音楽ストリーミングサービスの「スポティファイ」(Spotify)が、音楽の歴史やミュージシャンの素顔に迫ったオリジナル・コンテンツ・シリーズ「Spotify Landmark」を開始しました。
Spotify Landmarkの記念すべき第一回は、ニルヴァーナの「The Real Story of Nirvana’s “In Utero”」で、9月17日にアルバム20周年を記念して公開されました。
オリジナルシリーズには、ニルヴァーナのベーシスト、クリス・ノヴォセリックやプロデューサーのスティーヴ・アルビニ、Meat PuppetsのベーシストでMTV Unpluggedにゲスト出演したクリス・カークウッドなどによる音声コメントや、アルバムのプロモ動画など、ニルヴァーナの「In Utero」制作の舞台裏が当事者によって語られる形式になっています。
スポティファイのアーティスト・マーケティング兼オリジナル・コンテンツ責任者兼Spotify Landmark共同プロデューサーのサンディ・スモレンス(Sandy Smallens)は、
(Spotify Landmarkは)「Behind The Music」のようなアプローチかもしれません。ですが私達のアプローチは人間関係よりも、NPRのように録音された音楽そしてレコード制作に踏み込んでいます
とコメントしています。
*「Behind The Music」はヴァイアコム系列の音楽チャンネル「VH1」が放送する音楽ドキュメンタリー・シリーズ。各話ごとに成功や挫折など一アーティストのキャリアを関係者のコメント付きで紹介する
*NPR (ナショナル・パブリック・ラジオ)はアメリカの公共ラジオ局。報道に定評があるが、音楽プログラム特に「All Songs Considered」は高い人気がある
Spotify landmarkを聴くには、ウェブサイトにアクセスまたはデスクトップ・アプリ内で聴くことができます。ウェブサイトでの視聴には、スポティファイへの登録も必要ありません。オーディオコメントは、関係者別に聞くことも連続で聞くこともできます。
今回のニルヴァーナ特集コンテンツでは、これまで発表されることのなかった制作の裏話がスティーブ・アルビニによって明らかにされています。このようなエクスクルーシブな情報が今後もスポティファイ発で発表されるかもしれません。
スモレンスは、次回のSpotify Landmarkではどのアーティストがフィーチャーされるかは明らかにしていません。しかしすでに有名アーティストがスポティファイでのドキュメンタリー・シリーズに興味を見せており、将来的にはオーディオだけでなくドキュメンタリー動画も導入していく予定であることを言及しています。
Spotify Landmarkのもう一人の共同プロデューサーは、元ローリングストーン誌で評論家を勤め、SpinやVibeの編集長を務めてきた音楽ジャーナリストのアラン・ライト(Alan Light)が務めています。
やはりNetflixの「ハウス・オブ・カーズ」に影響されたのかと思いたくなる、アプローチでもあり、よりラジオ(特に上記のNPR)に近いコンテンツ戦略でもあります。確実に言えることは、スポティファイは音楽を届ける手段をさらに拡大しています。これからはただ音楽を聴かせるだけのサービスでは、リスナーはその存在自体に必要性を感じなくなり、将来的に満足してもらうことは困難になっていきます。音楽コンテンツを活用し、どのように見せて、どんなインタラクションをリスナーにしてほしいのかを模索しながら、音楽サービスは色々な施策を試していくでしょう。その中でも音楽をキュレーションすることは、スポティファイなど音楽ストリーミングサービスが注目しているトレンドだと感じます。
一方でSpotify Landmarkのようなウェブコンテンツが出来た場合、同じようにミュージシャンのプロフィールや音楽の歴史をテーマにしたSpotify音楽アプリとの住み分けはどうしていくのか、サードパーティとの関係も気になります。