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世界の音楽シーンで注目を集めている、聴き放題できる定額制音楽ストリーミングのSpotify(スポティファイ)が、10月8日にサービス開始から5年を迎えました。スウェーデンで始まった小さな音楽サービスは、フリーミアムモデルを組み合わせた画期的なビジネスモデルで、短期間で音楽業界に「音楽ストリーミング」という新しい分野を切り開きました。

SpotifyのPRチームが5周年を記念して、Spotifyの現状をまとめたとても簡単なインフォグラフィックを公開しています。まだ日本ではサービスが開始していないSpotifyで、期待も大きいと思いますが、これを見ておいてSpotifyがどんなサービスなのか理解できるはず。Spotify好きな僕としても、少しでも興味を持ってくれる人が日本で増えてもらったら嬉しいです。

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5周年おめでとう! 少しだけSpotifyのこれまでと現状をお伝えします。

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Spotifyはスウェーデンで誕生し、2008年10月8日にスウェーデン、フランス、英国、スペイン、フィンランド、ノルウェーで一般向けにパブリックローンチしました。

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過去5年間で100万年分以上の音楽がSpotifyではストリーミング再生されました。

現在月間アクティブリスナー数は2400万人、有料会員数は600万人を突破しました。

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世界32ヶ国で展開しています。ヨーロッパ、北米、南米、南米、オセアニア、アジアでもサービスを開始しました。

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Spotifyでは2000万曲以上の楽曲を用意しています。その中の80%が最低1度は再生されています。

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Spotifyで最も再生回数が多い曲は、マックルモア&ライアン・ルイスの「Thrift Shop」で、1億5000万回以上ストリーミング再生されています。

24時間以内に最も多く再生されたのは、ダフト・パンクの「Get Lucky」で、ストリーミング再生数は150万回でした。

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Spotifyで最も人気のある(フォローされている)アーティストは、女性ソロアーティストでは「リアーナ」、男性ソロアーティストでは「デヴィッド・ゲッタ」、バンドでは「コールドプレイ」です。

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Spotifyにはユーザーが生成したプレイリストが、10億個以上あります。

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世界中のSpotifyユーザーが最も音楽を聴いている時間は、木曜日午後4-5時の時間帯です。

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オバマ大統領やキャメロン首相もSpotifyユーザーですよ。

ここまでSpotifyの5年間のインフォグラフィックをご紹介しましたが、ここからは僕が考えるSpotifyの5年間とその影響をほんの少しだけまとめてみました。

Spotifyがもたらした3つの影響

まず音楽ストリーミングサービスの登場は、レコード会社へ大きな影響を与えます。レコード会社は新しいサービスの登場によって、音楽ビジネスの新しい収益化への道を見つけました。特に大手レコード会社はSpotifyの投資グループに入っていたので、そうでないレコード会社に比べて有利な立場にいることには違いないのですが、、、ですがその事実を差し置いても、今では音楽ストリーミングサービスは多くのレコード会社がiTunesの次に必要としている音楽サービスにまで、その存在が拡大しました。

またレコード会社は音楽ストリーミングサービスの登場に加えてモバイル・ソーシャルの普及によって、ライセンス契約の在り方やロイヤリティ料の支払い、データの活用など、従来の音楽ビジネスのやり方から大きく異なるアプローチを取るようになり、テクノロジーに比重が置かれたデジタル音楽マーケティングへとビジネスが進化させています。

次にSpotifyが与えた影響は、ミュージシャンに対する影響です。まずミュージシャンにとってCDやiTunesなどデジタルダウンロードからの収入に比べ、Spotifyなど音楽ストリーミングサービスが支払うロイヤリティ料は以前に比べて大きく少なく、数多く再生されても大きな収益源にはなっていないという現状が挙げられます。

また新曲や新アルバムを無料で聴かせることに抵抗を示すアーティストやマネジメントも出始めています。特に有名アーティストでも新作の配信をリリース後まで控えたり、また配信を一切しないと宣言するアーティストも存在しています。

その一方で、Spotifyは独自に提供しているSpotify音楽アプリや、強力なFacebookとの連携など、これまでの音楽サービスとは比べ物にならないほど、ソーシャルとの結びつきが強いサービスに仕上がっています。これまでソーシャルでの波及が実現できなかったプロモーション活動にもSpotifyを使うことで幅広いオーディエンスにアプローチする手段にもなってきます。

さらにメタリカやピンク・フロイドなどこれまで音楽サービスでの配信を拒絶してきた大物アーティストもSpotifyでの配信に前向きになっている傾向もあります。今後Spotifyとアーティストは、お互いがより良い相乗効果を発揮できるような信頼関係の構築が重要になります。

3つ目でそして最も大きな影響と言えるのが、音楽好きなリスナーへの影響です。これまでiTunesでダウンロードしてiPod・iPhoneで聴くしかなかった音楽好きが、Spotifyの登場によってウェブから、そしてモバイルから誰でもいつでも手軽に音楽へアクセスできるようになりました。この音楽の「所有」から音楽への「アクセス」にユーザーの視点と行動が変化したことが最大の影響で、これが毎日聴く中での新しい価値を見出してくれました。

音楽好きなら音楽をすぐに聴きたいはず。だったらダウンロードとかPCで共有とかの作業をするよりも、iPhoneやAndroidでアプリを立ち上げていま直ぐに聴く。こんな聴き方が24時間できるなんて、夢のようじゃないでしょうか? または好きな音楽はダウンロードしてじっくり聴く、今聴きたい音楽はSpotifyで聴く、そんなやり方もあり。音楽との接し方が多様化してきた分、音楽への窓口が増えた方が音楽の楽しみ方がまた拡がりますよね絶対に。

簡単にまとめましたが、Spotifyは登場から半世紀と経たない間に音楽ビジネスの在り方や、ユーザーの音楽との接し方への価値観を変えてしまいました。Spotifyはソーシャルメディアの普及やiphone/Androidなどモバイルとも非常に相性が良く、トレンドに上手く乗ることができたことも大きな成功要因だと思っていますし、その外部要因がある環境であれば、成功する可能性が大きいとも思っています。

日本で始まった時には、どんな人が使うのか、どんな楽しみ方や驚きが待っているのか、このインフォグラフィックを見ているとまた一層期待が大きくなりました。

5周年おめでとうございます!

インフォグラフィックはSpotify Blogでご覧いただけます。

ソース
We’ve turned 5 – here’s our story so far!(10/7 Spotify Blog)


Jay Kogami

執筆者:ジェイ・コウガミ(All Digital Music編集長、デジタル音楽ジャーナリスト)

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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