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2012年12月11日、ロンドンにおいて世界の音楽ビジネス・デジタル音楽で大きな影響力を持つ英デジタル音楽コンサルタント会社Music Allyが業界向けイベント『2013: A Survival Guide』を開催しました。
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イベントには、大手レコード会社のデジタル担当や音楽サービスのリーダー達がゲストとして参加し、2012年のデジタル音楽業界を分析し、2013年の更なる価値提供と変化への対応に向けて最新のトレンドを議論する非常に濃い内容になりました。
『2013: A survival Guide』は、自社のサービスや事例を紹介する業界にありがちなイベントとは違い、自社サービスに関係なく業界全体を俯瞰的に分析し考える、あまり類を見ないイベントで、中でも、ユニバーサルミュージックのフランシス・キーリング氏は、音楽とテクノロジーなど幅広い分野に対して積極的に発言するなど、企業を超えた情報交換からビジネスのヒントになる発言が数多くありました。
参加者リスト
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イベントのレポートを読んでみると、日本のビジネスにも共通するポイントを幾つか発見することができます。その中でも幾つか気になった6つの議論を以下に抄訳でまとめて紹介します。これを読んで音楽業界の方も、音楽サービスを作る方も、2013年に向けてデジタル音楽の可能性と広がりを感じてもらえればと思います。
パネルディスカッションでは、3つのテーマがトーキングポイントとして提示されました。
1. デジタル音楽の消費とビジネスモデル
「2013年のデジタル音楽消費」
「2013年に注目するデバイス、ツール、サービス」
「2013年に注目するビジネスモデルと、年度末までiTunesやSpotifyの議論は続くかどうか」と3つの質問
2. 業界の課題
「2013年において克服しなければならない最大の課題」
「デジタル音楽の領域においてアーティストが担う役割」
「D2C (ディレクト・トゥー・コンシューマー)マーケティングの重要性」
3. 大きな市場
「音楽業界は、映画/テレビ/ゲーム/出版業界など異業種から何を学べるか?」
「Facebook/アップル/グーグル/アマゾン: どの企業が最も価値を提供し、音楽業界内で利益を上げるか?その逆は?」
パネリストが注目する6つのトレンド
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1. 巨大なトレンドのシフトがモバイルに起きている
理由:タブレットが与える影響は計り知れない、音楽を視聴できるだけでなく、コンテンツを生成したりキュレートすることも可能で、没入しやすく拡張された音楽体験を実現できる。
モバイルアプリによる有料会員向けの音楽消費も今後拡大する。消費者は音楽サービスに登録し有料会員になるが、音楽消費はサードパーティの有料会員向けに最適化されたアプリケーション経由で行われる。
課題:課金システム、音質の問題、ダウンロードする価値の提供
2. (ユニバーサルミュージックのキーリング氏) Spotifyなどクラウド型聴き放題音楽ストリーミングサービスにおいて、新作アルバムをリリース時と同時に配信しない戦略は、大問題の一つ (ウィンドウイング戦略 Windowing)
理由:ファンを音楽から遠ざけるだけ
課題:ウィンドウイング戦略を問題視するだけでなく、映画・テレビ業界で行われるウィンドウイング戦略や導入方法をもっと分析することが必要。レコード会社/マネジメント/Spotifyなど音楽サービスで問題を議論する
3. 音楽のデジタルマーケティングにもっとアーティストを参加させるべき
理由:デジタルを含む議論やSpotifyなど音楽サービスとの契約が数多く進められる中、これらの議論にはより透明性が必要で、アーティストもその中に加えらなければ、作品を自由に作り利益を上げることが難しくなっていく。アーティストへのロイヤリティ支払いを引き下げようと議会に掛け合うPandora Radioのビジネスモデルは、何かが間違っている。
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4. 将来の音楽業界やモバイル音楽のビジネスモデルを再考しなければいけない
課題:雑誌や新聞のデジタル化に関する広告ビジネスを、音楽業界でも適応するために分析するべき。広告ビジネスへの理解と積極的な活用法を身につけるべき。
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5. D2C (ディレクト・トゥー・コンシューマー)マーケティングは今後重要になる
理由:店舗販売が減少する今、デジタルサービスを活用することで、ファンとアーティストの境界線が低くなっている。「BuddyBounce」などファンにリワードを提供する音楽D2Cマーケティングに特化したスタートアップも登場し始めている。新人アーティストだけでなく、すでに確立したアーティストにとっても、ファンベースを構築しキャリアを維持することは、必要不可欠。
課題:ファンが存在しない、または提供するプロダクトがAmazonで購入できるモノ以上の価値が無い場合、D2Cマーケティングを実施することは無意味
最後に、以下のメッセージがパネリストから投げかけられました。これは2012年の総括と、2013年に向けてのデジタル音楽の可能性を簡潔に言い当てる言葉だと思いました。
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6. デジタル音楽は未だメインストリームの領域には成長していない
理由:デジタル音楽バブルの中にいることを忘れがち。未だに多くの人はCDを買っている。道行く殆どの人は音楽ストリーミングサービスなんか使っていない。iPadを所有する人は少数。
課題:CDを購入する層を無難にデジタル音楽の環境へと移行させなければ、消費者を失うだけ。
パネルではテーマを長期に渡る課題だったり、業界が今直面している問題などに深く掘り下げて議論が行われました。ただ変化が起こるのを待っているだけでなく、抱える課題や不安要素だけでなく注目するビジネスの仕組みについてまで、企業を超えてオープンに議論してくれる業界のリーダー達の存在とイベントは、今後への不安を少しでも取り除き、ビジネス全体のカンフル剤になってくれるに違いないと思います。彼らとこのようなイベントの存在によって、2013年に向けてポジティブなデジタル音楽の世界がますます広まっていくだろうと実感することができました。
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ソース

Jay Kogami

執筆者:ジェイ・コウガミ(All Digital Music編集長、デジタル音楽ジャーナリスト)

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