセラレーターには、テック業界で有名なシリコンバレーのアクセラレーター「YCombinator」や、ヨーロッパの「Seedcamp」があります。しかしレッドブルのアプローチはそういったアクセラレーターとは全く異なりもっと自由なアプローチをとります。

「支援するアイデアに制限を設けない」というスタンスがAmplifierの売りの一つ。

Amplifierへの申請は、製品の革新性と、どれだけファンとアーティストの音楽体験を向上できるかで審査されます。サイトに表記される募集要項には、

ハック・レベルから製品化間近のレベルまで、広域にスタートアップをカバーします。

– 「あなたの製品(サービス)は革新的で、音楽体験を引き上げてくれますか?」
-「あなたは独立したアーリーステージのスタートアップで、一緒に働くチームを持っていますか?」
-「あなたの製品は市場投入の準備ができていますか?または多くのユーザーに公開できる段階のありますか?」
-「わたしたち(レッドブル)とあなたはレッドブルの音楽チャンネルでスゴイことを実現できますか?」

あなたがスタートアップでない場合、上記のクライテリアに該当しないけれど、支援が必要な素晴らしいソリューションを持っているなら、ぜひ私達に連絡してください。hello@redbullamplifier.com

音楽スタートアップはレッドブルのウェブサイトから申し込みができます。スタートアップをジャッジするのはSoundCloudの事業開発担当VPのデイヴ・ハインズ(Dave Haynes)、テックメディアVentureBeatのシアラ・バーン(Ciara Byrne)、レッドブル・ミュージック・アカデミーのダビド・ボルトット(Davide Bortot)、Sidekick Studiosのアシ・シャラビ(Asi Sharabi)、UKアーティストのGhostpoetが務めます。選ばれたスタートアップは、レッドブルがグローバルで展開するRed Bull Studios, Red Bull Music Academyへのアクセス、ブランドのオンラインチャンネルや提携アーティストとの連携が可能になります。申し込み締め切りは4月22日です。

 

SoundCloudのデイヴ・ハインズは、「小規模の資金を獲得したり、知名度を獲得するだけでは、スタートアップにとって有益では無いと思います。アーリーステージのスタートアップに必要なモノは、将来ユーザーになるかもしれない膨大な規模の一般消費者への露出です」とコメントしています。

音楽スタートアップの重要性は近年のデジタル音楽業界の中でも更に増しています。それというのもテック企業や音楽企業が提供しきれない分野を補ってくれて、さらに付加価値を提供してくれる存在だからです。SoundCloud, Spotify, Songkick, Shazam, RapGeniusNext Big Sound, 、みな分野が違うサービスですが全てスタートアップであり、音楽ファンとアーティストに新しい価値と音楽体験を提供してくれる企業ばかりです。(SongKickは上記のアクセラレーターYCombinator出身)

海外では音楽スタートアップを支援するRed Bull Amplifierのようなアクセラレーター、企業がサポートする音楽ハッカソン、スタートアップのコンペが年中開催されることが当たり前になっています。また上記の企業もこのコミュニティやスタートアップ支援に積極的に関与しています。一方、まだ日本ではこの環境とコミュニティは出来上がっていません。

今日本のユーザーは大企業や一部の企業が提供するサービスで満足している状況です。いえ、もっと言えるのは、音楽サービスが一部の企業に頼り過ぎなため全て汎用化され過ぎで、既に欲求を充足している人や付加価値が感じられない多くの人にとって、継続利用する意欲や始める関心が気薄になりがちだと感じます。音楽を楽しむ環境が作れなければ、「課金制」「サブスクリプション制」「定額制」という新しいモデルがいくら出てきても、既に少ない需要の中から消費者の関心を引くことはできません。音楽スタートアップを奨励し支援する環境を作ることで、もっと音楽体験に新しい楽しみ方とイノベーション、付加価値が出せるのではないでしょうか? スタートアップにしかできないニッチな価値提供が増加し、音楽体験をオルタナティブ化することによって、見えなかった欲求や利用方法が顕在化してくると想います。音楽スタートアップはリスナー、ミュージシャン、事業会社、ブランド、全てにプラスの影響を与えると信じています。だからRed Bull Amplifierの取り組みは積極的に応援したいです。

ファン・エンゲージメント、ソーシャルメディア、音楽発掘、Amplifierは求めるスタートアップの分野や市場には全くこだわりはありません。この機会にご応募してみてはいかがでしょうか?

ソース
Red Bull launches accelerator for music startups(3/8 Wired UK)


Jay Kogami

執筆者:ジェイ・コウガミ(All Digital Music編集長、デジタル音楽ジャーナリスト)

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