これまで世界で1億2,000万枚以上アルバムセールスを記録し、エルヴィス・プレスリーに次いで最も成功したソロアーティストでもある、カントリーミュージックの大御所ガース・ブルックスは、2001年以来初のスタジオアルバムがリリース第1週目売上がわずか12万枚しか到達しないと予想され、売上的には大失敗となることが分かりました。ガース・ブルックスは最新アルバム「Man Against Machine 」のデジタル版をiTunesで販売することを拒否し、自らが立ち上げたオンライン販売プラットフォームGhostTunesのみで販売しました。
「Man Against Machine」はリリース一週目で25ー30万枚の売上をあげると見込まれていました。しかし業界紙Hitsによると、売上枚数は現実的に見ると12万枚ほどに止まるであろうと予想しています。
ガース・ブルックスは過去にリリースしたスタジオ・アルバム8枚全てでプラチナ・ディスク(米国で売上1千万枚以上)を達成しています。
テイラー・スウィフトが定額制音楽配信Spotifyから全アルバムを削除する販売戦略を実施し、最新アルバム「1989」はリリース一週目売上が120万枚以上を超えたニュースは日本でも話題になりました。
ガース・ブルックスもSpotifyでは依然として楽曲を配信していない大物アーティストの一人です。以前からデジタルでの楽曲販売には否定的だった彼は、今回のアルバムリリースに合わせて初めてデジタル販売を実施しました。しかしそのために自身が制作した販売プラットフォームでは役不足だったようで、結果的にはiTunesやSpotifyで配信していないことが裏目に出た結果とも考えられます。
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この部分から考えると、Spotifyなどでの音楽配信を拒否したからといって、誰もがアルバム売上が伸ばせるわけではないということが言えます。Spotifyで配信を拒否しても、デジタルサーヴィスや配信を組み合わせた総合的な販売戦略が機能しなければ、いかに大物アーティストでも売上を伸ばすことは不可能です。音楽配信がアーティストにとって有利になるか不利になるかは、個々のアーティストによって異なるからです。
テイラー・スウィフトの場合、Spotifyで配信を拒否しても、アメリカ小売店チェーンにおける独占販売や、マスメディアでの露出、さらに膨大な規模のソーシャルメディアでのフォロワーなどが新アルバムのリリースを支えています。
ガース・ブルックスの場合、ソーシャルメディアでもプレゼンスが小さく(Facebookは130万、Twitterはわずか8万8,000強)、また今夏に開催予定だったアイルランドでの5公演をチケット完売したにもかかわらず、住民や裁判所からの反対意見を受けて中止にするなど、ネガティブな報道が起こったこともガース・ブルックスにとってマイナスの要因になっています。
ガース・ブルックスのケースを見てもお分かりのように、テイラー・スウィフトの一件で強調されているようにSpotify配信拒否が成功した結果と結論づけることは、早急すぎると感じます。
アルバム売上が低調な結果の中、ガース・ブルックスはカムバック・ツアーは予想されていた通り驚異的なチケット売上をあげています。地元のオクラホマで開催する7回のコンサートでは、チケット販売枚数がわずか2時間で11万枚に達したのを始め、ミネアポリスでは11公演分で20万枚、アーカンソーでは3公演で4万4,000枚と、どれも彼自身が過去に記録した1都市当たりのチケット販売記録を塗り替えています。
スタジアム規模の会場をソールドアウトしていることからも、アルバムをアーティスト活動の軸とするのか、それともツアーを売るためのツールとして見るのかによって、成功基準が変わってきます。興行面で考えた場合、ガース・ブルックスは成功と言ってもいいのかもしれません。
ソース
How Garth Brooks took on the internet – and lost (11/14 The Guardian)