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DIYアーティストからDJ、有名アーティストまで幅広いジャンルの音楽を配信できる音楽プラットフォーム「SoundCloud」。
サービス開始から5年を迎えたSoundCloudは、現在世界中で2億5000万人以上のアクティブユーザーを抱えるほど大きな音楽共有プラットフォームに成長しました。

そして今年もSoundCloudでは、クリエイティブな音楽マーケティングがSoundCloudを活用して実施されました。

ここではSoundCloudのコンテンツ・リレーション担当ディレクターのデヴィッド・アダムス(David Adams)が選んだ、SoundCloud活用が最高に上手かった2013年のキャンペーン4つを紹介します。

オブ・モントリオール

アメリカのロックバンド、オブ・モントリオール(Of Montreal)は、最新アルバム「Lousy with Sylvianbriar 」をプロモーションするキャンペーンをSoundCloudで実施、SoundCloud上で初公開した最新トラック「Belle Glade Missionaries」にコメントを投稿するファンに対して、バンドのケビン・バーンズが「Timed Comments」機能を使ってリアルタイムでファンにコメントへ返信していくプロモーションを行いました。

まずバンドは事前にFacebookとTwitterで新曲公開とプロモーションの時間を告知し、ファンとのリアルタイムでのQ&Aセッションをお知らせします。

そしてプロモーションの時間が始まり、案の定ファンからのメッセージや質問が殺到してきました。ケビン・バーンズはSoundCloudユーザーに直接ダイレクトにリアルタイム形式で答えを返していきます。

返信がきたユーザーにはSoundCloudからの通知が届き、また会話に参加するユーザーも現れます。音楽好きが集まるSoundCloudだから、ファンは普段体験できないアーティストとの対話が音楽を媒体にして実現できるところが非常にユニークです。

またTimed Comments機能を使って参加するユーザーが増えれば増えるほど、楽曲への注目が高まり、その結果SoundCloudのアルゴリズムによってサイト内の人気の楽曲をレコメンドしてくれる「Explore」セクションで表示される可能性が高まるというアーティスト側へのメリットにも生きてきます。

Little Mix

ワン・ダイレクションなどを輩出したイギリスのオーディション番組「The X Factor」の優勝者で構成されたガールズグループ、リトル・ミックス(Little Mix)。彼女たちはファンとのコミュニケーションを最大化するため、毎週近況や音楽制作の裏側を録音したオーディオ・アップデート「Mixers Monday」を開始、忙しいスケジュールにもかかわらず、自分たちの声をマーケティング・ツールとしてファンに直接コンテンツを届けるキャンペーンを開始しました。

ファンはMixers Mondaysを通じて、ニュース、スタジオの様子、アナウンスメントからスタジオ内の音やウォームアップする声まで、アーティストのパーソナルな側面を知ることができました。

アーティストにとって、継続的にコンテンツを制作しアップすることは、そう簡単ではありません。ですが音声でのメッセージを使うことで、動画よりも手軽に、写真よりも多くの情報をファンに届けることが可能です。SoundCloudならiPhoneアプリを使って、気になる時に音を録音しアップロードできるので、余計な機材も必要ありません。

Little Mixはオーディエンス参加型の番組の象徴のX Factorから出てきたグループだけに、毎週支えてくれるファンの価値を理解していたからこそ、毎週アーティストの声も続けて届けたいと思った上での戦略かもしれません。

シンプルなオーディオ戦略ですが、ファンとの効果的なコミュニケーションにつなげることができます。重要なのは、ファンとのつながりをどのレベルで作り維持するか、そしてファンが楽しんでくれるコンテンツを継続して作っていくかに成功がかかっています。

Big Sean


ヒップホップ・アーティストのBig Sean (ビッグ・ショーン)は、新アルバム「Hall of Fame」リリースをプロモートするキャンペーンをSoundCloudを使って実施しました。

キャンペーンでは、最新アルバムの楽曲「Beware」の16小節の上にフリースタイルしてもらうコンテストを開催、一般ユーザーや若手MCらがフリースタイルした音源を自由にSoundCloudへアップロードできるようにし、だれもがアーティストとコンテンツを共創できるというまたとない機会を作りました。

Big Seanは投稿されたお気に入りの音源を、500万人以上のフォロワーがいる自分のTwitterで共有し、無名のアーティストが自分のクリエイティブを大勢の人に聴いてもらうチャンスを作りました。全ての音源はSoundCloudグループ内で公開共有されていきました。

Big Seanはフリースタイルというコンテクストがヒップホップ文化の中でぴったりあてはまると考え、またSoundCloudがヒップホップ・クリエイターとコンテンツを共創することができる理想的なプラットフォームだということを理解していました。

このキャンペーンでは、有名アーティストが無名のMCや一般ユーザーとコラボレーションするチャンスを創出してくれました。音楽好きの集まるSoundCloudのコミュニティは、コラボレーションやファンとのインタラクションを行う上で、大きな可能性を秘めたプラットフォームであることを示しています。ファンを巻き込んだBig Seanのコンテストは大成功を収め、1000以上のエントリーが寄せられました。

A$AP Rocky

ヒップホップ・アーティストのA$AP Rocky(エイサップ・ロッキー)は、SoundCloudのAPIを活用したファン参加型のキャンペーンを実施しました。

A$AP Rockyファンへリーチを最大化するためには、どんなキャンペーンが面白いか? ファンのデモグラフィックを調べる内に、A$AP Rockyのサイトに来るファンの内、約30%がモバイルからのアクセスだということが分かりました。そこでA$AP Rockyはキャンペーン用ウェブサイト「longliveasap.asvpxrocky.com」を開設し、ファンがA$AP Rocky宛てに留守電メッセージを残せ、特別コンテンツが入手できるインタラクティブ音声プロモーションを実施しました。

A$AP Rockyのチームとデジタル・エージェンシーの「Eyes And Ears」は、ウェブ上で音声会話ができるクラウド型通信サービスTwilioと、SoundCloudとのAPIを活用したシステムを組んで、ファンには特定の番号に電話をかけさせ、Twilioを使って記録された留守電メッセージが今度はSoundCloudによってウェブ上に誰もが聞けるオーディオ・アーカイブとして公開されます。

ユーザーはA$AP Rockyがアルバム制作に使ったテクニックを疑似体験しながら、ウェブサイトで公開された音声を使ってイジることもできるようになっています。

期待のヒップホップMC、A$AP Rockyのデビューアルバムのプロモーションサイトが面白かった

「有名アーティストだから」と言われるかもしれませんが、彼らも音楽好きなファンとコミュニケーションをクリエイティブかつアクセシブルに実現しようとしているだけで、そのターゲットとなるファンと場所がSoundCloudに多く集まっているということになります。SoundCloudは音楽好きという特徴的なユーザー層が高いだけに、もしかするとインディーズアーティストのプロモーションが有名アーティストよりも高いエンゲージメントを達成できる可能性もあるところが、とても面白いプラットフォームです。

日本人のアーティストやレーベルの方でSoundCloudを使ったプロモーションをやったという方がいれば、ぜひお話を伺ってみたいです!

ここに挙げた事例が来年皆さんのキャンペーンの参考になれば嬉しいです。

ソース
SoundCloud Names Best Marketing Campaigns Of 2013 [EXCLUSIVE](12/9 hypebot)


Jay Kogami

執筆者:ジェイ・コウガミ(All Digital Music編集長、デジタル音楽ジャーナリスト)

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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