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インディーズレーベルがファンに楽曲を定額制で販売できる音楽サービス「Drip」が、3月18日に閉鎖することを発表しました。

5年前に「Drip.fm」として開始したDripはレーベルとファンをつなぐ音楽プラットフォームとして注目を集めてきました。ファンは聴き放題の定額制と違って、レーベル個別の定額制プランの有料会員となることができ、レーベルは毎月エクスクルーシブな楽曲やアルバムの先行配信、限定リリースを提供し、有料会員から収益を挙げるという画期的なビジネスモデルを実践してきました。

参加レーベルには、「Sub Pop」や「Domino Records」、「Stones Throw」、「Mad Decent」、「OWSLA」と人気もありマーケティングでも成功しているトップレーベルたちが集まっていました。

Drip.fmは、デトロイトに拠点を置くテクノ・レーベル「Ghostly International」が立ち上げたプラットフォームで創業者Sam CalentiとMiguel Senquizの2人がDrip.fm立ち上げに関わっています。2人はレーベルに集まるコアな音楽好きをクリエイターとその作品を結びつけビジネスを行う新しい手法を目指すという壮大な計画の元に始まりました。言ってみれば、デジタル音楽で薄れかけ始めたレーベルとファンのつながりを復活させて拡張させようとするのが狙いでした。

ファンは月額10ドルをレーベルの有料プランに支払えば、レーベルからは新作や過去のカタログが定期的に届き、DRMフリーの音源をWAVまたは320k MP3で楽しむことができます。レーベルはユーザーのデータそして課金売上が直接受け取れる仕組みで運営されてきました。ビジネスモデルの特性上、SpotifyやApple Musicのような有料会員数の獲得は無理ですが、コアなファンにとっては好きなアーティストと直接繋がる共有感や安心感が生まれる体験が魅力でした。

Dripのようにレーベルまたはアーティストが独自の定額制配信プラットフォームを持ち、直接ファンから課金するアプローチはこれまで存在していませんでした。特に資金の少ないインディーズレーベルにとって、デジタル課金サービスを始めるためのプラットフォームという意味では画期的です。彼らのアプローチは、Nicolas Jaarの「Other People」やRyan Hemsworthの「Secret Songs」といった、デジタル音楽ツールに慣れ親しんだアーティストやレーベルで徐々に広がりを見せています。

Dripチームはサービス停止の理由は、タイミングや資金その他全ての要素から将来性を考えた結果の決断だと説明します。Dripは3月18日まで全メンバーに楽曲やデータをエクスポートする権限を付与します。

ソース
A Letter from the Founders of Drip(Medium)


Jay Kogami

執筆者:ジェイ・コウガミ(All Digital Music編集長、デジタル音楽ジャーナリスト)

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