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音楽ストリーミングサービスのプロモーションが面白くなっています。これまで音楽サービスが行ってきた、新作コンテンツのPRなど音楽コンテンツ重視の戦略から、音楽とは違う業界、とくにライフスタイル系の製品やサービス、ブランドと連携するやり方がここ数年で増えています。特に定額制音楽配信や広告モデルの無料音楽配信などデジタル音楽サービスが普及し認知されている海外では、「音楽のサービスだからアルバムやアーティストをプッシュしておけば…」という考え方は終わり、音楽好きな一般消費者へどうリーチするかへ変わりつつあります。グーグルがアメリカで今夏に始めた音楽マーケティングでもその考えに沿って同社のテクノロジーとの相乗効果でターゲットへのリーチを深める取り組みが実践されています。

今年6月にグーグルは広告モデルで無料版の音楽サービス「Google Play Music」を開始、Spotifyやアップル、Tidalなどの定額制音楽配信サービスにフリーサービスで挑戦をしています(日本ではまだ利用は不可)。Google Play Musicは2014年にグーグルが3900万ドルで買収した、アクティビティやムードに合わせて多数のプレイリストをレコメンドする音楽アプリSongzaが組み込まれています。

グーグルは無料サービスを訴求するため、ファッションストアのASOSや、フードデリバリーサービスのMuncheryなどライフスタイル系サービスと提携して、特別な音楽ステーションをそれぞれのブランドやサービスの利用者に合わせて提供する音楽マーケティングを実施しています。

ASOSとは、夏フェスやイベント、祝日のファッションを紹介する特設サイト内に、夏向けのトラックがキュレーションされたGoogle Play Musicをシチュエーション別に用意。さらにはニューヨークのアーティストMS MRや、DJたちが選曲したプレイリストも用意し、ファッションのコンテクストから夏のイベントを楽しみたい人を音楽でつないでいます。

GooglePlayMusicASOS

http://www.asos.com/discover/microsite/googleplaymusic/

Muncheryではメニューと連動するプレイリストをMuncheryのシェフと共同で制作し、食事のシチュエーションやムードに合わせたメニューと音楽を組み合わせる取り組みを始めました。

munchery_googlemusic

Google Playのメディア&コンテンツ・パートナーシップ担当トップのジェシカ・アイゴー(Jessica Igoe)はAdweekに対して、「Google Play Musicの主要な機能の一つに、『IRL』(In your real life、日常生活)で行っているどんなことでもより良くできる音楽ステーションがあります。ASOAやMuncheryなどデジタルパートナーシップは、音楽ファンにリーチし普段の生活にほんのわずかな変化を与えるためには必要不可欠です。Google Playにとって音楽はプライオリティです。今年後半における私達が最も注力する領域となります」と答えています。

グーグルの音楽サービスGoogle Play MusicはSpotifyやApple Music、Tidalと比べて、一般的な認知がまだまだ低い印象は拭えません(他社が大規模なマーケティングを実施していることも理由の一つですが)。そして買収したSongzaのキュレーション型プレイリストというユニークな特徴も、元は音楽好きだけでなく、ごく一般的な音楽好きに向けて日常的に楽しむことを根底に持つサービスでした。したがってアーティストやアルバムを訴求するよりも、ファッションやショッピング、イベント、食事といったライフスタイルに関心のある人をターゲットにしたマーケティングであれば、サービスのユニークさと本質を実感してもらう可能性が広がり、音楽サービスへの関心も高まる戦略と言えます。今日本の定額制音楽サービスは音楽好きへの訴求でユーザー獲得を目指しています。その戦略が落ち着いた時には海外で起きているように「IRL」をより良くするための音楽マーケティングが日本でも始まるのではと思うとどんな施策が生まれるのか楽しみになってきました。

ソース
Google’s Plan for Winning the Music-Streaming Marketing War: Partner With Cool Brands(Adweek)


Jay Kogami

執筆者:ジェイ・コウガミ(All Digital Music編集長、デジタル音楽ジャーナリスト)

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