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このサイトとデータは非常に重要!アーティストの方は必見。

音楽ストリーミングサービスの「Spotify」は、アーティストへいくら楽曲使用料が支払われるかなどビジネスモデルを詳細に説明するサイト「Spotify Artists」をオープンしました。

http://www.spotifyartists.com/

Spotify Artistsサイトでは、アーティストやマネージャー、レコード会社など音楽関係者向けに、再生1回に付き支払われる楽曲使用料や、支払いの計算方法、サービスの仕組みやメリットなど、これまで公の場で大きく説明されることのなかったSpotifyのビジネスモデルを細かく解説し、アーティストに対し音楽ストリーミングサービスのメリットや現状を提示します。

このサイトではビジネスモデルや計算方法の他に、以下のように事例や機能説明をまとめて紹介してくれます。

・ビジネスモデル、楽曲使用料の計算方法などを説明する「Spotify Explained」
・アーティストがSpotifyを音楽活動に活かすための事例「Best Practices」
・楽曲のアップロードからボタンの作り方までSpotifyの機能を説明する「Guides」

Spotifyのアーティスト・サービス担当ディレクター、マーク・ウィリアムソン(Mark Williamson)は、

CDやiTunesなど音楽フォーマットが変化する時、異なるモデルがどのように機能するのかについて常に混乱が生じ、そして懐疑的な考えが深刻なほど広がります。私達は、今そのような不安が生まれていることを理解しています。ですので、私達はSpotifyがどのように機能するのかについてできるだけ明確にし、透明性を維持したいのです

と、コメントしています。

アーティストやレーベルには再生1回で$0.006〜$0.0084

Spotify Explainedによれば、ストリーミング再生1回につき支払われる平均ロイヤリティは0.006ドルから0.0084ドルの間であることが、分かりました。この額は、どの国から再生されたか、有料会員か無料会員が再生したのかなどの要素によって変わります。また特定のアーティストによっては、個別のロイヤリティが支払われるケースもあります。

同サイトでは、2013年7月にストリーミング再生されて得た実際の収益の事例を紹介しています。ここでは「ニッチなインディーズ」のアルバムから「グローバル・ヒット」規模のアルバムまで5つの異なる規模感のアルバムが再生されて得た楽曲使用料を比較しています。また同じく今後順調に成長し有料会員数が4000万人(現在好評の数字は600万人)を突破した場合に得られる楽曲使用料も比較されています。

まだまだ先の話ですが、Spotifyがこのまま成長していくなら、インディーズ・ミュージシャンも月に17000ドル(約174万円)が楽曲使用料として得られることになります。あくまで参考値ですので、必ずこうなるというわけではありませんよ。

Spotify Artistsサイト内でSpotifyは今回、以下の機能を新たに発表しました。

・アーティスト向け解析ツールの提供
・グッズ、チケット販売機能の提供

アーティスト向けには無料の解析ツールを提供

Spotifyはまた音楽データ解析サービスのNext Big Soundとパートナーシップを結び、アーティストやマネージャー向けに無料の解析ツールを提供します。この無料ツールでアーティストやマネージャー、レコード会社関係者はどの音楽がストリーミング再生されているかなどの情報がリアルタイムで把握することが可能になります。

解析ツールは今後数週間で提供が開始されます。

グッズ販売機能がまもなく開始

Spotifyは、アーティストがウェブやデスクトップ、モバイルアプリ内でグッズやチケットを販売出来る機能を無償で提供開始することを発表しました。

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グッズ販売機能は、ミュージシャン向けD2Fサービスを展開している「Topspin」、チケット販売機能はオンラインコンサート情報サービスの「Songkick」と連携して提供します。

音楽ストリーミング「 Spotify 」、サイトやアプリ内でグッズやチケット販売を開始へ

2013年に支払った楽曲使用料は5億ドル超

Spotifyはまた、2013年にアーティストやレコード会社、権利者へ支払った楽曲使用料は5億ドル以上に上ることを発表しました。2009年以来、Spotifyが支払った楽曲使用料はこれで10億ドルを超えました。
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Spotifyは、Spotify Explainedを通じて楽曲権利者にいくら楽曲使用料を支払うか、計算式を公開しています。これによれば、Spotifyは収益の約70%を楽曲使用料として、レコード会社や出版者、著作権徴収団体など権利者に支払いました。

またSpotifyが動画サービスなどその他のサービスと比較した場合、2倍以上のロイヤリティ料を権利者に支払ってきたデータや、世界の音楽市場でSpotifyが不正ダウンロードを減らし、音楽売上にどのように貢献しているかの情報も紹介されています。

Spotifyはこれまで音楽ストリーミングサービスに関心を示さなかった大物アーティストの配信を開始するなど、業界で定額制音楽サービスへの理解を高めることに成功してきました。

しかし、一方で収益の最大化を狙い、Spotifyでの配信を新作リリースとのタイミングから遅らせる「ウィンドイング」行為を行うアーティストやレコード会社も現れ始めました。

またトム・ヨークデヴィッド・バーンなどはTwitterやメディアを通じて、クリエイターの収益低下や新人の機会損失、クリエイティビティの低下を招くとして、Spotifyのビジネスモデルを疑問視(攻撃)するアーティストも出現しています。

ロックミュージシャンのベック、音楽ストリーミング「 Spotify 」の問題点を指摘

デヴィッド・バーンが音楽ストリーミングの「 Spotify 」を批判、ネットで話題に

今回の新サイトは、Spotifyがこれらの議論を集約し、より透明性のあるコミュニケーションを実現するための取り組みになります。まだまだ不透明は部分やアーティストの不安が拭えない音楽ストリーミングサービスですが、Spotifyのサイトは(1部にしろ)そのビジネスの中身をオープンにしてくれています。この取組は、アーティストとの関係性を良くするためには非常に重要ですね。

僕ももっと読み込んで他のデータと照らし合わせたりしながら、詳細なデータを今後紹介したいと思います。またこのあたりの事情に詳しい方や、興味のある方がいらしたら、色々話を聞いてみたいです。ですので、FacebookやTwitterでご連絡頂ければ入れしいです。

「英語が苦手で読めない!」という方は、個別にご連絡ください。内容のご説明とかできますので、気軽にどうぞー

ソース
Spotify opens up analytics in effort to prove its worth to doubting musicians(12/3 The Guardian)


Jay Kogami

執筆者:ジェイ・コウガミ(All Digital Music編集長、デジタル音楽ジャーナリスト)

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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