音楽情報を知っている人っていいな!って思いませんか? 音楽をどれだけ知っているかということは、音楽好きな人間にとって一つの重要なステータスでしたよね。

でもスマホが発達して便利な音楽アプリが増えたおかげで、人は身の回りの音楽情報を見つけやすくなりました。だから「音楽を知っている」事が当たり前になって、あまりカッコいい事ではなくなってしまいました。

そんな中、原点に立ち返って、「音楽を知っているカッコよさ」を取り戻そうとした音楽テレビチャンネルがあります。

フランスの音楽チャンネル「TRACE URBAN TV」は、最新のヒップホップ、R&B、ダンスミュージックをオンエアしている若者向けのチャンネルです。今回TRACE TVはユースをターゲット対象に、音楽を熟知しているヒップな音楽チャンネルだというイメージを届けるためのプロモーションをウェブで行いました。

彼らが選んだプロモーションはというと、史上最強の音楽情報アプリ「Shazam」に楽曲名前当てクイズで挑戦することでした。

クイズは簡単。DJがかける楽曲名をできるだけ早く当てた方が勝ち。答えるのは、ステージ上に上がった人のみ。

TRACE URBAN TVの目的はテレビ局が音楽と真摯に向き合っている自分たちのプロフェッショナリズムを知ってもらうこと。「自分達は音楽のエキスパートなんだ。だから誰よりも自信を持って番組でカッコイイ音楽を紹介してるんだぜ」というパーソナリティを認知してもらうために、あえて音楽検索では最強クラスのデータベースとテクノロジーを誇るShazamを勝負の相手に選びました。参加したのは全てTRACE TVのVJたち。

もしリアルな音楽チャンネルのVJが、あの精度が高いShazam以上に音楽の知識を持っていたら、結構凄いってなってみなさん思いませんか?例えばヒップホップ好きな視聴者だったら「このVJだったら、この曲のサンプルや時代背景まで知ってるだろうな」とか思いますよ、きっと。

100曲以上に渡るクイズの結果、僅差で人間チームが見事にShazamを打ち破り勝利を収めました。音楽好きな人間てやっぱり凄い。

今デジタル音楽で注目されている分野の一つに「ミュージック・ディスカバリー (音楽発見)」があります。どのようにすれば新しい音楽と出会えるのか。その答えの一つがShazamなどに代表されるアルゴリズムを軸とした音楽発見です。一方でこれらのサービスには、パーソナルな想いや共感が欠落しています。そこで音楽サービスが期待するのは、エキスパートやインフルエンサーによるキュレーションとレコメンデーションです。TRACE TVのVJはまさに後者の役割となって行きます。

音楽アプリが普及しても、音楽リスナーの数が劇的に増えたり、アクティブ度合いが高まるとは思えません。音楽リスナーを増やすためにヒューマン・トゥー・ヒューマンのコミュニケーションにも出来ることが残されているとおもいます。今回の場合ですとVJ達がTVやウェブを通じてリスナーとエンゲージメントを高めていけば、受動的なリスナーがアクティブなリスナーへと変わる可能性が拡がるのかと思います。デジタルと上手く共存することで、リアルなコミュニケーションでしか出来ないやり方から情報を伝え音楽発見を支援する可能性がまだまだ残されています。

 

ソース

SEE A MUSIC CHANNEL CHALLENGE SHAZAM IN A DIFFERENT KIND OF EPIC RAP BATTLE(5/24 CO CREATE)


Jay Kogami

執筆者:ジェイ・コウガミ(All Digital Music編集長、デジタル音楽ジャーナリスト)

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