日本の音楽サービスは現状どうなのかな?
音楽ストリーミングサービスは音楽ファンや音楽ビジネスの間で高い注目度と大きな期待を集めています。しかし、公表された老舗音楽サービスの財務状況を見ると、音楽ストリーミングサービスが大きく成功するかどうかに関しては、当分は懐疑的にならざるを得ないと言えるのではないでしょうか。
米国のサブスクリプション型音楽ストリーミングサービス「Rhapsody」(ラプソディ)の2013年第2四半期の決算が明らかになりました。公表された数値によれば、ラプソディの売上高は8%減の3470万ドルで、前年同期3780万ドルからさらに減少しました。
四半期の損失は438万ドルで、前年同期の454万ドルよりわずかに改善しています。ですが以前としてラプソディは赤字経営を続けています。
2001年に創業されたラプソディは、スポティファイやRdioが設立される前、Pandora Radioがラジオサービスを開始する以前から音楽サービスを提供しています。現在は1600万曲以上の音楽カタログをウェブ、iPhoneやAndroidなどスマートフォン、Xbox 360やONKYOなどホームエンタメ機器などで配信しています。ラプソディはサブスクリプション型音楽サービスです。つまりスポティファイなどフリーミアム・モデルを採用せず、無料ユーザー向けのサービスは提供していません。
ラプソディは最近戦略を大きく変更しました。まずMP3ダウンロードの販売サービスを廃止しました。次にウェブ広告販売も取りやめました。そして、今後は有料会員の獲得で収益化へつなげる、サブスクリプション型音楽サービスに特化して行く予定です。
ラプソディのスポークスパーソンは、戦略の転換が売上高減少の要因と答えています。
一方でラプソディの有料会員数はわずか100万人と言われています。会員数の少なさが収益化に結びついていない決定的な要因と言えます。
2012年の年間売上高は1億4370万ドルで過去最高を記録しました。ラプソディの財務報告は、45%のシェアを持つRealNetworksの財政報告によって明らかになりました。
音楽ストリーミングサービスの成功には二つのパターンがあると思います。一つはPandoraやラプソディのように上場企業または事業の一つとして運営している音楽サービスでは、収益化が絶対の成功条件です。もう一つはスポティファイやRdio、Deezerといった音楽ストリーミングサービスの成功例で、これは現段階ではユーザー数の確保とサービスの成長拡大戦略の実行が成功だと思っています。
ラプソディは前者に入る企業ですが、技術的にもビジネス的にも波に乗り遅れている企業。その証拠に「有料会員数は増えず」、「メディアでも話題にならず」、「新しい技術やサービスも提供できない」ただ存在するだけの企業になってしまった印象があります。音楽サービスを運営する上では収益化も大事です。ですが、音楽ストリーミングサービスは世界的に始まってまだ日が浅く、音楽を聴いている人の中でも存在を知らない人の方が多いはず。その部分をどう攻めて成功を収めるかが、ラプソディが目指すべき方向だったのではないでしょうか?
音楽ストリーミングサービスでの成功は、上で述べた二つのパターンのどちらかに現時点では大きく分類されると思います。ただ音楽は聴く人がいて初めて成り立つもの。一晩や3ヶ月、1年で音楽サービスの環境が大きく変わることは考えにくく、結果を先走り過ぎていると思います。成功するビジネスモデルを探すためには、変化するリスナーの行動やテクノロジーの進化を冷静に分析して議論していくことが大事なのではないでしょうか。
最後に。音楽ストリーミングサービスは始めれば成功することは全くありません。音楽ビジネスもそう簡単には救ってくれません。逆に、音楽サービスが乱立する音楽シーンになってしまえば、音楽好きが本当に好きな音楽サービスを選びにくくしてしまい、音楽を届けにくくしてしまいます。今後はサービスの差別化、音楽リスナーへの啓蒙やPR、新しい技術の開発などに事業者が積極的に取り掛かり実現してから、本当に「成功」する音楽サービスがこれから登場していくのではないかと思っています。
ソース