ヒップホップ・アーティストで起業家のジェイ・Zが今年から運営している、高音質のサブスク型音楽配信「Tidal」が、有料会員数100万人を突破したことを、ジェイ・ZがTwitterで明らかにしました。
"Nothing real can be threatened, nothing unreal exists" Tidal is platinum. 1,000,000 people and counting. Let's celebrate 10/20 Brooklyn.
— Mr. Carter (@sc) September 29, 2015
Tidalとジェイ・Zは、100万人の会員獲得を記念したチャリテイコンサート「TIDAL X: 1020」を、ジェイ・Zがかつてオーナーを務めていたNBAプロバスケットボール・チーム、ブルックリン・ネッツの本拠地、Barclays Centerで10月20日に開催することも発表されました。コンサートには、ビヨンセ、プリンス、ニッキー・ミナージュ、アッシャーらトップアーティストが参加予定。チケットはTidalの有料会員には先行販売が行われます。チケットの価格帯は74ドルから244ドル。全売上は非営利団体New World Foundationに寄付されます。
さらにコンサートの模様はTidal.comでストリーミング配信を予定。こちらは有料会員だけでなく全ての人に公開となります。
Tidalは、元はスウェーデンのAspiroが2014年に立ち上げた高音質なサブスク型音楽ストリーミングサービス。今年初めにジェイ・ZがAspiroからTidalの運営権を5400万ドルで買収、3月にビヨンセ、リアーナ、カニエ・ウェスト、アリシア・キーズ、カルヴィン・ハリス、ダフト・パンク、J.Cole、マドンナと錚々たるメンツを揃えて、彼らを共同出資者とするローンチイベントを実施し、競争の激しい音楽ストリーミングの分野に参戦しました。
アーティストの影響力を軸にサービス拡大を狙った派手なプロモーションでは多くのユーザー獲得は難しいと言われていますが、これまでもビヨンセやプリンスなどの新作を独占配信したり、ライブイベントの映像をストリーミング配信するなど、少しづつ他社との差別化にも力を入れている施策が功を奏しているようです。
Tidalのサービスでは、最大320kbpsの音質で配信される月額9.99ドルの「Tidal Premium」と、ロスレス音質(CD音質)で配信される月額19.99ドルの「Tidal HiFi」の2種類が優良で提供されています。
Tidalが競争するSpotifyは、サブスク型音楽ストリーミングサービスでは、有料会員2000万人以上を獲得している、業界トップの音楽サービスで、ユーザー獲得やロイヤリティの総分配では他社を大きく引き離しています。
音楽コンテンツでも特にファンが関心を持つ「ライブイベント」をカバーし、他社と違う独占コンテンツを提供するTidalは、アップルが「Apple Music Festival」と名を変えてテストした動画コンテンツと音楽ストリーミングのバランスをわずか数カ月で実現してしまったことが、Tidalユーザーの獲得に大きく貢献していると感じます。
アーティストとの関係を作り成熟させる方法として、ライブ動画とストリーミングの配信プラットフォームとしてサービスがイベント単位ではなく、アーティスト単位で連携するアプローチは、ビジネスの可能性があるように思えます。
これも音楽コンテンツに対する考え方をどう消費者目線で作っていくかの表れで、サービス自体がどんなコンテンツを提案できるのかのヒントになっている気がします。
ソース
Jay Z Bringing Beyoncé and Prince to Barclays Center for Charity Concert(The New York Times)
image by Penn State via Flickr