Appleは10日に開催されたWWDCで、新しい無料の音楽ストリーミングサービス「iTunes Radio」を発表しました。
iTunes Radioは無料の聴き放題音楽ストリーミングサービスで、ユーザーが選択・入力したアーティストや楽曲を分析し音楽ステーションを構築して、似た音楽スタイルの楽曲を自動再生するパーソナライズド・ネットラジオです。リスナーは好きな音楽には「Play more like this」、嫌いな音楽には「Never play this song again」ボタンで自分の趣味嗜好を示すことでシステムが学習し、よりリスナーが好きそうな音楽を再生してくれます。リスナーは再生中の音楽を「一時停止」「再生」「スキップ」することができます。
iTunes Radioには200以上のジャンルをベースにした音楽ステーションがプリロードされているので、聴きたいスタイルのステーションをタップするだけで音楽を楽しむことが可能です。またTwitterで人気の音楽もフォローすることが可能です。
リスナーは音楽ステーションを構築する際に、選択したアーティストの「Top Hits」か「Discovery」かをスライダーで選択することが可能です。これによって、ヒット曲ばかりを楽しみたい人には有名な曲ばかりが再生され、コアな音楽ファンは知らない曲や隠れた名曲を発見することができます。リスナーの音楽への関心度によって、新しい音楽発見の楽しみ方を提案します。
iTunes RadioはSiriとも連携しているため、リスナーは今再生中の音楽をSiriに尋ねることが可能になります。またリスナーはSiriに再生中の音楽に似た音楽をもっと聴きたいなどを伝えることも可能です。
さらにiTunes Radioには、再生中の楽曲をiTunesからワンクリックで購入できるボタンが搭載されます。
iTunes Radioは今秋に米国でまず開始されることが発表されました。海外での展開は時期が未定です。価格は広告付きで無料。iTunes Matchサブスクライバーは、広告無しで無料になります。アプリはiPhone, iPad, iPod Touch, Mac, PC, Apple TVからアクセスが可能になります。
iTunes Radioにはオーディオ広告およびモバイルバナー広告が挿入されます。
AppleのiTunes Radioは、競争が激しい音楽ストリーミングサービスの市場に一石を投じます。この市場にはPandora RadioやiHeartRadio, SpotifyやRdio, Googleなどが参入しています。特に米国で競合するユーザー規模業界最大のネットラジオ「Pandora Radio」とほとんど同様の機能を提供します。例えば、好きな音楽を分析して似ているスタイルの音楽を自動再生してくれる音楽ステーションや、好きな音楽・もっと聴きたいスタイルに対し「Thumbs Up/down」(いいね!のようなもの)を示せる機能などです。
大きな違いの一つとして、価格があります。iTunes RadioとPandoraが基本的に広告付きで無料であることに対し、広告を外す場合iTunes Radioは年間24.99ドル(iTunes Match利用)、Pandoraは36ドルと、Appleのサービスが低額になります。参考までに音楽ストリーミングサービスの「Spotify」の場合、広告無しのモバイル・ウェブ/デスクトップ利用は月額9.99で年間120ドルとなります(もっともSpotifyはオンデマンドな音楽サービスなので、完全な比較はできない)。他社との差別化はまた別の記事で深堀りしたいと思います。
WWDCでティム・クックCEOが発言したように、現在iTunesは5億7500万以上のユーザーアカウントを抱えています。そのため、iOS 7の正式ロールアウトと期待される次期iPhoneが発売された時には、iTunes Radioを比較的速い時期に大勢のiOSユーザーに届けることが可能になりそうです。