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全米で1億5000万人以上のユーザーを有する、業界トップのインターネットラジオサービス『Pandora Radio』の創業者でCEOを務めるティム・ウェスターグレン (Tim Westergren)が、Pandora Radioとアーティストのロイヤリティについて自社のブログで発言しました。

ユーザー数や再生時間などはこれまで発表してきたPandora Radioですが、アーティストへの楽曲使用料について発言することは、ありませんでした。無料の音楽サービスがアーティストにどのような効果を与えているのか、今後アーティストの生活はデジタル音楽でどう変化していくのか、音楽で生計を立てていくアーティストの今後を占いフリーの音楽サービスとの利害関係を明らかにする意味で、米最大規模の音楽サービスの現状をご紹介します。

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Pandora Radioのアーティストへの楽曲使用料支払い例:
ドレイク、リル・ウェイン: 年間300万ドル近く
コールドプレイ、アデル、ウィズ・カリファ、ジェイソン・アルディーン: 年間100万ドル以上
French Montana: $138,567
Grupo Bryndis: $114,192
Donnie McClurkin: $100,228
アーティスト800組以上: 50,000ドル以上
アーティスト2,000組以上:10,000ドル以上

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(*長文で大変恐縮です)
 
皆さんはDonnie McClurkin, French Montana, Grupo Bryndisというミュージシャン達を知っていますか?彼らはAmazonのランキングでは4000位以下 (4,725、17,000、183,187位)、大物アーティストとツアーに出ることも、ラジオでオンエアされることも、レコードが店頭に置かれることもありません。彼らに共通すること、それはPandoraから安定した収益を得ているということです。今後12ヶ月で彼らは、100,228ドル、138,567ドル、114,192ドルをPandoraから支払われれます。

彼ら氷山の一角でしかありません。Pandoraでは2000組以上のアーティストが今後12ヶ月でそれぞれ10,000ドル以上(ジャズピアニストの故オスカー・ピーターソンも含む)の利益が支払われ、800組以上は50,000ドル以上を得る予定です(米国の家庭の平均収入以上)。

Pandoraは、コールドプレイ(Coldplay)、アデル(Adele)、ウィズ・カリファ(Wiz Khalifa)、ジェイソン・アルディーン(Jason Aldean)など有名アーティストに100万ドル以上を支払っています。

ドレイク (Drake)、リル・ウェイン(Lil Wayne)はそれぞれ約300万ドルの収益を得ています。

この収益源は重要なものであり、この流れによって、私達は歴史上初めて、アーティストの中流階級を作り出す本格的な可能性を見出しました。

これらの数字が示す通り、インターネットラジオはアーティストがより良い未来を設計する上での非常に大きな機会を提供できます。インターネットラジオは、何百万人のリスナーを数百のジャンルが楽しめる音楽リスニング体験へと引き戻しただけでなく、ミュージシャンが収入を得る方法を可能にします。

Pandora Radioはアーティストを支援するために設立され、楽曲使用料を支払えることを誇りに思います。私達はアーティストは今以上に収益を得ることが可能だと思います。しかし、RIAAとワシントンDCのロビイストが10年以上前に制定し、大手放送局を含む少数派のみが価値ある投資だと認識している、ライセンス料がインターネットラジオ産業に打撃を与えてきました。3大ウェブキャストサービス(AOL, Yahoo!! LaunchCast, MSN)はオーディエンスを獲得してきたにも関わらず、ライセンス料値上げにより、事業撤退を決定しました。これでは持続性ある産業を作ることは不可能です。

私達はアーティストと音楽ファンの双方にとってもっと良い方法があると信じています。インターネットラジオは現在米国で最も成長率の高い音楽視聴形態です。音楽の売上の削減においてポジティブな影響があるということが証明されています。調査会社NPD Groupのロス・クルプニック上級副社長は、「昨年、音楽購入は減少したが、Pandoraリスナーは2012年第2四半期において昨年同期比より29%多く音楽を購入しているという調査結果も出ています」と最新のレポートで述べています。

*上記の詳細は過去にブログでまとめたので、御参考までにどうぞ。

消費者はパーソナライズド・ラジオを喜んで使います。パーソナライズド・ラジオは音楽エコシステムにおいて、地位を確立しました。今こそこの進歩を受け入れ、革新をアーティストのために利用する時です。議会は、インターネットラジオを冷遇するのをやめ、その他の形式のデジタルラジオと均等な環境で運営できるようにするべきです。

インターネットラジオ向けの楽曲利用料を公平化することで、この分野での投資が増え、業界全体の成長へとつながり、新しいユーザーを獲得するための新しいテクノロジーの開発へとつながるでしょう。ここに長期的な機会が存在します。短期的な利益の縮小は、業界全体の成長によって無効化されるでしょう。ラジオ視聴が25%や50%増加した時のアーティストへの影響を想像してみてください。

ラスカル・フラッツ:670,351ドル
Iron & Wine:173,152ドル
ボン・イヴェール:135,223ドル
ジョージ・ウィンストン:85,239ドル
ザック・ブラウン・バンド:547,064ドル
フォー・トップス:65,173ドル
エリー・ゴールディング:609,046ドル
マムフォード・アンド・サンズ:523,902ドル

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(*長文で大変恐縮です)

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フリーの音楽サービスも、アーティストの十分な収益源になることが可能だということが、ウェスターグレンの狙いでしょう。この発言は色々な意味で非常に心強い。このブログに書かれている数字のように、大物だけでなく無名のアーティストも収入が得られるという実例が挙げられれば、Pandora Radioのような無料の音楽サービスは、アーティストとより近い関係が構築でき、賛同する人も増えるでしょう。

また今回の発言はアーティストだけでなく、ビジネス価値の最大化そして市場の活性化にもつながる発言だと思います。

今回の発言での懸念は、ウェスターグレンが掲げPandora Radioが求めるロイヤリティ料の低減が議会で承認されれば、アーティストへの楽曲使用料の低減にもつながってしまうということが予想されます。事業の健全化を目指しながら、アーティストへの還元を実現できるのか、いずれにせよアーティストにとっての収益源でありプロモーションの場であるPandora Radioの今後には明るい未来が待ち受けていることを期待します。

Pandora Radioの売上は毎年上昇していますが、(売上全体の半分)を巨額のライセンス料に支払わなければならないため、赤字経営が続いています。

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ソース

Jay Kogami

執筆者:ジェイ・コウガミ(All Digital Music編集長、デジタル音楽ジャーナリスト)

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