音楽業界誌のBillboard (ビルボード)は初めて独自に選出した、音楽業界の影響力ある40歳以下の若きビジネスパーソン40人を発表しています。
海外の雑誌は編集部が選定する業界の実力者を頻繁にリスト化して発表しています。代表的なリストには、タイムの「世界で最も影響力のある100人」やフォーブスの「長者番付」、フォーチュンの「Fortune 500」などがあります。
アメリカの音楽チャートを手掛ける音楽雑誌ビルボードもまた、音楽業界での影響力ある人物をまとめた「Power 100 Index」リストを例年公開しています。今回同誌は、初の試みとなる40歳以下で影響力のあるビジネスパーソン40人をまとめたリストを公開していますので、以下にまとめてみました。
個人的に興味深いのは、このリストにデジタル音楽で市場をリードするAppleやAmazonから誰も選ばれていなかったこと。このリストは、同誌の読者によってノミネートされた400人から、Billboard.bizが選定し選出された40人です。最終選考は売上高や企業規模などの基準が無いため、編集部の偏見が含まれる可能性もないとはいいきれません。例えば米国人が中心だということ、女性が少ないこと、音楽サービスからの選出が少ないこと、などなど。
ただここで言えることは、リストの人物たちは若い実力者揃いで、音楽ビジネスを信じて先輩たちが作り上げたモデルに疑問を投げかけ、時には破壊して、ネットやiTunes, SNSの領域で新しい価値を生み出している人たちの集まりだと思います。様々な分野で活躍するだけに、今後のビジネスの行方を予想する意味でも、彼らの活動に注目してみてはいかがでしょうか。
ここでは略歴を簡単にまとめてみました。詳細はリンク先をご覧ください。
リー・アンダーソン (Lee Anderson) :AM Only
– ダブステップの人気者、Skrillexを発掘したエージェント、エレクトロニック音楽アーティストやDJを数多く抱えるAM Onlyに所属
– カナダの都市をエレクトロニックDJが列車で廻る音楽ツアー「Full Flex Express」の考案者
ジョー・ベリオッティ、エマニュエル・セルジェ (Joe Belliotti, Emmanuel Seuge) :コカコーラ
– Director of Entertainment Marketingのベリオッティ (39歳)とHead of Worldwide Sports and Entertainment Marketingのセルジェ (37歳)はコカコーラでK’Naan、マルーン5、マーク・ロンソン等アーティストと同社の音楽パートナーシップを統括する
– セルジュはロンドン五輪の音楽プロジェクト「Anywhere in the World」でスポーツと音楽とブランドのコラボレーションを実現、ロンソンとケイティ・Bをフィーチャーするキャンペーンを成功させる
– コカコーラとSpotifyのグローバル・パートナーシップを統括する
エヴァン・ボガート (Evan Bogart) :Boardwalk Entertainment Group; The Writing Camp
– ボガード (34歳)は、エミネムを発掘しデモテープをInterscope Geffen A&Mのトップ、ジミー・アイオヴィンに渡した張本人
– マルーン5が前身のKara’s Flowers時代にOctone Recordsのプロデューサーに紹介した人物
– 現在はビヨンセ、リアーナなどに楽曲を提供するレーベルオーナー
– 新人を発掘するリアリティ音楽TV番組をプロデュース中
スクーター・ブラウン (Scooter Braun) :SB Projects CEO
– ジャスティン・ビーバーの発掘者でマネージャーを務める31歳
– カーリー・レイ・ジェプセン、Wantedのマネージャー
– SchoolBoy Recordsなどを統括するSchoolboy Entertainmentの創業者兼経営者
– ユニバーサルミュージック初の音楽テック投資プログラム「Global Creative Investment Program」に在籍
ジェイ・ブラウン (Jay Brown) :Roc Nation 社長
– ジェイZのレーベル・音楽マーケティング会社「Roc Nation」の創業に携わる
– ジェイZ、 J・コール、リタ・オラ、M.I.A.、Stargateなどのアーティストマネジメントを統括
コルテス・ブライアント (Cortez Bryant) 、ジー・ロビンソン (Gee Roberson) :The Blueprint Group 共同CEO
– ロビンソン (38歳)とブライアント (33歳)がお互いのマネジメント会社を合併、リル・ウェイン、T.I. ニッキー・ミナージュ、ドレイクなどのマネジメントを担当する
– 2011年、ロビンソンはGeffen Recordsの会長に就任
– ブライアントは、ニッキー・ミナージュとペプシの数百万ドル規模におよぶパートナー契約、リル・ウェインとマウンテン・デューのパートナー契約を、またウェインとヘッドフォンメーカー「Beats by Dr. Dre」やミナージュと香水ブランドのコラボを実現
アルトゥーロ・ブエナオラ Jr. (Arturo Buenahora Jr.):olé publishing GM, Creative
– テイラー・スウィフトと契約したナッシュビル
– ダークス・ベントリー、エリック・チャーチ、ミランダ・ランバートなどカントリー音楽界のスターを発掘しプロデュース
リオ・カラエフ (Rio Caraeff) :Vevo 社長兼最高経営責任者 (CEO)
– 最大のオンライン音楽動画サイトVevoのトップを務める37歳
– 2011年462億ユニークビューに成長
– オーストラリア、ニュージーランド、ブラジルに市場を拡大
マイク・キャレン (Mike Caren):ワーナーミュージック、ワールドワイドA&R担当社長
– Big Beats Recordsのマーケティングでキャリアを開始、T.I.、フロー・ライダー (Flo Rida)などヒップホップアーティストと契約、カニエ・ウェスト、ブルーノ・マーズなどをプロデュース
– エレクトラ・レコードを2009年に再生させ活動再開、シーロー・グリーンらと契約し、過去3年で20以上のグラミー賞を獲得、商業的成功へと導く
– 2012年7月に社長へ昇格した35歳
トロイ・カーター (Troy Carter) :Atom Factory 創業者兼CEO
– レディーガガのマネージャー兼ビジネスパートナーを務める39歳
– ソーシャルゲームのZyngaとのパートナーシップ、ソーシャル音楽サービスTurntable.fmなどへの投資、次世代型アーティストコミュニティサイトLittle Monsters.comの開発などで、デジタル音楽をリードする
ジョナサン・コーエン (Jonathan Cohen) :Late Night With Jimmy Fallon、ゲストミュージシャンブッキング担当
– 全米で大きな人気を有するトーク番組、「 Late Night With Jimmy Fallon」でミュージシャンのブッキングを担当、多彩なゲストとアクトで音楽ファンが見逃さないTV番組へと変える
– 新人だったフランク・オーシャンやカーリー・レイ・ジェプセンなどのTV初出演から、滅多にTV出演をしないレディオヘッドやトム・ウェイツなど多くのアーティストの出演を実現
– ビヨンセとザ・ルーツ (番組でバックバンドを務める)のコラボなど大物が出演したくなる場を用意し、同番組は視聴者が必ず見る音楽番組となった
カーソン・デイリー (Carson Daly) :NBC 「The Voice」, 「Last Call With Carson Daly」TV番組ホスト
– 音楽TV / ラジオ番組のホストを務める
– TVネットワークNBCでの「Last Call With Carson Daly」は今年で12年目を迎える
– 番組では、キラーズやマルーン5などの米TV初出演を実現し、多くの新人アーティストにメディア露出の場を提供する
– 音楽オーディオションTV番組「The Voice」の番組ホスト兼プロデューサーを務める
ベン・ドゥルーリー (Ben Drury) :7digital 共同創業者兼CEO
– 英国のデジタル音楽ストアでデジタル音楽サービス「7digital」を2004年に立ち上げた37歳、同サービスは世界37ヶ国以上で展開する
– 欧州で初めて4大レコード会社と契約したmp3ストア、現在1900万曲以上を揃える
– サムスン、HTC、マイクロソフト、HMVなど大手ブランドとパートナー契約を締結する
ダニエル・エック (Daniel Ek) :Spotify CEO
– 音楽ストリーミングサービスSpotifyのCEOを務める29歳
– 世界15ヶ国でウェブ、モバイル、Spotify音楽アプリ経由で、定額制の音楽再生を提供、野心的で画期的なビジネスモデルを実現
マイク・フリン (Mike Flynn) :エピック・レコード A&R担当上級副社長
– 元バンドマンの36歳
– 新人ザ・フレイの1, 2ndアルバムをプロデュース、シングルは410万枚以上を売り上げ、バンドはグラミー賞にノミネートされる
– 現在は英TVオーディオション番組参加者シェール・ロイドの米デビューを統括
ルーク・ゴットワルド (Dr. Luke Gottwald) : Songwriter/Producer
– 2012年トップ40チャート内に5曲が入る、ヒットメーカー
– 元ヒップホップレーベル「Rawkus Rrecords」のプロデューサー
– Ke$ha、新人Becky G.の新作をプロデュース予定
ピーター・グレイ (Peter Gray) :ワーナー・ブラザーズ・レコード、プロモーションン担当上級副社長
– メジャーレコードのプロモーション担当幹部では最年少の38歳
– RCAレコードでキング・オブ・レオンやケリー・クラークソンをチャートインさせる
– グリーンデイ、ブラック・キーズ、リンキン・パークなどのチャート首位獲得を実現
ベンジー・グリンバーグ (Benjy Grinberg) :Rostrum Records 社長
– インディーズ系レーベルの社長を務める34歳、ヒップホップアーティスト、ウィズ・カリファとマック・ミラーを発掘、プロデュース
– カリファのデビューアルバムは米ラップチャート首位獲得、全米ビルボードチャートで2位に (初週197000枚売上)
– ミラーのデビューアルバムはインディーズアーティストとしては1995年以来初めて初週で全米チャート1位を獲得(144,000枚売上)
エチオピア・ハブトマリアン (Ethiopia Habtemarian): ユニバーサルミュージック・パブリッシンググループ 取締役副社長兼アーバン・ミュージック部門代表、モータウン・レコード上級副社長
– ネーヨ、エリカ・バドゥ、スティービー・ワンダーなど大物に加え、新人発掘やプロデューサー陣を統括し、伝統を継承しながらも新しいモータウンブランドを復活させた32歳
– ユニバーサルではジャスティン・ビーバー、クリス・ブラウンなどを担当する
ネイサン・ハバード (Nathan Hubbard) :チケットマスター (Ticketmaster) CEO
– チケット販売最大手チケットマスターのCEO、
– カスタマーサポートの強化、クライアント向けの分析ツール導入などを行い、ステークホルダーとの円滑な関係造りを促進
– 現在クライアント数10000以上、年間4億枚以上のチケットを売り上げ、営業利益は17%成長 (2011年比較)
ローラ・ハットフレス (Laura Hutfless) :クリエイティブ・アーティスト・エージェンシー (CAA) アーティスト・スポンサーシップ・エージェント
– ブランドとミュージシャンの大型スポンサーシップを取りまとめる30歳
– ジョン・レジェンドと保険会社ステートファーム、食品会社ConAgra Foodsとジュエル、ジェイ・ショーン、アウル・シティーによるチャリティーソングのプロデュースなど音楽で企業イメージを訴求したいブランドとアーティストをつなげる
ジョン・ジャニック (John Janick) :Fueled By Ramen会長兼社長、エレクトラ・レコード共同社長
– エレクトラ・レコードの共同社長をマイク・キャレンと共に務める34歳
– ロックバンドfun.を発掘、シングル「We Are Young」は500万枚以上を売り上げ、USビルボードチャート首位を獲得した
– ブルーノ・マーズ、エド・シーラン、フォールアウト・ボーイらのキャリアをスタートさせる
レベッカ・レオン (Rebeca Leon) :AEG Live/Golden Voice ラテン・タレント担当副社長
– 世界第2位のライブプロモーション企業「AEG Live / Goldenvoice」のラテン系ミュージシャンツアープロモーション担当
– シンガーのRomeo SantosやRicardo Arjonaのツアー、メキシコロックバンドManaによるロスアンゼルスStaple Centerでの11夜連続完売ライブを実現させる (以前の記録はブリトニー・スピアーズの8日連続完売ライブ)
– エンリケ・イグレシアスとジェニファー・ロペスというラテン音楽二大スターのジョイント・ツアーを実現
アレキサンダー・リュング (Alexander Ljung)
– ソーシャル音楽共有プラットフォームSoundCloudを立ち上げ2000万ユーザー数以上に成長させた30歳
– SoundCloudは現在月間150万ユーザーを追加しながら拡大している
グスタボ・ロペス (Gustavo Lopez) :ユニバーサル・ミュージック・ラテン・エンターテイメント、ブランド・パートナーシップ/ビジネス開発/デジタル担当上級副社長
– ユニバーサルミュージックのラテンミュージック部門にてメキシコ、米国、中南米市場を指揮する
– 二カ国語を話すラティーノ (英語とスペイン語)に注力したマーケティングを実施しレコード会社に新たな収益源をもたらす
– 360度契約を締結したミュージシャンの活動をレコーディング以外で多様化させる
ジム・ルケーシー (Jim Lucchese)
– デジタル音楽データ解析サービスEcho NestのCEOを務める39歳
– 過去12ヶ月でクリア・チャンネル、ノキア、EMI、Spotify、Rdio、Twitterなど20社以上の音楽サービスを構築支援する
ジョーイ・マンダ (Joie Manda)
Def Jam Recordings:社長
– 2007年に社長職を辞したジェイZに次いで就任
– NAS、フランク・オーシャンのデビュー作、2 Chainz、カニエ・ウェストの「G.O.O.D. Music」のリリースを手がける
ジョナサン・メイヤーズ (Jonathan Mayers)
– エンターテイメント・マーケティング・エージェンシーSuperfly創業者の1人、ジェネレーションXやY層をターゲットにした音楽イベントを企画
– 大型野外フェス、ボナルー・フェスティバルを企画運営、YouTubeと提携し音楽フェスのライブストリーミングを開始するなどクリエイティブな取り組みを推進する
ロブ・マクダニエルズ (Robb McDaniels)
– 年間1億ドル以上の売上を上げる、世界最大規模のデジタル・ディストリビューション・プラットフォームを構築
– 2012年Fontanaディストリビューションをユニバーサルミュージックから買収、フィジカルの配信を開始する
ゲイブ・マクドノウ (Gabe McDonough) ;レオ・バーネット副社長兼音楽担当ディレクター
– 広告代理店にて音楽とコラボしたキャンペーンを過去2年間で100以上指揮する
– サンティゴールドとバドライト・ライム、Os Mutantesとマクドナルドなど、企業の大型マーケティングにミュージシャンを起用し音楽によるブランド力向上を推進する
– 同社内で新人アーティスト開拓プログラム「Artists in Residence」を統括
ホルヘ・メヒア (Jorge Mejia) :Sony/ATV Music Publishing Latin America 上級副社長
– 世界最大のラテン音楽パブリッシャーにて、
– ラテン系ラッパー、ピットブルとの契約で米音楽チャートで1位を獲得する
– 過去2年間の中南米地域での売上増加に貢献(40%増)、特にブラジルでは2年で90%の増加、アルゼンチンでは100%以上の増加を記録
エイドリアン・モレイラ (Adrian Moreira) :RCA Records プロモーション担当上級副社長
– 米アダルト・トップ40 / ホットACチャートでマーケットシェア首位維持を支援
– ケリー・クラークソン、ギャビン・デグロウ、マルーン5など大物アーティストのプロモーションを担当
ガイ・オセアリー (Guy Oseary) :Untitled Entertainmentパートナー、マドンナ・マネージャー
– マドンナのマネージャーを務める、マーベリック・レコーズの元会長
– マネジメント会社Untitled Entertainmentにてアシュトン・カッチャーやペネロペ・クルスなどのマネジメントを務める
– マドンナの最新ワールドツアーは22公演で7970万ドルの収益を得る
ショーン・パーカー (Sean Parker) :Founders Fund パートナー
– Napster共同創業者、Facebook元社長の肩書きを持つ、投資家でSpotify取締役の32歳
– デジタル、フリーミアム、ソーシャルで、常に音楽業界に可能性を示してきた
ライアン・シークレスト (Ryan Seacrest) :オーディション番組アメリカン・アイドル番組ホスト、Ryan Seacrest Media創業者
– オーディション音楽番組「アメリカン・アイドル」番組ホストを務めるだけでなく、クリアチャンネル系列で全国放送ラジオ番組を持つ (USでは稀)
– エンタメシーンに特化したケーブルチャンネル『AXS TV』を投資家のマーク・キューバン (Mark Cuban)、AEG、CAA (共にエンタメ・スポーツエージェンシー)と共に設立
クリストファー・トリッキー・スチュワート (Christopher “Tricky” Stewart) : Epic Records A&R代表社長
– オーディション番組『Xファクター』のジャッジを務める著名プロデューサー、L.A.リードに誘われエピック・レコードに移り、Karminやシェール・ロイドなど新人アーティストのプロデュースを統括し同レコード会社の土台作りに挑戦する
ティファニー・ヴァン・ラー (Tifanie Van Laar) :ウォールマート シニア音楽バイヤー
– 毎週1億4000万人以上が来店する米最大の小売チェーン店ウォールマートで、全国のCD販売戦略を統括する。
– 1枚5ドルでの販売などで、ウォールマートは米音楽小売店市場でシェア10%を占める
トム・ウィンディッシュ (Tom Windish) : The Windish Agency 社長
– ライブマネジメント事業以外にライセンシング事業を開始し、ミュージシャンの活動を包括的にサポート
エリック・ウォング (Eric Wong) :アイランド・デフ・ジャム・ミュージック・グループ マーケティング担当取締役副社長、Wong Management 創業者
– 36歳のウォングはこれまで、アトランティック・レコードのマーケティング担当上級副社長やBad Boy Recordsのチーフ・マーケティング・オフィサーを務めてきた
– アイランド・デフ・ジャムでは、リアーナやジェイZとカニエ・ウェストのコラボアルバムのマーケティングを担当、デジタルやクリエイティブ部門も統括している
– ザ・キラーズ、マライア・キャリー、ボン・ジョヴィなど大物アーティストの新作を今後は手掛ける
ジョン・ザーリング (John Zarling) : Big Machine Label Group プロモーション・メディア戦略担当副社長
– カントリーミュージック専門のレーベルBig Machine Label Groupでテイラー・スウィフト、ラスカル・フラッツなど数々の賞を受賞する人気アーティストのプロモーションを行う
– 2009年のジャック・イングラムによる24時間以内に行ったインタビュー数のギネス記録やマルティナ・マクブライドの列車ツアーなど、ユニークなアイデアを実現してきた
最後まで読んでいただきありがとうございました。