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定額制音楽サービスSpotifyが、プラットフォーム上でのストリーミング再生やリスナーのシェア数を分析してランク付けした、新しい「Viral 50チャート」を発表しました。

http://charts.spotify.com

Spotiyのバイラルチャートは、最もストリーミング再生された曲をランク付けした「Spotify Top 50チャート」とは異なり、純粋にファンが聴いて共感共有した音楽のデータを示す指標です。

Spotifyは、アーティストやレーベルに同社のビジネスモデルやロイヤリティ料分配を説明する特設サイト「Spotify for Artists」の中で

トラックの”販売枚数“のみを反映したチャート指標は、急激に変化する現代の音楽業界において、どのように音楽が聴かれたかを反映していない時代遅れなものになりつつある

と述べています。

バイラルチャートから始まるヒット曲のケース

Spotifyによれば、バイラルチャートで成功する楽曲の多くは、映画やテレビ、CMまたは大規模なイベントでフィーチャーされていると云います。また、その他で成功する曲は、人気アーティストによる期待値の高いリリースです。

例えば、エド・シーランの最新アルバム「X」(マルティプライ、6月25日リリース)からは、7曲がSpotifyでリリース前に配信開始され、その中の5曲がUKのViral 50チャートに入りました。

このSpotifyでのリリース戦略によって、「X」はリリース初週に世界で2370万回ストリーミング再生され、Spotifyで最も再生されたアルバムの新記録を更新しました。

またバイラルチャートを使ったバズの作り方は有名なアーティストに限ったアプローチではありません。インディーズバンドのYoung the Giantは今年1月に2ndアルバム「Mind over Matter」のリリースにあたり、新作への期待を徐々に高めるために、アルバムリリース前にシングルを数曲リリースします。

その中の2曲はViral 50チャートで1位を獲得、先行リリースしたシングルは全てトップ5入りし、アルバムへのアテンションを高めることに成功しました。その結果、Young the GiantはSpotifyで最もプレイリストに追加されたアーティスト100組に入り、「Mind Over Matter」はビルボード・アルバム・チャートでトップ10入りすることに成功しました(前アルバムのピークは42位)。

またインディーズアーティストがSpotifyから注目を集め、世界的な成功をつかんだベストケースは、ロードの「Royals」です。

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・ショーン・パーカーのSpotifyプレイリストが世界的なヒット曲「Royals」ブレイクのキッカケだった! Spotifyから音楽が拡がる新しいカタチ | All Digital Music

グラミー賞を受賞することとなる大ヒット曲「Royals」がブレイクするきっかけは、Spotifyの中でプレイリストで共有され、リスナーがオンライン上でシェアしたくなるほど楽曲に共感したことから、Spotifyでバイラルチャート入りする結果につながりました。

2013年3月にリリースされた「Royals」は、4月にバイラルチャート入りしじわじわとSpotify内で人気を集め、5月終盤にはバイラルチャートで1位を獲得しました。その間、アメリカのラジオ局での「Royals」のオンエア回数は、3月が7回、4月がゼロ、5月になりようやく複数のラジオ局にピックアップされます。一方Spotifyでは5月の段階で、「Royals」はアメリカだけで453,000回再生、世界では110万回ストリーミング再生されていました。

その後7月にビルボードのシングルチャート入りし3ヶ月に渡り1位を独占するまでに至ります。2013年最大のヒット曲も始まりはSpotifyであり、ごく一般的なインディーズリリースでした。

アメリカやイギリスでは音楽チャートに売上枚数だけでなく、Spotifyなど音楽ストリーミングサービスの再生回数を融合したトラックチャートをスタンダードとして利用しています。音楽の聴き方はCDやダウンロード購入だけでは測りきれない部分が大きくなりました。アルバムを購入したからといって、一度しか聴かれないかもしれませんし、もしかしたら一度も聴かれないかもしれません。そんな時はSpotifyやYouTubeで何度も聴いた回数をチャートに反映する方が、音楽消費者の行動をデータ化した現代的なチャートの形ではないでしょうか?

ソース
Spotify reveals new Viral 50 Chart (Music Week)
The Spotify Viral Chart: A New Metric for a New Age(Spotify for Artists)


Jay Kogami

執筆者:ジェイ・コウガミ(All Digital Music編集長、デジタル音楽ジャーナリスト)

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