今年に入り財政難が浮上し、サービス停止の直前まで行き着いた音楽サービス「SoundCloud」から、最高財政責任者(CFO)のホリー・リム(Holly Lim)が退職し、サンフランシスコに拠点を置く音楽ストリーミングサービスの「TuneIn」のCFOに就任しました。

リムは、2016年9月にグーグルからSoundCloud初となるCFOとして期待と共に迎えられましたが、1年強で袂を分かつこととなりました。

SoundCloudの混乱は、経営チームの要職が次々と変わっていく様からすでに前途多難な様子を示しています。

共同創業者でCEOだったアレクサンダー・ユング (Alexander Ljung)は今年7月にSoundCloudが今後もサービスを継続すると事業継続の表明後、CEOからの退任を発表。現在CEOには、映像サービス「Vimeo」の元CEOケリー・トレイノー (Kerry Trainor) が後任に就いていますが、今後の軌道修正戦略、さらにユングが経営にどう携わるかは、全く分かっていません。

また新しい最高執行責任者(COO)には元VimeoのCOOマイク・ワイスマン(Mike Weissman)が新たに就任。また最高技術責任者で共同創業者のエリック・ウァーフォース(Wahforss)もチーフ・プロダクト・オフィサーへ配置換えとなっています。

SoundCloudから、去っていく経営陣は後を絶ちません。今年には、チーフ・コンテンツ・オフィサーのスティーブン・ブライアン(Stephen Bryan)が6月に同職を辞任、YouTubeに転職しレーベルリレーション責任者に就任。チーフ・レベニュー・オフィサーのアリソン・ムーア(Alison Moore)は10月に辞任し、メディア大手コンデナストのチーフ・ビジネス・オフィサー職へ去っていきました。

さかのぼって2月にはCOOだったマイク・ストリーゲル(Marc Strigel)と財務ディレクターだったマーカス・ハーダー(Markus Harder)、法務顧問のニール・ミラー(Niel Miller)など、重要職の退任が後を絶ちません。

SoundCloudはまたトップ経営陣の入れ替えを前に、7月に約170人の従業員(全従業員の約40%)を突然リストラしています。リストラの発表を受けて「社内のやる気はどん底」「従業員を『家族』と呼ぶなんてお笑いだ」など、経営陣の姿勢に疑問を示すSoundCloud社員も現れています。

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TuneInのCEOジョン・ドーハム(John Donham)はリムの就任について「ホリーが経営陣に参画することを私たちは喜んでいる。彼女が持つコンシューマー向けサブスクリプションサービスや、エンターテインメント、オリジナルコンテンツにおける経験は私たちのチームに適任であり、事業の成長に寄与するでしょう」とコメントしています。

SoundCloudが低迷した背景には、サブスクリプションサービス「SoundCloud Go」戦略の失敗が大きく響いているのだが、何をもって適任としているのか、TuneInの選択にも疑問が残ります。

 

ソース
TuneIn Appoints Holly Lim As Chief Financial Officer
SoundCloud sinks as leaks say layoffs buy little time (TechCrunch)
image: portal gda via Flickr


Jay Kogami

執筆者:ジェイ・コウガミ(All Digital Music編集長、デジタル音楽ジャーナリスト)

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