Spotify

世界的に音楽業界から大きな注目を集める、サブスクリプション型音楽ストリーミングサービスの「Spotify」(スポティファイ)は2012年度の収益が4億3500万ユーロ(5億7310万ドル、約563億5870万円)へと拡大したことが明らかになりました。前年2011年の収益は1億9000万ユーロ(2億4670万ドル、約242億6000万円)だったので、昨年から2倍以上アップさせました。

一方でSpotifyの純損失はさらに拡大しました。2012年の純損失は5870万ユーロ(7740万ドル、約76億1151万円)で、2011年の4540万ユーロ(5880万ドル、約57億8239万円)からさらに拡大しています。

ライセンス料支払いを含むSpotifyの売上原価は3億6300万ユーロ(4億8420万ドル、約476億1320万円)となり、2011年の1億8600万ユーロ(2億4810万ドル、約243億9685万円)からさらに拡大しました。

IT業界から注目度の高い音楽ストリーミングサービス市場

Spotifyの高収益は、同社のビジネスモデルと戦略が確実に成長へと結びついていること、音楽ストリーミングの需要が高いことが伺えます。またビジネスの成長からは、音楽ストリーミングサービスは中長期的に将来性が高いビジネスにあると言えます。

音楽ストリーミングサービスは世界的に最も成長の早く、大きな収益源になりつつある音楽ビジネスです。この分野にはSpotifyの他にもRdioDeezerなどが競っています。またGoogleMicrosoftAmazonAppleなど大手IT企業も音楽ストリーミングサービスに進出しています。

またスマートフォンの普及が世界的に進む中、オンデマンドな音楽ストリーミングサービスやパーソナライズド・ネットラジオへの関心と需要はますます高まっています。前途のAppleやGoogleなどはiOSやAndroidで動作する音楽サービスをデフォルト提供し、スマホユーザーの利用拡大を目指しています。

またSpotifyを始めRhapsodyやDeezerなどの企業はモバイル事業者との提携を拡大しています。携帯ユーザーの料金プランに音楽サービスを組み込んだバンドル料金でスマホユーザー獲得を進める流れが、音楽ストリーミングサービス企業では大きなトレンドになっています。

スウェーデンの音楽市場、2013年上半期は「スポティファイ効果」でデジタル音楽サービスからの収益が70%を超える、市場は二桁成長を記録

ビジネスの拡張性が高い反面、各企業は厳しい収益化(有料会員の獲得など)やレコード会社と権利者への巨額なロイヤリティ料支払いのため、利益を上げることが難しいのが現状です。音楽ストリーミングサービスを始めたからといって、短期で利益を回収し、アーティストや権利者に売上を配給できる簡単なビジネスではないことを理解することが重要です。

また世界の音楽ビジネスの主流はiTunesなどの音楽ダウンロードが大きなシェアを占めています。そして音楽ストリーミングサービスが参入している市場はまだ世界的に多くありません。日本への上陸も期待されています。

音楽ストリーミングサービスは各市場で様々な独自の取り組みやパートナーシップを実現し、ユーザーと音楽業界に最適な価値提供を模索している黎明期にあると言えます。今後、音楽ビジネスに短期的だけでなく中長期的に影響を与えるのかを注目していく必要があります。

「Spotify」(スポティファイ)とは?

2006年にスウェーデンで設立されたSpotifyのビジネスモデルは無料と有料プランを組み合わせた「フリーミアム」モデルです。2000万曲以上の音楽が無料で聴き放題できるプランの他に、月額5ドルの「アンリミテッド」プランと10ドルの「プレミアム」プランを提供しています。有料プランに加入すると、音楽再生中に挿入される広告を消したり、スマートフォンからアクセスができるなどのメリットがあります。

現在Spotifyが発表している最新の数値では、2013年3月にはアクティブユーザー数が2400万人、有料会員数は600万人を突破したと発表しています。新規市場への進出によって昨年12ヶ月でアクティブユーザー数が2倍に拡大しています。

昨年Spotifyは1億ドルの資金を新規に調達し、新規市場への進出など事業の成長戦略をさらに拡大しています。

ソース
Spotify burns through cash in push for paying subscribers(7.31 Financial Times)

Music streamer Spotify doubles 2012 revenues after expansion(7.31 Reuters)


Jay Kogami

執筆者:ジェイ・コウガミ(All Digital Music編集長、デジタル音楽ジャーナリスト)

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