定額制音楽配信サービス「Spotify」が、アーティストの活動を支援する領域を拡げるため更なる投資を行っています。SpotifyはSNSで投稿される音楽イベントの写真や動画を集め”ビジュアル・アヒストリー”を作るスタートアップ「CrowdAlbum」の買収を発表しました。買収金額は未発表。
2013年創業のCrowdAlbumは、1000以上のアーティストやライブ会場によって活用され、過去にはDiploy、リル・ウェイン、Fallout Boyなどが利用してきたサービスです。
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— Billye Sands (@bill_YAY) April 27, 2016
CrowdAlbumはSpotifyに合流後、アーティスト向けの音楽マーケティングを専門にするチームに加わります。このチームはアーティストやマネージャーがSpotifyリスナーのデータを可視化してプロモーションに活用するツール「Spotify Fan Insights」や、パーソナライズされたライブ情報レコメンデーション機能「Concerts」を開発してきました。
現代のアーティストやマネジメント会社にとっては、「音楽配信サービスを使った音楽マーケティング」という手法は、もはや無視できない存在です。特に音楽配信が抱える膨大なリスナーのビッグデータと、属性や行動の分析から導き出されるインサイトを有効活用するモデルは、ファンとのエンゲージメントや流通、コンテンツ戦略を作る上で必要不可欠となりつつあります。
その中でも、Spotifyは音楽マーケティングで成功したいアーティストやマネジメント会社に対して、Spotifyのデータとリスナーを活用する仕組みを提供していくことが、Apple MusicやTIDAL、Deezer、Pandora、YouTubeなどの競合との差別化につながるとして、自社が開発したマーケティング・ツールを積極的に提供し始めています。
しかし競合も音楽マーケティングの領域を強化して、よりアーティストに魅力的なプラットフォームを目指して動いています。アップルは2015年に音楽分析ツール「Musicmetric」を運営するイギリスの音楽スタートアップSemetricを買収。
Pandoraもまたソーシャルメディアの音楽データ分析を専門にする「Next Big Sound」を買収し、同社がアーティスト向けに提供するデータ型マーケティングツールArtist Marketing Platformを強化しています。
YouTubeも2015年6月にアーティストを支援する目的で立ち上げたサイト「YouTube For Artists」に新たな解析ツールMusic Insightを加えています。
先日、有料会員数が3000万人を超えたと発表したSpotifyは、今後もユーザー数を拡大するために世界展開に取り組んでいきます。同時に、Spotifyは巨大な音楽マーケティング・プラットフォームという地位も確率しつつあります。アーティスト活動を支援し、世界中のリスナーに音楽を届けるというゴールに対して、CrowdAlbumはじめ今年初めに買収したCord ProjectやSoundwaveをサービスに加えていくことは、SpotifyがB2Cのプラットフォームとして機能しているだけでなく、音楽B2Bプラットフォームの領域も拡大していることは興味深いです。また、将来的にSpotifyがこのアーティスト向け音楽マーケティング・ツールで収益をあげるのかどうかも気になります。
ソース
Spotify buys photo aggregator CrowdAlbum to build more marketing tools for artists(TechCrunch)