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欧米で人気の定額制オンデマンド聴き放題の音楽ストリーミングサービス「Spotify」(スポティファイ)がウェブラジオサービスを開始しました。これはiOSソフトウェアの最新アップデートにおいて、米国ユーザーのみに提供される新機能。これにより米国で最も多くのユーザー数を誇るオンラインラジオ『Pandora』と競合していくこととなりました。

米メディアAllThingsDのPeter Kafka氏(@pkafka)はデモを見た上で、「Pandoraファンのユーザーでも納得するほどの出来映え。iPadとiPhoneユーザーなら、まずは自分の目で見ることをおススメする。Android向けは今開発中だ」と感想を述べています。

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Spotify Radioユーザーは無制限で好みの曲をレコメンドしてくれるパーソナライズドラジオが作成でき、曲をお気に入りにセーブしプレイリストを作成することができる。

驚いたことにSpotifyのラジオ機能は、米国ではフリーでモバイル端末からアクセスができる。これまでSpotifyをモバイルで利用するには月額10ドルの「プレミアムプラン」を購入する必要があるにもかかわらずだ。

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反対に、Pandoraの競争上の強みは、フリーでのモバイル端末からのアクセスだった。USのみながら5200万人程のアクティブユーザーを抱える。もちろん米国のネットラジオとしては最大規模を誇る。

Pandora海外からアクセス出来ない事情はこちらHeatwave_p2pさんのブログで詳しく紹介されている。

Spotifyの狙いは、より多くのユーザーにオンラインラジオを利用してもらい、気に入ってくれたユーザーを有料会員サービスに誘導する接点を増やすことのようだ。

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Kafka氏は幾つか気になるポイントを挙げている。

1) Spotify Radioは、DMCA(Digital Millenium Copyright Act、デジタルミレニアム著作権法)に基づいたサービスである。これにより「Statutory License(強制ライセンス)」の仕組みを利用することでレコードレーベルとライセンス料の交渉をする必要がなくなるため、他社ストリーミングサービスでは配信されない楽曲(ビートルズ等)も再生される。

2) 再生に制限がかかります(曲のスキップ等)。またDMCAに準拠するため、ライセンス管理の問題が発生する。従って米国外ではフリーで利用ができない。

3)Spotifyは有料会員サービスを提供するため、オンデマンドのストリーミング配信機能と連携することが可能になる。例えば、有料会員はラジオの曲をスキップできたり、プレイリストを作成することができる。

4)PandoraとSpotifyのラジオ機能の決定的な違い。Pandoraは『Music Genome Project』(ミュージック・ゲノム・プロジェクト)という人力の解析によるコンテンツレコメンデーションが、歌のハーモニーや伴奏を分析し気に入った曲に近い曲を流してくれる。Spotifyは選曲にソーシャルグラフを使う。気に入った曲が好きな友人や知人が聴いている音楽を流す。

5)Spotifyにとってオンラインラジオはフリーではなく、流れた曲に付きライセンス料が著作権者に支払われ、その金額は利用者が増えるだけ増え続ける。その理由から、Pandoraは未だに利益を挙げていない。

Spotifyは、強力なソーシャル機能を搭載したオンデマンド定額制のクラウド型音楽サービス。フリーミアムのビジネスモデルを採用し、ユーザーは無料プラン(広告、再生時間制限付き)と2種類の有料プラン「アンリミテッド」(月額5ドル、PCアクセス)と「プレミアム」(月額10ドル、PC・モバイルアクセス)を選択し、PCやモバイル、アプリ経由で1800万曲を聴き放題で楽しむことができる。

現在世界15カ国で展開しており、2011年にはアクティブユーザー数1000万人、有料会員数が300万人に到達するほど急速に人気を集めています。

Spotifyが、今回のネットラジオ機能で、これまで目指してきたグローバル規模で統一したサービス展開とは異なる戦略を開始したことは気になります。サービス内容と製品デザインを変えてまでも規模拡大を狙いたい世界マーケットで勝負するためには、ユーザーにとって利用しやすい環境を整備して(この場合はラジオ)より身近な存在になることが、次世代のビジネスモデルなのではないかと思いました。

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ソース

Jay Kogami

執筆者:ジェイ・コウガミ(All Digital Music編集長、デジタル音楽ジャーナリスト)

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