Apple Musicから重要なリーダーの一人が去って行きました。

Apple Musicの前身となったBeats MusicのCEOとして、アップルに参画した音楽業界のベテラン、イアン・ロジャース(Ian Rogers)が、Apple Musicローンチからわずか2カ月でアップルを退職することを決定しました。フィナンシャル・タイムズが伝えています。

ロジャースはアップルにドクター・ドレーやジミー・アイオヴィンらとともに加わり、Apple Musicのサービス開発においては、24時間ラジオのBeats 1の開発をリードしてきました。イギリスBBCからトップラジオDJのゼイン・ロウ(Zane Lowe)の引き抜きを画策しBeats 1のホスト役を託し、バラエティ豊かな番組編成に貢献してきました。Beats 1は現在英語のみで配信していますが、ジャンルレスな選曲が海外メディアや関係者から高い評価を受けています。

ロジャースがアップルを離れる理由は不明ですが、ヨーロッパで異業種の企業で新たなチャレンジに取り組むと関係筋は伝えています。

Beats 1はApple Musicが他社音楽ストリーミングサービスとの差別化を図る上で、戦略的に最も重要な要素を占めています。その理由はフリーで誰もが聴けるサービスとしてApple Musicの有料会員獲得における入り口となる唯一の導線で、このことから無料トライアルが終了した後には、アップルはさらに多大なマーケティングをBeats 1に注ぐと予想されます。アップルはサービス開始から4週間でApple Musicの無料トライアルに1100万人が登録したと発表し、好調をアピールしてきました。

定額制音楽ストリーミングの最大手Spotifyは、現在アクティブユーザー7500万人、有料会員2000万人以上で、2008年のサービス開始以来、これまで権利関係者に30億ドル以上のロイヤリティ料を分配しています。

イアン・ロジャースの退職はくしくもアップルの新製品発表会が開催されるタイミングと重なります。それはBeats 1の戦略が波に乗った証拠なのでしょうか。9月10日の発表会でApple Musicの動向が発表されることが楽しみです。
ソース
Apple loses key music streaming executive(FT.com)
Apple loses Ian Rogers, the executive responsible for crafting Beats 1 radio(The Verge)


Jay Kogami

執筆者:ジェイ・コウガミ(All Digital Music編集長、デジタル音楽ジャーナリスト)

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